円滑な人間関係を保つ方法
2019.09.23
- メンタルヘルス
「アサーション」でよりよい人間関係を
アサーションとは、自分の気持ちと考えを大切にするのと同時に、相手の気持ちと考えも尊重する自己表現方法です。「人と違う自分の意見や気持ちがなかなか言えない」、「自分より偉いと思う人には何もいう事ができない」、「自分が正しいと思うことは何を言われても変えない」等のトラブルをアサーションを身につけることで解消します。相手との信頼関係の構築、円滑なコミュニケーション、対人ストレスの減少などの効果があります。また、自分自身の印象を向上し、心地よい人間関係を築けると言われております。
私もOK、あなたもOK、それがアサーション
アサーションでは、自己表現のタイプを3つに分けて考えます。
△攻撃的(私はOK、あなたはOKでない)…自己中心的に物事を考え、相手のことは考えず、自身の考えを主張するやり方です。自分が正しいという前提が強くあり、自分の意見や気持ちを表現するのですが、相手への配慮を欠いている状態です。
△非主張的(私はOKでない、あなたはOK)…自分の意見や感情を押し殺し、相手に合わせるようなやり方です。自分に対して自信が持てず、自分を後回しにして周りの人のことを考えようとする傾向があります。この状態が続くと、自分を十分に表現できず、心の中に不満がたまっていってしまいます。
◎アサーティブ(私もOK、あなたもOK)…自分の気持ちや考えを相手に伝えるが、相手のことも配慮し、自分も相手も大切にしたやり方です。お互いの意見に賛同できず意見が異なった時に、お互いが歩み寄り折り合いをつけることがアサーティブなあり方であると言えます。自分の気持ちや意見を率直に表現する一方で、相手の気持ちや意見にも素直に耳を傾ける態度で粘り強く共有点を見つける努力をします。自分も相手も尊重するので、お互い爽やかな気持ちを味わいます。
特定の相手や状況に対して、非主張的になったり攻撃的になったりしてはいませんか。習慣化された行動パターンは不適切な反応を繰り返します。そのような行動パターンを変えていけば、あなたの自己表現はより適切なものになるのかもしれません。
「アサーティブ」になる為のポイント
自分の気持ちをしっかりと把握することが重要です。自分の気持ちや言いたいことが整理できていないと、自己表現はうまくできません。また、周囲を過度に気にし過ぎると非主張的になってしまいます。すなわち、自分の言うことが他者にどのように受け取られるかを気にし過ぎることによって、自分の気持ちがおろそかになり、相手次第でものごとが決まっていくことにも繋がる為、自分が望まない関係を招くこともあります。
対人スキルはいつでも習得することができます。しかし、皆さんの自己表現の不適切さに気づいていても大人になるとなかなか指摘してくれないものです。まずは、適切な「アサーション」ができている人の自己表現を真似ることから始めてみましょう。
さらに、「私メッセージ」で自分の気持ちや考えを伝えてみてください。私メッセージとは、自分の伝えたいことの前に「私は」と主語をつけて伝えることをいいます。例えば、「曖昧な言い方は困ります」というフレーズがあったとします。それを私メッセージにすると、「私は、あなたにもう少し分かりやすい説明をしてほしいです」と変換できます。このように私メッセージで伝えることで、自分の気持ちが明確になります。すなわち、相手に気分を害されたと思っていたことが、実はそのような気持ちになっているのは自分だと気づくことで、自身の気持ちを伝えやすくなるのです。
皆さまも是非、私メッセージを試してみてはいかがでしょうか。
些細な事でも、それが「アサーション」
例えば、入社した時や新しい部署に移動になった際に、誰も仕事を教えてくれなかったら、皆さんはどのような行動を取りますか。そこで、開き直って反抗的な態度を取ったり、悲観的になってしまってはいけません。アサーティブな対応を考えてみましょう。まずは、先輩たちの仕事ぶりを見るのが自分の仕事だと考え、手の空いた時間には、職場の様子をよく観察します。忙しそうな先輩には「何か手伝えそうなことはありませんか」と声をかけてみましょう。仕事のやり方を教えてもらう機会を得ることができるかもしれません。
最後に、お互いにはっきりと表現することが「アサーション」のように思うかもしれませんが、それだけがアサーションではないことを覚えておいてください。ちょっとした日常の言葉がけや挨拶もアサーションです。これらは、人間関係をつなぎ安定させる上で欠かせない大切なコミュニケーションです。相手への感謝の気持ちを忘れずに、思いやりのある発言、行動を意識してみてください。周りの環境の変化に少しずつ気づくことができるかもしれません。
著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長
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