「書くこと」の心理的効果と感謝の気持ちを伝えるメリット
2025.12.08
- メンタルヘルス

「書くこと」の効果
ストレスは、感じたことを外へ出すことで、ある程度和らげることができます。強いストレスを抱えたとき、不安や怒りが整理できないまま膨らみ続けることがありますが、頭に浮かんだことを紙に書き出すだけで、心の中のモヤモヤを客観的に捉えられるようになります。書くことで見えてくるのは、自分でも意識していなかった本音であると言われています。例えば、漠然とトラウマに悩んでいるだけでは負担が軽くなることはありませんが、その体験を丁寧に言語化することで、ストレスの正体が明らかになり、気持ちが軽くなることがあります。自分自身を客観的に理解することが、ストレスと向き合う上で大切な要素なのです。
自分の感情に向き合うのは、容易なことではありません。しかし、自分の感情や不安な気持ちをしっかり認められる人は、緊張したり不安に苛まれたときにネガティブな感情を感じづらくなります。
このような方法を心理療法で、「筆記開示」と呼びます。これは、1980年代に生まれたもので、自分が体験したネガティブな経験を、その時の感情や思考について包み隠さず書き記すというものです。とてもシンプルな手法にみえますが、多くの実証研究があり、不安やうつ状態への効果が認められているそうです。また、筆記開示を行った被験者の多くが幸福感を持ち、ネガティブな感情が減った、さらには、筆記開示を始めて数週間から数ヶ月で、うつ状態や不安感、感情の波がおだやかになる傾向も見られ、全体的な幸福感の高まりや、認知機能の改善などが見られたともいわれています。そして、嫌いな相手に対する感情について筆記開示を行った被験者からは、その相手を許せるようになったという結果も得られました。
「書くストレス解消法」の手順
それでは、具体的に何をどのように書くとよいのか、実際の方法をご紹介します。
1.ストレスを感じた出来事について書く
2.思いつくままに愚痴を書き出す
3.なぜそういう気持ちになったのか書く
4.どうすればよかったのか、今後の対策を書く
書く時のポイント
①思いつくままに愚痴を書き出す
自分が感じた怒りや悲しみを全て書き出しましょう。人には言えない愚痴も暴言もすべて吐き出すのです。自分が考えていることを全て書ききると、だんだん心が落ち着いてきます。
②なぜそういう気持ちになったのか書き出す
自己分析をすることで、徐々に自分がストレスを感じやすい状況が見えてきます。自分のストレスパターンを知ることで、今後の対策も練りやすくなります。
自分が感じている漠然とした不安や、いつまでも忘れられない昔の嫌な思い出について書き出してみるのもおすすめです。将来の漠然とした不安を文章にすることで「何が不安なのか」、「どうなったら嫌なのか」、「そうならないために今できることは何か」といった具体的な対処法が見えてきます。
それでは、これまで述べてきた事とは逆に、ポジティブな「書く」という行為、すなわち感謝の気持ちを綴ることやその気持ち自身にも、心身に良い影響を与えることが分かっています。ポジティブな言葉を書くことで、慢性的なネガティブな感情を打ち消してくれるとカリフォルニア大学の心理学教授、ロバート・エモンズ博士はいいます。

感謝の気持ちを日々綴った結果
感謝することと幸福感や成功との結びつきについて調査した研究によると、感謝の気持ちを日々綴ることで、以下のような効果が得られたそうです。
免疫力の向上や健康管理に努めるようになるなどの身体的効果、ポジティブ感情の高まりなどの心理的効能、より外交的になったことや孤独感の軽減など社会的効能が報告されました。
感謝の気持ちが与える効果と心の仕組み
なぜ、感謝する気持ちがポジティブな気持ちに繋がるのでしょうか。
1点目は、感謝することでこれから得られる喜びを最大化できることが挙げられます。私たちは、喜びや嬉しさを継続することは難しいのですが、感謝の気持ちを心の底から味わうことで、ポジティブな気持ちにさせることができます。
2点目は、感謝する人はストレスに強いということが挙げられます。研究によると、感謝の気持ちを常に持っている人は、トラウマや逆境、苦しみからの回復がそうでない人より早い人ことが明らかになっています。エモンズ博士は、感謝の気持ちが、ネガティブな出来事に対する捉え方に影響を与え、ストレスや不安から身を守るように働くのではないかと説明しています。
3点目は、感謝する人は自尊心が高いということが挙げられます。これは、感謝することでこれまでの自分に貢献してくれた人々のネットワークに気づくことができるということが大きな要因です。それらに目を向けることで、自己の持つ価値を再認識でき、自分自身に対する見方を良い方向へ変えることができ、自己理解を深めます。その結果、自尊心が高まるのです。
皆さまもこれを機会に、「感謝の気持ち」を意識して生活してみてはいかがでしょうか。
また、嫌な事があった日や落ち込んでしまった時に、「書く」という行動を実践してみると、自分を客観視でき、前向きな思考に導いてくれるはずです。
習慣的に感謝の気持ちを書き出してみることで、ストレスに対する耐性もつき、より充実した日々が送れることでしょう。
著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長
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