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パワハラチェック|人事部の方必見!チェックリストで現状分析

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令和4年4月から中小企業でも義務化となったパワハラ防止法ですが、実際にハラスメントを一度以上経験した人はどの程度いるのでしょうか。「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査」では、パワハラの割合が多くなっています。

令和4年4月から中小企業でも義務化となったパワハラ防止法。連日のようにニュースなどで取り上げられています。実際にハラスメントを一度以上経験した人はどの程度いるのでしょうか。「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間に勤務先でのハラスメントを経験したことがある人は、パワハラが31.4%、顧客等からの著しい迷惑行為が15.0%、セクハラが10.2%とのことです。
やはりパワハラの割合が多くなっています。

パワハラの種類は6つの類型があるとされていて、以下のように分類されています。

出典:あかるい職場応援団

しかし国が定める「パワハラ」は、この6つの行為を行った場合でも、「以下の①~③の要素のいずれかを欠く場合であれば、職場のパワーハラスメントに当たらない場合があることに留意する必要がある。」と位置付けています。

 ①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
 ②業務の適正な範囲を超えて行われること
 ③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること

6つに当てはまれば全てパワハラになるということではなく、他の要因も含めて総合的な判断によりパワハラになる、ということになります。
もちろん身体的な攻撃など、一発アウトとなる行為はありますので、注意が必要です。

パワハラチェックリストによる自己チェック

あなた自身がパワハラの行為者になる可能性があるのか?簡単なチェックリストがありますので、実際にテストしてみましょう。
深く考えず、感じたままに回答をしていくのがコツです。
チェックがついたものを指でカウントしてください。それでは早速やってみましょう。


□ 部下や後輩から意見を言われたり、口答えされるとイラっとする。
□ 自分が間違っていたとしても、部下に対して謝ることはない。
□ 自分は短気で怒りっぽいと思う。
□ 感情的になって、すぐその場で叱っている。
□ 厳しく指導をしないと、人は育たないと思う。
□ なんとなく気に入らない部下や目障りだと感じる部下がいる。
□ フォローが大変なので、仕事のできない部下には、仕事を与えないほうが良いと思う。
□ 業績を上げるためには、就業時刻間近であっても残業を要請するのは当然だと思う。
□ できる上司は部下の家庭環境などプライベートな詳細事項まで把握しているものだと思う。
□ 学校やスポーツで体罰をする指導者の気持ちが理解できてしまう。

チェックは何個つきましたか。
チェックの数が3つ以上の方は、パワハラの行為者となる可能性があり、5つ以上の方は要注意です。

チェックが多くついた方、またこのテストで、すぐにNO!と言いきれないと感じた項目が多かったかたは、注意が必要です。
このようなチェックリストを定期的におこなうことで、振返りと意識付けをしておくことが大切と思います。

見出し:管理職のパワハラになるよくある事例

管理職の方々は部下を持つため、比較的パワハラだ!と言われやすいポジションになるかと思います。
「職場の同僚の前で、上司から人格を否定する言葉を言われた」
人格を否定するような言動には、相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動も含まれます。
最近では多様性が企業にも求められる時代に変化してきました。
今後はより柔軟な考え方と理解が求められると思われます。

「上司から大声で叱責された」
これもよくある事例だと思います。多くの会社、管理職の方も悩まれているのではないでしょうか。何度も同じことを繰り返し聞かれ、「何度言ったらわかるんだ」など、つい出てしまうこともあるかと思います。
そこには説明不足、本人の理解度、コミュニケーションの齟齬など様々な要因が絡んでおり、一概に全てがパワハラとも言えない状況もあるかと思います。
先に述べた、①~③が当事者間であったのか、また第三者視点(周囲の方々)などの意見も含め、総合的に判断をおこなっていきます。

管理職のかたは非常に多くの配慮をしたなかで、仕事を進めていく必要があると思いますが、できるだけ多くのコミュニケーションをとり、相手(部下)を理解していく姿勢がとても重要だと思います。
もちろんこれは一方(このケースでは上司)が頑張るだけではうまくいきません。
部下も相手への質問の仕方、話を聞くタイミングなど様々な配慮が必要になります。
「相手への配慮」この点を念頭において、コミュニケーションをとっていただくといいと思います。

事業主・人事部(第三者)としての責務とは?

このパワハラ防止法には、罰則規定がありません。
ただし、場合により厚生労働省から指導や勧告を受ける可能性があり、勧告に対して適切な対応を取らなければ社名と共にその事実を公表されることも示唆されています。企業名の公表も大きなダメージになりますが、それ以前に優秀な人材の採用や定着ができないことによる経営の存続が危ぶまれる可能性もあるでしょう。
パワハラ防止法は決して放置せず、経営課題として、しっかりと対策をおこなっていく必要があるでしょう。
具体的に義務とされているのは、以下の4つとなります。

1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場からなくすべきであることを明確に示す。就業規則等でパワーハラスメントの禁止や処分に関する規定を設ける。

2.相談に応じ、適切に対処するために必要な体制の整備

相談窓口をあらかじめ定め、全労働者にもれなく周知する。相談窓口担当者が相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにする。

3.事後の迅速かつ適切な対応

相談後、パワハラに関する事実関係を迅速かつ正確に確認し、事実確認ができた場合すみやかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行い、再発防止対策を講じる。事実確認ができなかった場合でも、再発防止対策と同様の措置を講じる。

4.プライバシー保護、パワハラの相談を理由とする不利益取り扱いの禁止

相談者・行為者等のプライバシー保護のための措置を講じ、その旨を労働者に周知する。 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益な扱いをされない旨を定め、労働者に周知する。

体制整備をおこなうにあたり中心となるのは、おそらく総務部や人事部になるでしょう。
ご自身で調べるのも大切ですが、法律が絡んできますので、顧問弁護士や、顧問社労士などに相談するのが良いかと思います。また就業規則への追記も必要になってきます。
事業主の方針の明確化や罰則規定の盛り込みなども必要になりますので、ご自身だけでなく専門家の力を借りながら進めていくのが良いでしょう。

パワハラの行為者になってしまった場合・・・

もしあなたがパワハラの行為者と認定されてしまった場合、様々な処罰を受ける可能性があります。

 ①社内での処分:「解雇」、「降格」、「減給」、「けん責」、「出勤停止」など…
 ②民事上の損害賠償請求の可能性
 ③刑事罰の可能性:「暴行罪」、「傷害罪」、「脅迫罪」、「名誉棄損」など

社内の処分だけでなく、訴訟や刑事罰に課せられる可能性があること、また家庭への影響も避けられないでしょう。社内処分で終わったとしても、職場内での信頼や信用の失墜など、影響はとても大きいと考えられます。
パワハラ行為は他人の人生を大きく狂わせるだけでなく、自分自身の人生も大きく狂わせてしまうことを理解していただければと思います。

■社内アンケートの実施

とても役に立つ取組みとして、ハラスメントアンケート調査をしてみてはいかがでしょうか。組織の実態を可視化するうえで、とてもメリットがあると考えられます。
・ハラスメントに対する会社の姿勢を示せる
・ハラスメントの実態把握
・従業員への教育、気付きを与える
・アンケート結果から、課題と対策を検討、実施することができる

ただアンケートをおこなえば良いということではなく、事前にルールを決めておく必要があります。

 ①実行委員会のメンバー決めと周知
 ②アンケート対象者の範囲
 ③実施方法や実施期間(相談窓口の周知)④質問内容の選定
 ⑤情報管理と集計結果の活用方法
 ⑥トップメッセージを掲載する

上記はあくまで一例ですが、事前にルールを決め、周知徹底することがとても重要です。
従業員としてはハラスメントアンケートへの回答は、答えにくいと感じる人が少なからずいると思います。
「誰に見られるのか?」
「情報が漏れることで不利益になるのではないか?」

このような不安がよぎることで、本音での回答を貰えなかったり、回答率が低くなることで、全体像を把握しにくい結果となってしまいます。
率直な意見を貰わなければアンケート実施の意義や対策も、空振りに終わってしまう可能性があります。
本音で回答をもらうには、誰が担当者となるのか、情報管理はどのように徹底するのか、など安心してもらうための準備が不可欠です。
ぜひこの点には留意していただき、実施していただければと思います。
なお質問内容の例や実施体制づくりに関しては、厚生労働省で詳しく案内をしていますので、参考にされると良いと思います。
引用:pwhr2016_manual_ref_2_enquete_manual.doc (live.com)

また小規模な企業では情報管理が難しいと感じるケースもあると思います。
またデリケートな問題なので、社内での実施はしたくないと思われる方もいると思います。その際には、外部支援を頼るのも良いかと思います。
ただアンケートを実施するだけでなく、結果を考慮した研修(セミナー)の実施、また不安な状態が見られる従業員がいた際には、カウンセリングがおこなえるなど、包括的にサポートしてくれる外部支援を選ぶことをお勧めします。

まとめ

パワハラ防止法自体は企業に義務として定められたものです。
後回しにせず、早めに着手していただくことが望ましいと思います。
ただ、企業に対して責任だけを問うのではなく、従業員である皆さんの協力もとても重要です。就業規則や体制を整えるだけではハラスメントは無くなりません。

皆がお互いを尊重し、認め合うことで良質なコミュニケーションがとれ、ハラスメントが起きにくい職場環境が生れると思っています。
誰もが、「働きやすい環境で楽しく仕事をしたい」と思っているのではないでしょうか。それは企業側だけが必死に取り組んでも難しく、従業員皆さんの前向きな協力が必要です。
ハラスメントは上司部下だけでなく、同僚や、部下から上司というケースもあります。
ぜひ今回のパワハラチェックシートを定期的に活用し、習慣づけしていただければ嬉しく思います。


著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者


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