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行動変容における5つのステージ

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厚生労働省は令和元年11月に実施した「国民健康・栄養調査」の結果を取りまとめ、先日公表しました。令和元年調査の結果では、食習慣・運動習慣を「改善するつもりはない」人が4人に1人となっていました。 「改善するつもりのない」人は実に4人に1人もいるそうです。健診結果で肥満や高脂血症など、異常が指摘されているにも関わらず「なぜあの人はやる気がないのか」と思っている人もいるかも知れません。「痩せた方がいいよ」「食べ過ぎない方がいいよ」など周囲が色々と心配をして声をかけているのに、どうして何もしないのかと疑問を抱いている人もいるのではないでしょうか。今回は私たちの生活習慣改善のカギとなる、行動変容について解説します。

メンタルヘルスコラム:行動変容における5つのステージ

行動変容とは

行動変容とは言葉の表すとおり、人の行動が変わることを指します。行動変容は少しずつ段階を経ていくことが一般的であり、「無関心期」⇒「関心期」⇒「準備期」⇒「実行期」⇒「維持期」という、5つのステージを通ると考えられています。これを行動変容ステージモデルと呼びます。行動変容ステージモデルは1980年代に禁煙の研究から導かれたモデルですが現在は禁煙にかぎらず、さまざまな健康に関する行動について研究・実践がすすめられています。5つのステージは、以下のようになっています。

1.無関心期:行動を変容することに全く興味がない時期

2.関心期:行動を変容することに関心はあるが、実行する意思はない時期

3.準備期:行動を実行したいと思っている時期

4.実行期:行動変容が見られるが、持続する自信がない時期

5.維持期:行動変容が見られ、持続にも自信がある時期

ステージは時間的な経過で分類することが多いですが、気持ち(心)の変化が連動しなければ次のステージに進むことは難しいと考えられます。

行動変容できた具体例

運動習慣のなかったAさんがウォーキングを習慣化したケースに例えてみます。
Aさんは35歳の男性で特に健康上の問題を感じることなく日常を過ごしていました。
ある日、会社の同僚から「最近太ってきたからスポーツジムに入会したよ。一緒に通わないか?」と声をかけらえましたが、Aさんは「仕事だけでも疲れるから、運動はしないよ」と言って全く興味を持ちませんでした。これが①の無関心期、全く関心がない状態です。

しばらくして会社の健康診断があり体重が増加し、BMIが高いことを指摘されました。
Aさんは「肥満って書かれているな。運動した方がいいのだろうけど、時間もないし、面倒だな」と思いました。これが②の関心期、関心はあっても実行する意思はない状態です。

それから1か月後、スポーツジムのイベントが開催されると同僚から誘われてAさんは参加してみることにしました。運動をするのは10年ぶりでした。Aさんはとても疲れましたが、気持ちよく汗をかいて爽やかな気分になりました。運動を始めたい気持ちは持ちつつも具体的な行動には移せずにいました。これが③の準備期、行動を実行したいと思っている状態です。

スポーツジムのイベントで週2回、1回30分以上の運動が効果的と聞いていたAさんは、自分で30分のウォーキングを始めてみました。30分だったら忙しくても出来そうだけど、ずっと続けていけるか不安も感じていました。これが④の実行期、行動変容が見られるものの、持続する自信がない状態です。

何とか3ヵ月間、週2回30分のウォーキングを続けることが出来ました。気付けば、体重は1.5㎏減っていました。Aさんは自信もついたため、体重を5kg減らすことを目標にしました。その後も、ウォーキングを継続することができ、少しずつ体重が減ってきています。これが⑤の維持期、行動変容が見られ、持続することにも自信がある状態です。

メンタルヘルスコラム:次のステージへ進むための働きかけ

次のステージへ進むための働きかけ

最も重要なことはステージを把握し、ステージにあった働きかけをすることです。逆に言えば、時期に合った介入をしないと効果がないといえます。各ステージに効果的な働きかけをみていきます。

1. 無関心期への働きかけ

行動を変化させることのメリット、このままの状態が続くことのデメリットを知ってもらうことが効果的です。人への働きかけだけでなく、生活環境を変えることもひとつの方法です。無理にやろうとしても、興味も意欲もないため効果はありません。

2. 関心期への働きかけ

関心を持ち始めている時期なので、行動を変えてみる提案が良いでしょう。行動が変えられない状態をネガティブに、行動が変えられた状態をポジティブにイメージ出来るように働きかけると効果的です。

3. 準備期への働きかけ

うまく行動できるという自信を持たせるために褒めたり、自分を認めることが効果的です。この時期にはこれから取り組みを始めることを周囲に公言するのも良いと思います。

4. 実行期と維持期への働きかけ

継続できるように支援し逆戻りしない対応が必要です。継続出来ていることに対して賞賛を与えることや自信となるような声掛けなど、周囲の環境づくりも大切です。

行動変容が進んでいくにあたって、必ずしも「無関心期」から「維持期」に順調に進んでいくとは限りません。運動を始めたとしても途中でやらなくなってしまうことがあるように、前のステージに戻ってしまう「逆戻り」という現象が起こることも見受けられます。逆戻りを起こさないように、維持期になって行動が定着するまでは定期的な働きかけが必要です。

今回は行動変容ステージモデルについて解説しました。特定健診の設問で、生活習慣を改善する気持ちがあるか確認しているのはみなさんの行動変容のステージを探っているからなのです。ステージに合った働きかけをすることで、ご自身や周囲の方の行動変容を促せるかも知れません。


著者:金子 綾香
保健師
医療法人社団 平成医会


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