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ストレスチェック制度とは?

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ストレスチェック制度について知っておく

事業場においてさらに積極的に心の健康の保持増進を図るため、事業場におけるメンタルヘルスケアの実施が促進されてきましたが、依然として仕事による強いストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者が増加傾向にあります。
 労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することが益々重要な課題となっている中で、ストレスチェックの役割は大きいと言えます。今回はストレスチェック制度の内容と役割についてご説明します。

ストレスチェック制度を導入する

ストレスチェック創設の経緯

近年、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み又はストレスを感じている労働者が5割を超える状況にあります。その中で、事業場においてさらに積極的に心の健康の保持増進を図るため、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日付け健康保持増進のための指針公示第3号。以下「メンタルヘルス指針」という)が公表され、事業場におけるメンタルヘルスケアの実施が促進されてきました。しかし、平成18年度以降も、仕事による強いストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者が増加傾向にあり、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することが益々重要な課題となっています。

こうした背景を踏まえ、平成26年6月25日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平成26年法律第82号)において、心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という)及びその結果に基づく面接指導の実施等を内容としたストレスチェック(労働安全衛生法第66条の10に係る事業場における一連の取組全体を指す)が新たに創設されました。

ストレスチェックとは

事業場における事業主の労働者のメンタルヘルスケアは、取り組みの段階ごとに以下のように分けられます。

「一次予防」:労働者自身のストレスへの気付き及び対処の支援並びに職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する
「二次予防」:メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う
「三次予防」:メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する

ストレスチェック制度は、これらの取り組みのうち特にメンタルヘルス不調の未然防止である一次予防を強化するため、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行うことを義務としています。

また、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のストレスを低減させ、ストレスの高い者を早期に発見し、医師による面接指導につなげることで、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としています。さらに、検査結果を集団ごとに集計・分析し、職場におけるストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげることで、ストレスの要因そのものも低減するよう努めることを事業主に求めるものです。ストレスチェック制度の周知方法や実施体制につきましても、法及び規則に基づいて行うことが必要ですので、ストレスチェック実施でお困りの際には、お気軽に弊会までお問合せください。

ストレスチェック結果の扱い

ストレスチェックの結果は、医師や保健師から直接労働者本人に通知され、結果を本人の同意なしに事業者へ提出することは禁じられています。事業者は、労働者から医師による面接指導の申し出があった場合には、実施義務があり、面接指導の結果と医師の意見に基づき必要な就業上の措置を取ることが求められます。

尚、労働安全衛生法第66 条の10 第3項の規定により、ストレスチェック及び面接指導において把握した労働者の健康情報等に基づき、当該労働者の健康の確保に必要な範囲を超えて、当該労働者に対して不利益な取り扱いを行うことはあってはなりません。また、申出を受けた時点で事業者が有する情報は、個人のストレスチェック結果のみであり、それだけで就業上の措置の要否や内容を判断することはできず、この情報のみで労働者に対する不利益な取扱いを事業者が行うことを禁止しています。禁止されるべき不利益取扱いとしては、労働者が受検しないこと等を理由とした不利益取扱いや面接指導結果を理由とした不利益な扱いについても同様とされています。

職場でのストレスにはメンタルヘルスケアのストレスチェック実施が有効

ストレスチェック実施の効果

一次予防を主な目的とする制度の趣旨を踏まえ、労働者本人のセルフケアを進めるとともに、職場環境の改善に取り組むことは重要です。ストレスチェックの結果を職場や部署単位で集計・分析することにより、高ストレスの労働者が多い部署が明らかになります。この結果、当該部署の業務内容や労働時間など他の情報と合せて評価し、事業場や部署として仕事の量的・質的負担が高かったり、周囲からの社会的支援が低かったり、職場の健康リスクが高い場合には、職場環境等の改善が必要と考えられます。集団ごとの集計・分析及びその結果に基づく対応は、規則に基づく事業主の努力義務とされていますが、職場のストレスを低減させるため、できるだけ実施するとよいでしょう。

最後に、現在ストレスチェック制度が義務化されているのは、50名以上の労働者を抱える事業場となっております。しかし、昨今の働き方改革の法案成立の動向からみても、50名未満の企業の事業者もメンタルヘルスに対する施策を講じることは重要なのではないでしょうか。ストレスチェックを実施していただき、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止やストレスの原因となる職場環境改善に努めていただけることをお勧めいたします。


著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長


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