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ストレスチェック結果の具体的な算出方法~応用編~

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今回は、前回に引き続きストレスチェックの結果から高ストレス者を選定する方法について、「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」をもとに、合計点数を用いた方法と素点換算表を用いた方法の具体的な算出方法を解説します。

メンタルヘルスコラム:ストレスチェック結果の具体的な算出方法~応用編~

前回のストレスチェックのコラムでは、ストレスチェックの結果から高ストレス者を選定する方法について、いくつかのポイントをお伝えしました。
ここでは「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」をもとに、ストレスチェックの結果をどのように評価して高ストレス者を選定すればよいか、より具体的な算出方法について、詳しくご説明します。

1.職業性ストレス簡易調査票と3つの領域

まずは国がストレスチェックにおいて使用することを推奨している調査票である「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」の、それぞれの質問項目を見ていきましょう。

メンタルヘルスコラム:職業性ストレス簡易調査票(57項目)

「職業性ストレス簡易調査票」には、調査票に必ず含める必要がある3つの領域である、A「仕事のストレス要因」、B「心身のストレス反応」、C「周囲のサポート」を含んでいます。
労働者には各質問の4段階の回答から、自分の状態に最も近いと思われる回答を選んでもらい、回答を点数化し、ストレス状態を評価します。

ストレスチェックを実施し、結果を評価するのは、事業者ではなく「実施者」です。
「実施者」は、予め衛生委員会などで定めた基準に従って医師による面接指導が必要な高ストレス者を選び出しますが、その際に用いる評価方法には、合計点数を用いた方法と、素点換算表を用いた方法の、二つの方法があります。

2.高ストレス者の具体的な算出方法

(1)合計点数を用いた方法

合計点数を用いた方法では、A~Cの3つの領域の点数を合計して評価します。
ここで気をつける事は、質問の一部に、点数が低いほどストレスが高いと評価すべき質問が混ざっていることです。この場合は、点数を逆転させて足し合わせる必要があります。
例えば「A-8. 自分のペースで仕事ができる」という質問で「そうだ」を選んだ場合は1点ですが、「A-1. 非常にたくさんの仕事をしなければならない」という質問で、「そうだ」を選択した場合は4点に換算されます。この方式では、ストレスが高いほど点数が高くなります。

メンタルヘルスコラム:職業性ストレスの回答例

※点数が低いほどストレスが高いと評価する質問…A1~7・11~13・15、B1~3

<合計点数を用いた判定基準>
合計点数を用いた場合の、高ストレス者の判定基準は以下の通りです。
※職業性ストレス簡易調査票57項目の場合

㋐「B. 心身のストレス反応」の合計点数が77点以上である者
㋑「A. 仕事のストレス要因」と「C. 周囲のサポート」を合計した点数が76点以上であり、かつ
「B. 心身のストレス反応」の合計点数が63点以上の者

メンタルヘルスコラム:合計点数を用いた場合の、高ストレス者の判定基準

(2)素点換算表を用いた方法
素点換算表を用いた方法では、尺度ごとに算出した点数を5段階評価に換算します。全ての尺度の評価点を出した後、A~Cの領域ごとに合計し、高ストレス者を選定する数値基準に照らし合わせます。この方法では、ストレスが高いほど、点数が低くなります。

メンタルヘルスコラム:素点換算表に基づく評価点の算出方法

※素点換算表には、上記の他に「仕事や生活の満足度」の項目がありますが、高ストレス者の選定に当たっては使用しません。

<素点換算表を用いた判定基準>
素点換算表を用いた場合、高ストレス者の判定基準は以下の通りです。
※職業性ストレス簡易調査票57項目の場合

①「B. 心身のストレス反応」の評価点の合計が12点以下の者(①=右図の赤色部分)
②「A. 仕事のストレス要因」と「C. 周囲のサポート」の評価を合計した点数が26点以下であり、かつ
「B. 心身のストレス反応」の評価点の合計が17点以下の者
(②=右図の青色部分)

メンタルヘルスコラム:素点換算表を用いた場合、高ストレス者の判定基準

どちらの基準を使うかは自由ですが、個人プロフィールとの関連が分かり易く、精度が高いことから、国では(2)の素点換算表を用いた方法を推奨しています。
なお、厚労省のストレスチェックマニュアルでは、高ストレス者に該当する者の割合を10%程度とする評価基準が示されており、今回もその基準に沿った割合で、高ストレス者を算出する方法を示しました。
ただし各事業場の状況によっては、衛生委員会での協議の上、高ストレス者の割合の基準を変更することが可能です。平成医会が提供するストレスチェックでは、素点換算表を用い、閾値によってMiddle, High, Lowの3つのレベルの変更(②の青色部分の増減)に対応することができます。
今回は高ストレス者を選定する具体的な方法についてお伝えしました。
実際に事業場において、実施者および実施事務従事者が手計算で個人のストレス結果を算出し、結果をまとめた表やレポートを作成することは、相当な手間と労力がかかり、負担が大きいのではないでしょうか。
厚労省が公表しているストレスチェック実施プログラムを利用することや、外部のストレスチェックの実施をサポートする機関に委託することで、これらの負担も軽減でき、より細やかな労働者のサポートに注力していくことができると思います。
平成医会では、平成医会の医師が共同実施者または実施者となり、産業カウンセラー等の資格をもつ専任担当者が実施事務従事者としてサポートすることにより、受検から高ストレス者面接指導および集団分析、職場環境改善の実施まで、ストレスチェック制度を円滑に進めることができます。
各プロセスを確実にサポートいたしますので、ストレスチェックでお困りの際はお問合せください。


著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者


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