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仕事場の環境改善に取り組むと良いことがいっぱい

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職場で過ごす時間は1日の1/3を占めますから、同じ仕事をしていてもその環境によって疲れやすさも変わってきます。職場の環境改善に取り組むことで、従業員の満足度の向上だけでなく、企業の収益にも良い影響が得られることが知られています。その取り組みとしては、作業環境の見直しやITツールの導入、人間関係の改善、労働条件の見直し、福利厚生の充実など、さまざまなことが考えられます。職場の環境が改善されると、労働者のストレスが軽減され心身の不調が予防されるという効果もあるようです。
メンタルヘルスコラム:仕事場の環境改善に取り組むと良いことがいっぱい

職場環境改善とは

職場環境に関する法律は昭和47年に労働安全衛生法という法律で定められました。
この法律の第3条には、「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」とあります。この法律は、職場での労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の促進と形成を目的としたものになっています。

ストレスチェック制度の目的はメンタル不調の未然防止であり、その結果を集団分析したものを活用して職場環境改善を行うことは、努力義務となっています。
厚生労働省の第13次労働災害防止計画(2018年度~2022年度)では、「ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上にする」ことが目標です。
ストレスチェックを受けた労働者を追跡した研究では、職場環境改善の有用性が示されています。職場環境改善を経験した労働者のうち約6割が自分たちのストレスを減らすのに「有用だった」と回答しました。
また、職場環境改善のメリット(費用便益)を検討した研究では、職場環境改善の実施にかかる費用7,660(円/人)に対して、生産性が向上して得られる利益が15,200(円/人)と試算され、費用便益が約2倍と見積もられています。

米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、職場環境等の改善を通じたストレス対策のポイントとして、
このように提示しています。

・過大あるいは過小な仕事量を避け、仕事量に合わせた作業ペースの調整ができること
・労働者の社会生活に合わせて勤務形態の配慮がなされていること
・仕事の役割や責任が明確であること
・仕事の将来や昇進・昇級の機会が明確であること
・職場でよい人間関係が保たれていること
・仕事の意義が明確にされ、やる気を刺激し、労働者の技術を活用するようにデザインされること
・職場での意志決定への参加の機会があること

厚生労働省から『職場環境改善のヒント集』が提示されています。実際に効果的だった職場環境改善のアイデアを紹介していますので、ぜひご確認ください。

職場環境改善のメリット

職場環境改善によって、企業側が得られるメリットについて詳しくみていきましょう。

モチベーション向上

従業員が働きやすくなれば、モチベーションが上がります。仕事に対するモチベーションが上がると、スキルアップやサービスの品質向上に意欲的になるため、効率的な企業成長にも繋がります。

ストレス軽減

職場環境改善に成功すると、従業員が快適に働けるようになります。
従業員が大きなストレスを抱えると、健康上の問題が生じたり周りの従業員が不安に感じたりします。ストレスチェック制度の義務化も相まって、メンタルヘルス対策に力を入れる企業が増加傾向にあります。

業務効率の向上

適切な照明や座り心地がよいチェア、便利なITツール、十分なスペックのPCなどは、従業員の業務効率を高めます。従業員が気持ちに余裕をもって業務に取りくめることで、パフォーマンスを発揮しやすくなります。

顧客満足度の向上

職場環境改善によって得られるメリットによって、企業が提供する商品やサービスの質も上がり、結果として顧客満足度が向上します。顧客満足度が上がったことが従業員に伝われば、さらにモチベーションが上がることでしょう。

メンタルヘルスコラム:職場環境改善導入事例

職場環境改善導入事例

職場環境改善の方法について詳しくみていきます。

社員の声を知る
職場環境に対する意見を聴取するために、アンケート調査を実施します。労働条件、空調設備、ITツール、PCのスペックなどの項目を調査します。「その他」の項目を設けることもポイントです。

福利厚生の充実化
家族手当や育児手当、スポーツクラブの割安での利用、人間ドックの割引など、企業独自の福利厚生を取り入れている企業もあります。オフィス内で提供できるものには、食事や軽食のサービス、オフィスコーヒー、オフィスマッサージなどもあります。

ITツールの利用
ITツールを利用すると業務が効率化できます。名刺管理や勤怠管理、申請承認作業の簡素化など業務快適化ができると時間を割いていた事務作業を軽減することができるかもしれません。

健康に過ごすための職場環境を構築する
従業員の心身の健康を維持するために、リフレッシュルームや昼寝制度をとりいれている会社もあります。業務と休息にメリハリをつけて疲労を回復することで業務効率が向上します。AEDの設置は万が一の事態に備えることができます。

残業を減らす
会議やメールの作成方法など業務やツールについて「本当に必要なのか」を考え、定期的に見直すと良いでしょう。本当に必要なものでも、会議なら参加人数や時間を見直す、結論を出すことを必須とするなどの視点で考えてみると改善できることがあるかもしれません。

職場環境改善に取り組むためには、まず、従業員が職場環境に対して感じている不満や問題点を調査する必要があります。その中で、多くの従業員が不満を感じている項目の改善には優先的に取り組むと良いでしょう。
一度やれば良いというものではなく、職場環境改善の効果が現れているかどうか、定期的に検証することも大切です。従業員の意見を聞くときには、匿名でアンケート調査することをお勧めします。
厚労省から出ている「快適職場指針」の中に、快適職場づくりに取り組むためには、以下の4つの観点が必要であることが書かれています。

① 継続的かつ計画的な取り組み
②個人差への配慮
③労働者の意見の反映
④潤いへの配慮

その中でも④潤いへの配慮は、「職場は、仕事の場として効率性や機能性が求められることは言うまでもないが、同時に、労働者が定の時間を過ごしてそこで働くものであることから、生活の場としての潤いを持たせ、緊張をほぐすよう配慮すること」と解説されています。「働いている人は、生身の人間なので、なんでもかんでも理屈どおりにはいかない」ということなのかもしれません。

平成医会では、ストレスチェック後にライフ&ワークリサーチという分析ツールを利用して、会社ごとに必要な職場環境改善のオリジナルプランを提供するサービスを実施しています。職場環境改善に興味がある企業様は、お気軽にお問合せください。


著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者


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