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私たちの身体をめぐっているホルモン

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ホルモンという言葉を聞いたことがありますか。 「ホルモンバランスの乱れによる不調」という言葉も聞かれますが、実際にホルモンについて考えることは少ないかと思います。現在、ヒトの体の中には100種類以上のホルモンまたはホルモンに類似したものが見つかっていると言われています。今回はそのホルモンについて解説します。

メンタルヘルスコラム:私たちの身体をめぐっているホルモン

ホルモンとは何か

ホルモンは血液の中ではごくわずかな量しかありません。しかし、ホルモンには体の健康維持のため、様々な機能を調節する働きがあります。
ストレスなど身体の中や外からの刺激を受けると、体内の内分泌臓器で化学物質が作られ、血液を通じて身体の中を巡ります。この化学物質のことを、ホルモンといいます。
血液に乗って身体の中を巡ったホルモンは、身体の特定の器官の細胞にたどり着くと、一定の効果をもたらします。

代表的なホルモン

1.成長ホルモン

名前の通り、“身長を伸ばすホルモン”としてよく知られていますが、成長ホルモンにはもう1つ重要な役割があります。それは、代謝を促す役割です。
成長ホルモンは加齢とともに低下してきます。成長ホルモンの分泌量は、思春期後期に最も多くなり、その後は加齢に伴って低下していきます。60歳では最も多い時の10~20%くらいになります。しかし、微量となってもホルモンの役割は大きく、ホルモン不足によって骨が弱くなったり、筋肉が衰えたり、太りやすくなるのです。

2.アドレナリン

興奮した時や、緊張した時に活性化する交感神経が優位になった時に分泌されるホルモンの1つです。「闘争か逃走のホルモン」と呼ばれ、元々は生命の危機に直面した時に分泌されるものです。現代社会において生命の危機はあまりありませんが、現代社会に置き換えると、不安・緊張・イライラなどのストレスが当てはまります。また、運動やトレーニングで追い込んだ時にも分泌されます。アドレナリンが分泌されると、血管が拡がって血流が増したり、筋力が向上します。また、心拍数が上がり、集中力や判断力も向上します。これらのことで、普段使えていない力、潜在能力が最大限に引き出されるのです。一方で、アドレナリンを分泌し続けると、自律神経のバランスを崩すことになりますので、注意が必要です。

3.セロトニン

先ほどのアドレナリンが分泌されると、抑制ホルモンであるセロトニンがアドレナリンの分泌を沈静化しようとします。セロトニンは、別名「幸せホルモン」と呼ばれ、精神の安定や睡眠の質を向上させる役割を担っています。不足することで、「無気力」「無関心」などの抑うつ症状が現れたりします。
セロトニンについては、これまでのコラム(セロトニンの増加が心身に及ぼす効果:https://heisei-ikai.or.jp/column/serotonin/ )にも掲載しております。興味がある方は、ご覧ください。

4.エストロゲン

女性ホルモンの1つであり、妊娠や出産に深く関わっているホルモンです。しかし、その役割だけでなく、女性らしさを高めるホルモンとして、女性らしい身体つきにしたり、肌や髪質を良くしてくれるともいわれています。
思春期に分泌が盛んになり、更年期と呼ばれる40代後半~50代にかけて急激な低下が起こります。このことで、自律神経失調症のような症状が現れ、「更年期障害」と呼ばれています。イライラ、めまい、ほてり、のぼせ、動悸、息切れ、汗をかきやすい、不眠、情緒不安定などの症状です。

ホルモンの異常による病気 -内分泌疾患とは-

ホルモンの量や働きの異常による病気が内分泌疾患です。ヒトの身体には、身体の内部を一定の状態に保ち、維持しようとする機能(ホメオスタシス)が備わっています。
血液中ではホルモンは非常に狭い範囲内(基準範囲内)の量になるように絶妙にコントロールされています。ホルモンの量は多すぎも、少なすぎも望ましくなく、ちょうどいい量であることが重要です。ホルモンの量が多いと、機能亢進・ホルモン過剰となります。一方、ホルモンの量が少ないと、機能低下・ホルモン欠乏となり、体のあちこちに変化を及ぼします。
早く良くなりたいと思って決められた量以上や少ない量のお薬を飲んでしまうことは、体の調節を崩すので禁物です。かかりつけの医師の指示に従い、決められた量のお薬を飲むことが大切です。

メンタルヘルスコラム:ホルモンバランスを整えるには

ホルモンバランスを整えるには

1.食生活の改善

バランスのとれた食事が最も大切です。たんぱく質やビタミン、ミネラルなどの栄養が不足しないようにしましょう。ビタミンやミネラルを豊富に含む、お茶や生野菜、果物などを日頃からとるよう心がけましょう。また、ダイエットなどの極端な食事制限や、偏った食事はホルモンバランスの乱れを引き起こしやすくなります。
カフェインには興奮作用があるため、アドレナリンの分泌を促すにはカフェインを含むものが効果的です。但し、寝る前にカフェインが含まれているコーヒーなどを摂取すると、眠りにつきにくくなるため、カフェイン摂取のタイミングには十分注意が必要です。

2.良質な睡眠の確保

質の良い睡眠は重要なポイントです。毎日ある程度決まった時間、遅くとも午後11時には布団に入り、6~8時間程度の睡眠を取ることが望ましいとされています。また、起床時に日光を浴びることで体内時計を整えることができ、自律神経を健全に働かせることに繋がります。
また、睡眠の数時間前にはお風呂に入り、リラックスすること、就寝前にはカフェインを摂らない、スマホやパソコンを見ないことも、脳の興奮を和らげるために有効であり、質の良い睡眠を導いてくれます。

3.適度な運動

激しい運動や筋トレなどを無理にする必要はありません。習慣的に続けていける運動が理想的です。
散歩や軽いジョギングで十分です。やり過ぎて疲れが溜まってしまったり、興奮して眠れなくなることのないように適度に行うことがポイントです。

今回はホルモンについて解説しました。私たちの身体にとって重要な役割をもつ多くのホルモンがあることがお分かりいただけましたか。ご紹介したホルモンは、ホルモンのごく一部です。
心身の健康を保つために、日頃からホルモンバランスを整えられる生活を心掛けていけると良いと思います。


著者:金子 綾香
保健師
医療法人社団 平成医会


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