ストレスチェック集団分析とは
2020.09.14
- ストレスチェック
ストレスチェック集団分析とは
そもそも、ストレスチェックの目的とは何でしょうか。
ストレスチェックはメンタルヘルスの不調を未然に防ぐ『一次予防』を目的としています。メンタルヘルス不調の予防のためには、労働者へ自身のストレスへの気付きを促し、労働者本人が予防に努めるだけでなく、職場としてもより労働者が働きやすい職場環境づくりを進める、両面からのアプローチが大切です。
集団分析ではストレスチェックの結果を、年代や性別、職位や職種、部署といった一定規模のまとまりの集団ごとに分析し、職場におけるストレス要因を評価します。ストレスチェックの集団分析は努力義務なので、実施しないことで罰則の対象となることはありませんが、せっかく実施したストレスチェックを、より効果的なものにするためにぜひ取り組んで頂きたいと思います。
ストレスチェック集団分析を行うメリット
集団分析の目的は職場ごとのストレス状況を把握し、労働者が働きやすい職場づくりに活かすことにあります。
ストレスチェックの結果を職場や部署単位で集計・分析することにより、高ストレスの労働者が多い部署が明らかになります。その結果を、職場の業務内容や労働時間など他の情報と合せて評価します。事業場や部署として仕事の量的・質的負担が高かったり、周囲からの社会的支援が低かったり、職場の健康リスクが高い場合には、職場環境の改善が必要と考えられます。
職場の状況を客観的に把握することにより、良好な職場からはその工夫を学ぶことができ、過重な負担のある職場では対策を考えるきっかけになります。
集団分析の結果に基づいて職場環境改善を行うことによって、仕事のストレス要因や健康状態が改善したり、生産性が向上したりすることがさまざまな研究によって明らかとなっています。
ストレスチェックの集団分析の集計・評価方法
ストレスチェックの集団分析の集計・評価方法は、使用する調査票(ストレスチェック項目)によって異なりますが、国が推奨している57項目の「職業性ストレス簡易調査票」や23項目の簡略版を使用する場合は、「仕事のストレス判定図」を使うことを推奨しています。
なお平成医会では「仕事のストレス判定図」に加えて、属性ごとに「健康」「やや問題あり」「高ストレス者」の3つの群に分けて割合を算出する、独自の方法を用いて集団分析を実施しています。
仕事のストレス判定図は 2 つの図からなり、①仕事の量的負担、②仕事のコントロール、③上司の支援、④同僚の支援という 4 つの仕事上のストレス要因に注目して、ストレスの大きさとその健康への影響を判定します。
「仕事の量的負担」(横軸)と 「仕事のコントロール(仕事に対する裁量権あるいは自由度)」(縦軸)をストレス要因とした場合のストレス度をプロットして表現します。
図上の斜めの線は、仕事の量的負担とコントロールから予想されるストレスの状態や疾病の発生などの健康問題の危険(リスク)を標準集団の平均を 100 として表したものです。仕事の量が多くコントロールが低いほど右下にプロットがあり、右下に近づくほどストレスが生じ易い環境であると考えます。
【職場の支援判定図】
「上司の支援」(横軸)と「同僚の支援」(縦軸)の点数から健康問題の危険(リスク)を判定しています。同僚および上司からの支援度が低いほど、すなわちプロットが左下にあればあるほどリスクが高くなります。
総合健康リスクの数字は2 つの判定図から総合的に判断して、現在の職場の仕事のストレス要因がどの程度健康影響を与える可能性があるかの目安となるものです。
例えば、健康リスクが 120 であれば健康への悪影響が平均より20% 増加することが予想されます。
健康リスクが 150 点を超えている場合はすでに健康問題が顕在化している可能性が高く、早急な改善が必要と考えます。また、120 点超えている事業場では、問題が顕在化する前に、事業場でストレス度を高めている原因について具体的に探り、対策が可能なものはないか検討を始める必要があると言えます。
集団ごとの集計・分析結果
集団分析では個人ごとの結果を特定できないため、労働者の同意を取らなくても、実施者から事業主に提供して差し支えありません。ただし、集計・分析の単位が10人を下回る場合には個人が特定される恐れがあることから、集計・分析の対象となる労働者全員の同意がない限り、集計・分析結果を事業主に提供してはいけません。集計・分析の単位が10人を下回る場合は、10人以上となるようにグルーピングをしたり、より上位の大きな集団単位で集計・分析を行うなど工夫が必要です。
集団ごとの集計・分析の結果の共有範囲の制限
集団ごとの集計・分析の結果は、集計・分析の対象となった集団の管理者等にとっては、その事業場内における評価等につながる可能性がある情報にもなります。集団分析を行った結果、管理者等に不利益が生じることがないよう、分析結果の共有範囲については、あらかじめ衛生委員会でよく調査審議を行い、実施しましょう。
著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者
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