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健康を左右するヘルスリテラシー

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ヘルスリテラシーは、個人の生命や生活の質(QOL)の維持・向上に重要といわれています。このヘルスリテラシーには、どのような意味があるのでしょうか。私たちの健康とヘルスリテラシーとの関係性について解説します。

メンタルヘルスコラム:健康を左右するヘルスリテラシー

みなさまは「ヘルスリテラシー」という言葉をご存知でしょうか。
近年メディアで取り上げられることも増えてきています。現代社会は、インターネットやメディアを通じて様々な情報に溢れています。自分に必要な情報を正しく入手することは簡単そうにみえて意外に難しいことです。今回は、ヘルスリテラシーについて解説します。

ヘルスリテラシーとは何か

ヘルスリテラシーとは、健康や医療に関する情報にアクセスして、理解し、評価、活用するための能力のことです。それによって、健康や医療についての判断や意思決定をして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるものです。

このヘルスリテラシーという言葉は1970年代に初めて使われ始めたようです。1990年代から様々な定義がされてきました。ソーレンセンらが2012年にヘルスリテラシーの定義をしているものの、定義は専門家によって若干異なっているのが現状です。

WHO(世界保健機関)によると、ヘルスリテラシーは「健康増進、または維持に必要な情報にアクセスし、それを理解して利用していくための、個人の意欲や能力を決定する、認知・社会的なスキル」とされています。
様々な定義が存在するヘルスリテラシーですが、共通している内容は大きく以下の2つです。

個人が健康情報にアクセスし、理解し、活用する能力
それを可能にするために、組織や社会がサポートする能力

リテラシーとは、元々は読み書き能力のことを示す言葉でしたが、近年では、“自分に必要な情報を選び、活用する能力”という意味合いが強くなっています。

なぜヘルスリテラシーが重要なのか

ヘルスリテラシーは個人にとっては、その人の生命や生活の質(QOL)の維持・向上に重要といわれています。ヘルスリテラシーが低いことにより、病気に罹ったり、受診が遅れたりして生命が脅かされたりすることは、実は頻繁に見られることで、ありふれた現象でもあります。
アメリカで行われたヘルスリテラシーの研究によると、ヘルスリテラシーが低い集団(低ヘルスリテラシー群)の特徴として、男性・高齢・多くの合併症を抱える・低学歴が挙げられたそうです。

メンタルヘルスコラム:ヘルスリテラシーが低いとどうなる?

ヘルスリテラシーが低いとどうなる?

ヘルスリテラシーが低いと、健診を受診しなかったり、健康診断で異常が見つかっても精密検査を受けない傾向が高まります。また、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病と診断されたとしても、自覚症状がないからと、生活習慣を改善しなかったり、治療を開始しないことが考えられます。その結果、脳卒中や心筋梗塞など重大な病気を発病することになってしまうのです。心の病気についても同様で、うつ病の初期症状が現れていても、本人や家族、職場の上司・同僚が気づかず、うつ病まで進行してしまうことで休職が必要になることもあります。病気の初期症状を多くの人が知っていることは、実はとても重要です。

近年は、インターネット上に科学的根拠の乏しい医学的な情報や健康情報が溢れ、多くの健康食品、サプリなども出回っています。情報を取捨選択し、正しい情報に基づいて行動できないと自身の健康を脅かすことにもなりかねません。

ヘルスリテラシーが十分でなかったケース

高血圧が続き、結果として脳出血になってしまった方がいたとします。医療機関を受診し、服薬はしていましたが、十分な効果が得られていない状態でした。この場合、問題となるヘルスリテラシーはどのような事でしょうか。

1つ目は、高血圧という疾病の理解、2つ目は、医療者とのコミュニケーションが挙げられます。
高血圧という疾病をもっと正しく理解し、血圧を下げるための生活習慣の改善が図れていたら、高血圧による脳出血の発症を防ぐことが出来たかも知れません。また、受診の際に日頃の血圧を医師に提示したり、医療者と十分なコミュニケーションを図り、血圧を下げるための相談が出来ていたら、異なった結果になっていたかも知れません。

ヘルスリテラシーの1つである受診行動は、慢性的な疾患においては非常に重要です。但し、受診をしていることによって、患者側は「受診している安心」となり、医療者側も「薬を飲んでもらっているから大丈夫」となりがちです。両者は客観的な判断をもって、「どのような状態までコントロールするべきか(しなければならないか)」と目標を念頭に置き、常に相談しながら、進めていく必要があります。

ヘルスリテラシーについてご理解いただけましたでしょうか。
ヘルスリテラシーが高い人は、健康的な行動習慣を確立していたり、仕事のストレス対処において、積極的に問題解決をしたり他者からのサポートを求めることが出来る傾向が強いそうです。
ぜひヘルスリテラシーを高めて、豊かな生活を目指していきましょう。


著者:金子 綾香
保健師
医療法人社団 平成医会


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