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ストレスチェック実施の対象者について

  • ストレスチェック
従業員の心理的なストレスを数値化して把握するためのストレスチェックは、労働環境の改善に役立ちます。このストレチェックを受けるのは、会社に属していれば、全ての人がストレスチェックの対象者になるのでしょうか。

ストレスチェックの対象者について

事業主は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期的にストレスチェックを実施しなければなりません。なお、ストレスチェックの対象者となる「常時使用する労働者」とは、次のいずれの要件も満たす者をいいます。これは、一般定期健康診断の対象者と同様の条件です。

① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。

② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である労働者であっても、上記の①の要件を満たし、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても、ストレスチェックを実施することが望まれます。
つまり、週に1回の勤務であっても、①に該当する労働者は、対象事業場所の人数としてカウントされることになります。

派遣労働者はどうする?

ここでよくある質問が、派遣労働者の取扱いです。
派遣労働者に関しては、派遣元の事業主がストレスチェックを実施することになっています。
(労働安全衛生法第66条の10第1項から第6項の規定)

一方、努力義務となっている集団ごとの集計・分析については、職場単位で実施することが重要であることから、派遣先の事業場においては派遣労働者も含めて集計・分析するとともに、その結果に基づく措置を実施することが推奨されています。

派遣労働者の生年月日等の情報について、派遣先の事業者は掌握していない場合が多くありますが、派遣元の事業者から情報を取得する場合は、派遣元の事業者から該当する派遣労働者へ、同意を得てもらう必要があります。
また、派遣労働者に面接指導が必要になった際は、派遣元の事業者は派遣先事業者に対して、当該労働者の勤務の状況または職場環境に関する情報について、当該労働者の同意を得て提供することが求められます。
(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第42条第3項)

派遣労働者については、法令上、派遣元事業主に就業上の措置の義務が課されていますが、就業上の措置の実施に当たっては、必要に応じて派遣先と連携しつつ、適切に対応することが求められます。ただし、派遣先との連携に当たっては、契約更新の拒否など不利益取扱いにつながることのないよう、十分に配慮する必要があります。

休職や長期の病休、長期出張者はどうする?

ストレスチェックの実施時期に休職している労働者や長期の病休者については、実施しなくても差し支えありません。
労働者に対して受検を義務付ける規定が置かれていないのは、“メンタルヘルス不調で治療中で、受検の負担が大きい等の特別の理由がある労働者にまで受検を強要する必要はない”ためです。ストレスチェックを効果的なものとするためにも、可能な限り全ての労働者が受検することが望ましいとされています。
そのため、業務上の都合ややむを得ない理由でストレスチェックを受けることができなかった長期出張者等に対しては、別途受検の機会を設ける必要があります。

海外の長期勤務者はどうする?

海外の現地法人に雇用されている場合は、日本の法律が適用にはならず、ストレスチェックの実施義務はありませんが、日本の企業から現地に長期出張している社員の場合は、ストレスチェックを実施する必要があります(一般健診と同じ扱いとなります)。

外国人労働者はどうする?

改正案は、在留資格を問わず外国人労働者にも適用されますので、雇用する外国人労働者に対しても、ストレスチェックの受検が必要となります。

在籍出向労働者はどうする?

ストレスチェックの実施は、労働契約関係のある事業者において行うこととなりますが、在籍型出向の際に、出向先事業者と出向労働者の間に労働契約関係が存するか否かは、労働関係の実態、即ち、指揮命令権、賃金の支払い等総合的に勘案して判断することとされています。
このため、 「在籍出向労働者」のストレスチェックを出向元で行うか、出向先で行うかについては、その実態を総合的に勘案して判断する必要があります。
なお、集団分析については、職場単位で実施することが重要であるため、在籍出向の実態にかかわらず、出向先事業者において、出向者も含めてストレスチェックを実施するとともに集団分析を実施することが望ましいと言えます。


著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者


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