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働きやすい職場へ~職場環境改善のポイント~

  • ストレスチェック
「働きやすい」とは、どのような職場を思い浮かべるでしょうか。それぞれ価値観は違いますので、「理想の職場」の定義は千差万別です。今回は、職場環境の改善についてピックアップします。皆さまがお勤めの会社の職場環境もあわせて考えてみてはいかがでしょうか。

ストレスチェックコラム:働きやすい職場へ~職場環境改善のポイント~

職場環境改善とは

メンタルヘルス不調を未然に防止するには、労働者本人がセルフケア(自分で自分のケアに努めること)を進めるとともに、会社としても職場の課題を洗い出し、職場環境の改善に取り組むことが重要です。
職場環境の改善とは、職場の物理的レイアウト、労働時間、作業方法、組織、人間関係などの職場環境を改善することで、労働者のストレスを軽減しメンタルヘルス不調等を予防しようとする方法です。

費用便益から見た職場環境改善の効果

職場環境改善のメリット(費用便益)を検討した研究では、職場環境改善の実施にかかる費用が1人当たり7,660円なのに対し、実施の結果生産性が向上して得られる利益が1人当たり15,200円と、費用便益が約2倍と見積もられています。職場環境改善の実施は、労働者のメンタルヘルスの改善と生産性の向上の両方に効果が期待できる活動です。

職場環境改善の実施方法

厚生労働省の職場環境改善の手引では、職場環境改善の計画立案を、誰が主体となって実施するかによって以下の3つに分類しています。

① 主として事業者や安全衛生委員会が行う経営層主導の職場環境改善
② 主として管理監督者が行う職場環境改善
③ 従業員参加型の職場環境改善

この3つが職場環境改善の全てではありませんが、事業場で職場環境改善をはじめようとする時、どの方式をとるか考えると導入しやすいでしょう。

ストレスチェックコラム:職場環境改善の具体的な取り組みのポイント

職場環境改善の具体的な取り組みのポイント

具体的に職場環境改善を進めていくためのポイントをお伝えします。

・ストレスチェック集団分析の活用

ストレスチェックの結果を集計・分析することにより、高ストレスの労働者が多い属性や事業場、部署が明らかになります。
業務内容や労働時間など他の情報と合わせて、集団分析の結果、事業場や部署として仕事の量的・質的負担が高かったり、周囲からの支援が低かったり、職場の健康リスクが高い場合には職場環境の改善が必要と考えられます。
集団ごとの集計・分析及びその結果に基づく対応は、事業者の努力義務とされていますので、積極的に実施しましょう。

・衛生委員会等で審議を行う

衛生委員会は、労使が一体となって審議する重要な場です。議題の中に既に顕在化している職場の課題や、労働者から出た意見などを盛り込み審議を重ねることで、その他の潜在的な課題も見えやすくなります。

・管理監督者および労働者に向けメンタルヘルス研修を実施する

職場環境改善において、管理監督者および労働者向けの研修は有効な手段の一つです。管理監督者には、集団分析結果の報告や、職場環境改善のための方法の紹介などの他、ラインケアの機能を高めるために、不調な社員の見つけ方、声のかけ方などの内容も研修に含めると良いでしょう。

・従業員参加型のワークショップを実施する

労働者が職場環境改善の重要性を理解し、積極的に取り組みに参加する土台がある場合は、従業員参加型のワークショップを実施することが効果的です。
厚労省が作成している、職場改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)は、従業員の参加のもと、仕事の負担やストレスを減らして快適に働くための改善アイデアが盛り込まれています。従業員同士によるグループ討議などで利用すると良いでしょう。

・アンケートを実施する

職場環境の改善において重要なものがアンケートです。事業者からの目線だけでは、会社の内部で抱える問題は見えにくいこともあるでしょう。せっかく考えた改善策が、従業員の要望とズレていれば、余計に状況を悪化させる場合もあります。そこで、実際に働く従業員から「現場で感じること」「普段思うこと」を聞きだし改善につなげます。
質問項目は、職場の状態、施設や設備への要望、仕事の満足度、福利厚生など職場の状況に応じて検討しましょう。また匿名性を保って回答できるようにするなど、配慮することが必要です。

・相談窓口の設置

2020年6月に施行された、改正労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)により、ハラスメント相談窓口の設置が企業の義務になりました。(中小企業は2022年4月から)
ハラスメントを含めて、労働者がより声を上げやすい環境の整備を目指すため、社内・社外の相談窓口を開設し労働者に周知することが大切です。

労働者は生活時間のおよそ3分の1を職場で過ごします。その環境が大きなストレスになる場合、労働者が不幸であるだけでなくメンタルヘルス不調や疾病のリスクが高まり、仕事の質や生産性の低下をきたし、ひいては優秀な人材が流出することにも繋がります。
一方で、労働者の声に耳を傾け、職場環境の改善に取り組む会社は、生産性が向上し優秀な人材も流出しにくくなるばかりか、職場への愛着が熟成され人が成長していきます。
一つずつ、できることから始めてみましょう。

平成医会は、企業に合わせた職場環境改善の取組みをサポートしています。
衛生委員会の立ち上げやセミナーの実施、ハラスメント対応の外部相談窓口の設置など多岐にわたってサポートさせていただきますので、ご検討の際はお問合せください。


著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者


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