情報過多とストレスとの関係性
2019.10.15
- メンタルヘルス
皆さまは、日々多くの情報に囲まれて生活していることを意識したことはありますか。
例えば、パソコンやスマートフォンの使用、テレビ、広告、電光掲示板など絶えず何らかの情報が目に飛び込んでくる状況にあります。その中には、本当に必要かどうか定かではない情報も蔓延しており、そのために多くのストレスを感じることもあるでしょう。
今回は、情報過多とストレスとの関係について解説いたします。
情報量の増加による弊害
情報を、生活や仕事をする上で必要な「選択肢」と言い換えてみましょう。
選択肢は多い方が良いと思われがちですが、実は選択肢の多さが人々の幸福度を下げているという説もあるのです。
選択肢が多くなることで生まれる悪影響としては
1.無力感が生まれる(多くの選択肢を前にして選べなくなり無力感を感じる)
2.満足度の低下(選ばなかった選択がよく見えることで後悔が生まれる)
3.期待値の増加(選択肢が多いと比較対象が増え、より期待値が高まる)
などが挙げられます。
近年では、SNSの普及も情報過多に関連してストレスを増進させています。それは、「ソーシャル疲れ」とも呼ばれており、人と繋がり過ぎるあまり、疲れてしまう人が増加しているという現象です。改善策としては、普段の生活で意識的にSNSを利用しないようにするなど、一旦離れてみるという行動が大切なようです。
前頭葉とストレスの関係
ある研究では、多言語でややこしい言葉が使われている問題や複雑な計算問題を行い、脳に負荷をかける実験を行ったところ、そのような複雑な問題が課された際にストレスホルモンの分泌量が増加した人は、前頭葉の右側の血流が上昇したという結果が出たといわれています。
すなわち、入ってきた情報を脳が処理するので、情報過多に陥っている場合には、脳がオーバーヒートしている状態になるのです。脳自体は痛みや疲れなどは感じませんが、多くの情報に触れていると、脳は入ってきた情報の処理に追われて、疲れてしまいます。その状態になった脳は、判断力が低下し、ちょっとしたストレスにも過敏に反応しやすくなってしまうのです。
大切なのは「情報の取捨選択」
脳の疲労を回復する方法として、もっとも簡単な方法は2分~3分ほど、目を閉じてリラックスすることです。目を閉じるだけで、脳に入ってくる情報の80%がカットされるため、それだけで脳の働きが回復します。
さらに、脳にダイレクトに作用する「香り」を利用するとストレスを抱えた脳を休ませることができます。
香りを嗅いだ瞬間にその香りと関係性のある記憶が、鮮明に思い出された経験はありませんか。これが、嗅覚が脳への刺激として、視覚や聴覚と比べて優位な理由なのです。心地よい香りを嗅ぐことで、脳はリラックスモードになります。
一般的には、森林の香りがリラックス効果が高いといわれております。その他にも、ラベンダーやカモミール、サンダルウッドなどもリラックス効果が高いようです。気持ちをスッキリさせたいときには、ペパーミントやジャスミン、ローズマリー、グレープフルーツの香りも効果的でしょう。
具体的には、アロマオイルをお風呂に数滴垂らしたり、就寝時に枕元にアロマオイルを数滴垂らしたタオルを置いて眠ることでリラックス効果を高めることができるようです。自分がリラックスできる匂いを探してみるのも良いかもしれません。
最後に、情報はいかに多く集めるかより、いかに捨てるかの方が大切なのです。必要のない情報にまで振り回されてしまうのではなく、取捨選択がとても大切です。
例えば、断捨離をして気持ちが晴れたようにスッキリした経験はないでしょうか。物が多く散らかっている部屋は、心や頭の中の状態を表すといわれます。情報過多になってしまう状態も、頭の中では同じようなことが行われているのです。身の回りの情報が私たちを混乱させているわけですから、「情報の取捨選択」が解決策の一つであり、良さそうな情報でも、自分に必要ないものなら「あえて捨てる」という行動が必要なのです。
携帯電話やインターネットが普及していなかった時代でも、私たちは何不自由なく生活してきました。昔はこれほど「余計な情報」が蔓延してはいなかったので、社会の流れも比較的ゆっくりしていました。社会に振り回される事はなく、適応するにもゆっくりと適応ができたのです。
そして、必要以上の情報は、私たちをストレスフルな状態にさせる可能性があります。すなわち、私たちが個人として生きていくには、限られた情報で十分なのだということがいえるのです。
情報収集と情報選別をバランスよく行うように心がけてみることで、ストレスから解放され、健康的でゆとりのある日常を過ごせるかもしれません。様々な物や人で溢れる現代社会では、時には、情報をシャットダウンして、リラックスできる場所や時間を探してみるのも良いのではないでしょうか。
著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長
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