会社が気を付けるべき医師面接指導のポイント
2020.08.10
- ストレスチェック
医師面接指導の目的
面接指導は、ストレスによって生じた様々な反応を自覚している労働者が、自分でストレスに対処できるよう医師から助言を行うことや、ストレスによる健康への影響を減らすことが目的です。対象者に対して診断を行ったり、直ちに専門医への受診を進めたりすることが第一義の目的ではありません。
面接指導を実施する医師
面接指導を実施する者に推奨されるのは、事業場において産業保健活動に従事している医師です。面接指導を行う医師が、日常的に事業場の状況を把握していると、事業場の状況も踏まえた上でより適切な判断を行いやすくなります。
産業医が面接指導を行うことが難しい場合は、外部の医師に依頼することになりますが、その場合も、医師が適切な判断を行いやすいよう、対象者個人の情報だけでなく対象者が勤務する事業場の状況等についても伝え、把握してもらうことをお勧めします。
医師は、必ずしも精神科医や心療内科医である必要はありませんが、労働者の状況によっては、専門医療機関への受診勧奨の要否の判断が必要となる場合もあるため、メンタルヘルスの知識や技術を持っている医師が望ましいでしょう。
産業医の選任義務がない、労働者50人未満の事業所で面接指導を行う場合は、「産業保健総合支援センター」の地域窓口を利用することができます。申込み方法は地域によって異なりますので、事業所がある地域の産業保健センターに問合せをして下さい。
面接指導の実施時期
面接指導は労働者から申出があってからおおむね1ヶ月以内に実施する必要があります。できるだけ速やかに面接指導を実施する医師と日程調整を行いましょう。
面接指導は原則的に、就業時間内に設定します。その際には、対象労働者の上司に必ずしも理由を伝える必要はありませんが、予め理解を得ておくことで、スムーズに面接指導を受けることができます。対象労働者が自ら上司等に報告するのは難しいケースもあるので、労働者の同意の上で、実務担当者や実施事務従事者から伝える配慮も必要です。
面接指導の場所の選定
面接指導を実施する場所は、秘密が厳守されるよう配慮しましょう。他の人が出入りする場所や、内容が周囲に聞こえてしまうような場所は避け、リラックスして面接を受けることができる場所を選ぶことが大切です。ただし、閉鎖性のあまりにも高い場所は、トラブルの誘因となる可能性があり推奨できません。
事業場外で実施する場合も、業務に支障をきたさないよう事業場から遠くない場所を選定しましょう。
面接指導の手段
医師面接指導は原則として対面で実施します。ただし、一定の条件を満たした場合、事業者の判断でICTを活用した面接指導を実施することも可能と考えられます。ICTで実施するための条件については、下記を参照して下さい。なお、電話のみでの指導は認められていません。
「情報通信機器を用いた面接指導の実施について
(厚生労働省労働基準局長 基発0915第5号 平成27年9月15日)」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150918-1.pdf
面接指導の費用と賃金の支払い
面接指導にかかった費用は全て事業者が負担します。医療機関ごとに料金は異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
面接指導を受けるのに要した時間について賃金を支払うかどうかは、衛生委員会等で労使が協議して決めることになりますが、基本的には一般健診と同様に、賃金を支払うことが望ましいとされています。
医師面接指導の実施
(1) 事前の情報収集
面接指導を行う場合には、あらかじめ事業者や本人から必要な情報を収集しておきます。
① 対象となる労働者の氏名、性別、年齢、所属する事業場名、部署、役職等
② ストレスチェックの結果(個人のストレスプロフィール等)
③ ストレスチェックを実施する直前1か月間の、労働時間(時間外・休日労働時間を含む)、
労働日数、業務内容(特に責任の重さなどを含む)等
④ 定期健康診断やその他の健康診断の結果
⑤ ストレスチェックの実施時期が繁忙期又は比較的閑散期であったかどうかの情報
⑥ 職場巡視における職場環境の状況に関する情報
(2)面接によるストレス状況等の確認
面接指導では、医師はストレスチェックから得られた情報を参考にして、事業者から事前に収集した情報等を整理したうえで、下記の3点について確認します。
① 当該労働者の勤務の状況(業務上のストレスについて)
② 心理的な負担の状況(抑うつ症状等について)
③ その他心身の状況の確認(生活習慣・疾病について)
(3)面接による評価と本人への指導・助言
医師は面接指導の場で聴取した状況から医学的に判断し、労働者に対して指導することとなります。労働者が抱える様々な問題を解決していくために可能な範囲で相談に乗り、必要なアドバイスをし、早期解決を目指してサポートします。また面接指導の結果、専門医療機関の受診が必要と判断された場合には、専門医療機関の受診勧奨と紹介を行います。
面接指導の申し出および面談結果の記録と保存
面接指導を希望する旨の申出は、書面、電子メール等で行い、事業者はその記録を5年間保存しなければなりません。また、医師から聴取した面接指導の結果とそれに基づく就業上の措置についても、記録を5年間保存しなければなりません。
平成医会では、全国の医療ネットワークを活用し、面接指導を実施する医師や、日時・会場の手配まで対応いたします。また面接指導実施後も、労働者のメンタルヘルスケアや職場環境改善の実施など、専任担当者が細やかにご助言、お手伝いいたします。お困りの際はぜひ平成医会にお声がけ下さい。
著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者
当コンテンツの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
コラムについてのご質問やご意見は、メールでお寄せください。お電話でのお問い合わせは恐れ入りますがご遠慮ください。