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企業が考える発達障害の傾向がある人へのサポート

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発達障害について2回シリーズでお伝えしています。今回は、発達障害の傾向がある人が適材適所で働くことのできるポイントを解説します。発達障害の傾向がある人は、努力しても得意にならない分野もありますが、本人に合った指導法で教えればできるようになることも多いといえます。
メンタルヘルスコラム:企業が考える発達障害の傾向がある人へのサポート

発達障害の種類によって向いている仕事

発達障害の傾向がある人に一般的な適職をご紹介します。あくまで「一般的」というのは、自閉症スペクトラムや注意欠陥・多動障害の傾向がそれぞれ強い人でも露出する特性はさまざまであり、特性が重なっている場合も多いからです。

〇自閉症スペクトラム(ASD)の向いていると考えられる仕事の一例

ルーティーンワーク
  ・部品の組み立て
  ・クリーニングなど

ルールから外れるものをみつける仕事
  ・サイトのバグ
  ・文書のつき合わせ

なにかを研究する仕事
  ・統計学者、統計学系
  ・○○アナリスト(証券アナリストなど)

数字や図形を正しく調べたり、組み立てたりする仕事
  ・会計士
  ・予算アナリスト
  ・簿記・記録管理担当者
  ・エンジニア 

〇注意欠陥・多動障害(ADHD)の向いていると考えられる仕事の一例

なにかを「起こす」仕事(フォローできる人が必要)
  ・起業家
  ・新規企画部
            
クリエイティブ職
  ・デザイナー
  ・イラストレーター
  ・広告企画

「推し」や「プレゼン」がメインの仕事
  ・セールスマン(ただし遅刻、約束忘れなどが多い場合は不向き)

AD/HDの方の傾向として、ルーティーンワーク、約束や遅刻が致命的になる仕事、不注意が致命的になる仕事、危険な仕事以外なら、多くの仕事に対応できると思われます。

発達障害の傾向がある人の採用や就職に関しては、一律の対応が難しいという特徴があります。
発達障害には、一般的な傾向や対処法はもちろんありますが、一律の特徴・対策を当てはめることはできません。医学的見解や名称までもが何度も何度も変わってきたことも、その証拠だと思います。ですから、「一般的な特徴」と「実際の本人」の2つの見地から、適材適所を検討していくことが理想的です。実際の本人を検討する際には、自己申告だけでなく、周囲の意見も参考にしてください。そうして長い目で適所を探していくことで、本人が輝き、会社にも貢献できる人材になることができます。

また、子供の頃に発達障害であると診断され、本人が自己の特性や苦手、得意を理解している人よりも、発達障害の傾向が強い程度の「大人の発達障害」のほうが、適材適所を見つけるのが難しいことがあります。なぜなら、本人が自己の特性や苦手、得意を正しく理解していなければ、申告することもできませんし、周囲に理解してもらうことはさらに難しくなるからです。明らかに向いていない職種を希望することもあります。ですから、現実と理想のつじつまを合わせていくことが必要です。

メンタルヘルスコラム:適材適所を探す4つのポイント

適材適所を探す4つのポイント

発達障害の傾向がある人が適材適所をみつけるための4つのポイントを解説します。

① 本人の症状、特性の確認 

  ・自己申告(自覚がある場合)
  ・発達障害に明るい精神科医師への受診、アドバイス
  ・リワーク、ジョブトレーニング(ジョブコーチ)、プレワーク、
  ・心理検査、テストなど

② 対応・対策をとることが可能な部署への配置

個人の特性を生かし、ストレスが極力少なくなるような場所を探す。
また、どの上司の元がよさそうかを検討する。

③ 就労中の本人との面談、周囲からの意見調査を繰り返す

(雇用してから、また部署変更してから1年間は1か月に1回がおススメ)
自分自身を客観的に見ることができないという特性も考慮して、本人からの申告だけではなく、周囲からも情報を得る。
ただし、発達障害の障害者枠での雇用でない場合は、他の社員に話をするのはやめておく。

④ 困ったときは専門家に相談

  ・産業医、顧問医
  ・障害者職業センター
  ・都道府県の発達障害者支援センター
  ・心理カウンセラー(発達障害に精通している)

困ったときは、自己解決を試みる前に、専門家に相談してみるとよいでしょう。その理由は、間違った対応をすると、二次障害としてのうつ病をまねくことがあるからです。精神科に来られる会社員で、発達障害の傾向がある多くの人は、うつ症状を呈していることがあるため、注意が必要です。

組織でできる対処方法

ダイバーシティ採用の一環として、発達障害の傾向がある人に向けて組織でできることがあります。それは、管理職が正しい知識を持ち、指導法についてセミナーを実施することや一般社員が相談しやすい体制を確立することです。
例えば、自閉症スペクトラムの人に必要とされる、作業マニュアル作りや衝立など、ハード面での準備ももちろん必要ですが、ソフト面の準備もおろそかにできません。
先日、役員クラスの人からも、現場の若い人の方が発達障害の人を受け入れるのに抵抗がない、という話を聞きました。昨今のグローバル化などで、「違い」や「多様性」を受け入れる土壌ができているのかもしれません。
発達障害の症状を強くする、しないは、上司の理解や指導に大きく左右されます。また、本人はもちろん、同僚、管理職が専門家に相談しやすい体制、手段を導入することも重要です。

発達障害は「スペクトラム」であり、傾向、色合いの問題ですから、個人によって傾向も対処法も異なります。知識として、一般的な特徴や対処法を知っておくことはもちろん大事ですが、型に当てはめすぎず、まずは「多様性」ととらえて対処法を考えてみてください。むやみに叱ったり、人前で問いただしたりすることは、症状を悪化させてしまいます。そのようなときには、個人面談で本人や周りから、情報を焦らずに得るようにすると適切な対処方法に繋がるでしょう。

また、発達障害の特性の1つとして、ストレス下に置かれると、その悪い方の特性が強く露呈するというものがあります。同じ人でも、特性に合った仕事で、理解のある上司・同僚のもと、ストレスが少なく働けている場合と、特性に合わない仕事で、理解のない上司・同僚と一緒に、常にストレス下にさらされている状態では発達障害の悪い面が露呈する割合も異なり、障害かどうかの見方も変わってきます。

人は誰しも凸凹があります。その特徴が少しだけ大きくでていると、発達障害とみなされることがあります。
しかし、発達障害の傾向がある人も適材適所をみつけることができ、社会的に障壁がなければ障害とはみなされません。私たちが、少しだけ人にやさしくなることができれば、そのような障壁は小さくなってくるのではないでしょうか。皆さんもこれを機にご自身の言動や周りの環境について考えてみてください。


著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長


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