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良好な人間関係と認知行動療法

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仕事をしていく上で、人間関係はとても重要です。 多くの人が人間関係でストレスを感じています。 今回は、親密度を深めて、人間関係を良好にするためのヒントと自分自身のメンタルケアについてお伝えいたします。

相手の視野に入って好感度UP

目にする回数が多いほど、人はその人に好感を持つようになります。これを、「単純接触効果」といいます。
具体的には、相手の視界に多く入ることや相手が出席する場にできるだけ参加する、視線があった際には目であいさつするなど、ちょっとしたことで声をかけてみることも効果的です。

好意は好意を呼ぶ

人は好意を示されると、好意を返したくなります。逆に嫌いという感情を相手に示すと、相手もあなたを嫌いになります。前者を、「好意の返報性」といい、後者を「嫌悪の返報性」といいます。
好きでない人からでも好意を持たれることは嬉しいものです。やがて自分自身も相手に好意を感じるようになります。好意を示す為にその人を褒めてみましょう。
しかし、嫌いな人に好意を持つことは簡単なことではありません。好意を持つと難しく考えずに、褒められるところを探すという気持ちで見つけてみてください。コツは、必死で探すことと、丁寧に観察することです。
これまで、悪いところしか見ていなかったことに気づくかもしれません。

鏡の効果

鏡をのぞいて自分の顔を見た時、笑っていれば鏡の中の自分も笑顔ですが、怒っていれば鏡の中の自分も怒った顔をしています。このように自分の感情が相手にも反映されることを鏡の効果、またはミラー効果といいます。
「この人いやだな」「話しにくいな」というような感情でいると表情も自然と暗く、固くなってしまいそれが相手にも反映されてしまうのです。そのため、笑顔で接していれば相手も笑顔で接してくれるようになるはずです。
効果はその場でわかるような即効性はありません。しかし、優しくした人には優しく、つらく当たってしまった人にはつらく当たられるというように自然となっているのではないでしょうか。

認知を変えてストレスに強くなる

同じ出来事に対しても、人によって受け取り方は違うものです。楽観的にとらえられる人、悲観的にみてしまう人、怯えてしまう人、ワクワクする人、それは、正確の違いなので、どちらが一方的に良くてどちらが悪いというわけではありません。しかし、その認知がマイナス方向へ偏りすぎると、ストレスがたまりやすくなり、行動にまで悪影響が出る可能性があります。仕事がはかどらなくなったり、休日の行動力がなくなったり、職場の人間関係が悪化したりすることもあります。また、そこからうつ病を発症してしまう危険性もあるのです。
認知行動療法とは、個人の主観的な物の受け取り方、感じ方を変えることでストレスを減らし、行動もプラス方向に変えていこうという療法です。起源は、1970年代に体系化された治療方法で、アメリカのベックによる抑うつ研究から生まれました。ベックは、2006年にノーベル賞と同等ともいわれる医学賞・ラスカー賞を受賞しており、その功績は世界的に高く評価されています。現在は、メンタル不調者でなくても、日常のストレス対処やうつ病予防などに取り入れることができるものとして広がりを見せています。
人は、主観的な受け取り方を変えることで、ストレスが減少し、行動も変えることができます。主観的な受け取り方を変えることすなわち認知を変えることです。

自分でできる認知行動療法

ここでは、休み明け対策にも使える、「なんとなく心が仕事についていかない」と感じたときに試してほしい、ご自身でできる認知行動療法をご紹介いたします。
うつ病の患者さんにはもっと前段階のトレーニングがありますが、メンタル不調でないのにやる気が起きないことやなぜか前向きになれないことはあると思います。このように感じることがある方には、認知を前向きに変え、行動を前向きにするために、次のトレーニングがお勧めです。

①「大好きな人が同じ立場だったら、どう声をかけてあげるか」を考えて、その言葉を自分自身に言ってあげる。
②似た立場の他の人の話や受け取り方を聞いてみる。反論をせず、合わせてみるのがポイント。マイナスな受け取り方をしている人の話は流す。
③リラックスして、眠りの質を上げる工夫をする。休日に運動する、飲酒やカフェインを減らす、ゆったりとした音楽を聴くなど。
④読書療法。普段読まない本や人から勧められた本を読んでみるのがお勧め。

その他に、親しい人にとにかく自分のいいところを多く言ってもらうことなども良いでしょう。そうすることで、自己効力感も上がり、ストレス耐性に強くなります。

今回は、人間関係を良好にする工夫と、自分自身のメンタルケアについてお伝えしました。人間関係が良好になれば、プライベートも充実し、仕事の生産性も向上します。人間関係に疲れたときは自分を大切にして、今回ご紹介させていただいた、「自分でできる認知行動療法」をぜひ試してみるとよいでしょう。


著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長


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