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精神科における様々な入院形態

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皆さまは精神科病院と聞いてどのようなイメージがありますか。精神科病院は精神保健福祉法に基づいた病院で一般病院とは違い、入院の形態がいくつか存在します。患者さんが適切な治療を受ける為のどんな仕組みや法律があるのでしょうか。今回は精神科病院の入院形態について詳しく解説します。

メンタルヘルスブログ:精神科における様々な入院形態

精神科病院について

精神科病院とは精神障害のある方を治療・保護する病院のことを指します。
精神科病院は原則として都道府県に設置義務があります。
精神疾患の方の特徴として自分が病気であるという認識(病識)がないことがあげられます。その場合は、治療ができないため健康回復のために、精神医療では患者さんの人権を制限することがあります。つまり、本人の意志に反して医療行為をする必要がある場合があるのです。

精神保健指定医と特定医師

精神保健福祉法では、医師を含む医療従事者の行為を適正なものにするために、様々な事項が法律で決められており、その中には入院や入院後の処遇が含まれています。
また、精神保健指定医という特別な資格をもった医師の規定を設けています。この指定医の資格は厳格に定められています。

精神保健指定医

精神科医療の現場では、患者さんに入院を強制したり身体的拘束を行うなどの処置が必要になることがあります。このようなときに人権を配慮した上で実行の可否を診断するのが精神保健指定医です。
精神保健指定医は、精神科3年以上を含む5年以上の臨床経験を持つ医師であることや特定の8症例のレポートの提出等が要件で審査が行われ合格すれば資格が与えられます。5年以上の精神科医であれば誰でも取得できるという資格ではなく、合格率は約5~6割程と言われています。

特定医師

特定医師は、医療保護入院や応急入院の診断に関与しますが、その診断に基づく入院期間は12時間以内です。そのため、措置入院や緊急措置入院など強制力の強いケースでの診断には関与しません。
精神科2年を含む医師を4年の臨床経験が必要であり、精神保健指定医が複数常勤しているなどの条件を満たしている特定病院に勤めていたことが特定医師の条件です。

メンタルヘルスブログ:精神科病院における入院形態

精神科病院における入院形態

精神科病院には様々な入院の形態があります。

任意入院

本人自身で入院治療の必要性や的確な入院時期についての判断や認識ができる状態での入院のことをいいます。任意での入院ですから、本人の意思による退院をすることもできます。しかし、病状が悪いにもかかわらず本人が退院を希望している場合など、入院の継続が必要と判断された場合で任意入院での治療が難しい場合には患者さんのご家族等の同意を得て医療保護入院へ切り替えることもあります。
任意入院は、内科や外科の入院と同様に本人の意志に基づく入院ですので、精神保健指定医の診察は必須ではありません。

医療保護入院

医師から見て入院が必要と思えるほどの病状だが、本人が入院したくないという場合の入院で、精神保健指定医が入院の必要性を認め、患者さんのご家族等のうちいずれかの方が入院に同意したときの入院です。
すなわちご本人の同意の有無に関わらず治療を行う入院形態です。
尚、特定医師の診察の場合の入院期間は12時間となっています。

精神保健福祉法に基づく家族等とは次の方を指します。

① 配偶者
② 親権を行う者
③ 扶養義務者(直系血族、兄弟姉妹又は3 親等内の親族で家庭裁判所が選任した者)
④ 後見人または保佐人

措置入院

自傷他害のおそれがある人を警察官が発見したときは、すみやかに保健所長を通じて都道府県知事に通報しなければならないとされています。通報を受けた都道府県知事は、県の職員(多くの場合は保健所の職員)に調査を行わせた上で、診察の必要があると認めたときは、通常2名の精神保健指定医による診察を依頼しなければなりません。
精神疾患があり自傷他害のおそれがある場合で、警察官等からの通報や届け出等によって、都道府県知事の診察命令による2人以上の精神保健指定医の診察の結果が一致して入院が必要と認められたとき、知事の決定によって行われる入院です入院期間は、自傷他害のおそれがないと判断され入院措置の解除があるまでです。

緊急措置入院

精神疾患があり自傷他害のおそれがある場合で、正規の措置入院の手続きがとれず、かつ急速を要するとき、精神保健指定医1人の診察の結果に基づき知事の決定により72時間(3日間)を限度として行われる入院です。内容は措置入院に隼じ、急速な入院が必要な場合の強制的な入院措置といえます。

応急入院

入院治療を行う必要があるにもかかわらず、本人が入院を拒否しており、自傷他害の恐れがあるほどの症状ではないが緊急を要するようなケースで用いられる入院形態です。精神保健指定の診察では72時間、特定医師の診察では12時間の入院が可能です。応急入院は、都道府県知事の決定は不要で医療保護入院に近いのですが、保護者と連絡が取れない患者さんや入院に同意しない身元不明の患者さんなどが対象となります。
尚、入院を受け入れることができるのは施設基準を満たして応急入院指定を受けている病院に限られます。

ここまで5つの入院形態をみてきました。厚生労働省の資料では、任意入院と医療保護入院、措置入院の割合がおおよそ6:4:0.1といわれており、精神障害のために自傷他害のおそれのあるに関わる措置入院は、0.1%程に過ぎず最近は減少傾向になっています。

弊会では従業員の方がメンタル不調になった際の治療機関として、直営のクリニックの他、全国に医療提携をしている精神科病院があります。従業員のメンタルケアでお困りの際にはお気軽にご相談ください。


著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長


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