保健師が担う役割と業務
2021.04.26
- メンタルヘルス
保健師とは
保健師は、保健師助産師看護師法において、「厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者」とされる国家資格です。保健師に近い国家資格として、みなさまがよくご存じの看護師があります。看護師は「厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」とされる国家資格です。保健師は看護師の上位資格のため、保健師として従事するには、「看護師免許」と「保健師免許」の両方の国家資格が必須となります。
看護師の就業者数は全国で約100万人以上いるのに対して、保健師の就業者数は5万人程度です。
保健師の業務
保健師は保健指導に従事すると定められていることがお分かりいただけたかと思います。
私たちが抱える健康問題は時代とともに移り変わっていきます。近年の問題としては、少子高齢化や児童虐待、自殺対策に加え、新たな感染症の出現など、ますます多様化しています。
保健師とは、これらの問題を解決するため、当事者である個人や家族を支援すると同時に、問題の原因や広がり、深刻さを見極めながら、地域社会全体に働きかけて支援するための知識や技術を有する公衆衛生(地域保健)の専門家です。
また、看護師が主に病気の人を対象としているのに対して、保健師は健康な人も対象とし、病気にならないようにする『予防』に重点を置いています。保健師は乳幼児から高齢者、健康な人から病気や障害を抱える人まで、あらゆる人の健康の維持・増進のために活動しています。
◎健康診断や健康診査の実施:乳幼児健診、成人検診
◎相談業務:妊婦の健康維持、育児相談、虐待、難病、生活習慣病、
感染症対策(covid-19・結核・aids等)、心の健康相談、
高齢者医療福祉(介護保険の相談等)、精神保健福祉、障がい者福祉
◎自立支援:精神疾患のある方が地域で生活するのをサポートするための相談や家庭訪問
◎ストレスチェック
◎健康教室の開催
◎地域ケア会議の参加:地域で生活する高齢者個人の支援、
社会基盤の整備のための会議の参加
保健師の従事する場所
保健師の業務は、地域保健・産業保健・病院保健・学校保健の大きく4つの分野に分けられ、保健師は私たちの生活に関わる様々な場所で働いています。
◎地域保健:役所や保健所、保健センター、地域包括支援センターなどの行政機関
◎産業保健:一般企業(健康管理室など)
◎病院保健:病院やクリニック
◎学校保健:学校・大学等の研究機関
保健指導
それでは、保健師の主たる業務である保健指導とはどのようなものでしょうか。
保健指導とは、医師・保健師・栄養士などの医療者が、生活習慣病などの病気の予防や健康維持・増進を目的として、対象者が自らの生活習慣における課題に気づき、健康的な行動変容の方向性を自らが導き出せるように支援することです。生活習慣とは、運動・食事だけでなく、睡眠・飲酒・喫煙などの全ての生活習慣を含みます。
保健指導では、保健師が健康診断の結果や心身の状態を分析し、対象者に必要な行動変容に関する情報を提示し、自己決定できるように支援します。そのことによって、対象者が健康的な生活を維持したり、不適切な生活習慣を改善できるように支援していきます。
仕事で多忙な人が、自身の健康問題に目を向け、健康を意識した生活をするには、強い意欲や時間を要します。疾患を発症すると、健康に気をつけようと考えられる場合が多いですが、そのようなきっかけがなく、予防行動をとることは、簡単にできるものではありません。
特定保健指導との違い
40歳以上の方は健康診断で「特定保健指導」という言葉をよく聞くと思います。「特定保健指導」とは、40歳以上75歳未満の人を対象とした特定健診の結果、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による予防効果が大きいと期待できる人に対して、保健師や管理栄養士などの専門職が行うサポートです。平成20年4月から始まった国の取り組みで、メタボリックシンドロームに着目した生活習慣病の予防対策であり、保健指導の一つと考えていただくと良いと思います。
今回は、保健師の業務についてお伝えしました。
ご要望に応じて、弊会でも保健師相談のサービスを行なっています。もしみなさんの会社やお住いの地域で、保健師に相談できる機会がありましたら、気になっているご自身の健康問題などに関する相談をしてみてはいかがでしょうか。
著者:金子 綾香
保健師
医療法人社団 平成医会
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