スマホ依存という言葉をご存知ですか
2023.09.28
- コラム
スマホ依存とは
依存とは、特定の物質の使用や行為が精神的、身体的になくてはならなくなり、自分ではコントロールできなくなる状態をいいます。常にスマートフォンを所持していて画面を確認し、何か操作していないと落ち着かなくなり、スマホの使用がやめられなくなる状態を「スマホ依存」もしくは「スマホ依存症」と呼んでいます。アルコール依存や薬物依存のようにスマホ依存という医学的な言葉があるわけでありません。スマホ依存は病気として認定されたものではありません。
厚生労働省研究班が2013年に行った調査では、成人の約421万人にスマートフォンやパソコンに没頭する「ネット依存」の傾向があると推計されています。これは2008年の同様の調査と比べて1.5倍に急増しています。また13~18歳では、約52万人いると推計され、思春期青年期の年代で特に依存傾向が高いということがわかっています。子供は自身をコントロールする術をまだよく知らず、未熟な部分があるため、子供がスマホに依存し、学力低下、生活リズムの乱れ、不登校、うつ病などに陥らないよう、保護者がしっかりと見守ることが重要です。スマホ依存は、使用時間だけではなく仕事や学校など、日常生活に支障が出るかという視点で考えることが大切です。
2019年には、WHOがゲームへの依存を「ゲーム障害」という名前で認定しました。これは、脳の中で理性をつかさどる前頭前野の働きが低下している状態と考えられています。アルコール依存やギャンブル障害でも同様のことが起きているとされており、重症の場合は、本人の意思だけで抜けるのは難しくなります。
スマートフォンも同様にゲームやSNSなど便利な機能がつき簡単に楽しみが得られ、長時間使用や自分の力ではやめられなくなってしまう状態に陥ることがあります。
スマホ依存による心身の症状
スマートフォンを使いすぎていると、体の不調や健康障害を引き起こしてしまうこともあります。
それらはスマートフォン症候群とも呼ばれます。代表的なものをみてみましょう。
肩こり
スマホを使用するために下を向いている時間が長くなると、首の後ろから肩にかけての筋肉がこわばって血流が悪くなります。これが肩こりの原因のひとつです。
スマホを前かがみの姿勢で使用することが習慣化すると、猫背や巻き肩になってしまう可能性があるので注意が必要です。
ストレートネック
首の頚椎という骨も本来はゆるやかなS字カーブを描いています。ストレートネックとはこの骨がまっすぐになってしまうことを指します。ストレートネックもスマホ依存が原因の一つと言われ、別名「スマホ首」とも呼ばれています。ストレートネックは、首の痛みや肩こり、頭痛などを引き起こしてしまうことも。
眼精疲労とスマホ老眼
目が疲れる、目が痛いといった症状から全身にまで疲れが及ぶこともある眼精疲労です。スマホの画面を長時間見続けていると目のピント調節機能が低下し、眼精疲労につながることがあります。
まだ20代、30代なのに「手元のものが見えにくい」「目がすぐにしょぼしょぼして疲れる」といった老眼のような症状を訴える人が増えています。この症状も、スマホ使用で目を酷使することでピント調整機能が低下することから起こる可能性があるといわれています。
ドライアイ
ドライアイは、目の表面を覆う涙の量の不足や涙の状態が不安定になることで起こります。ドライアイになると目が乾く、目がゴロゴロする、目が痛いといった症状が現れ、不快感をもたらします。スマホを使用している際に、瞬きの回数が減ってドライアイになる人もいるようです。
心理的な負担
スマホに依存してしまうことで、うつ病に似た症状を引き起こすこともあります。その理由の一つとして考えられるのが、スマートフォンによる継続的な脳への刺激です。スマホを使う時間が増えるほど明るい画面や情報によって脳は刺激を受け続けることになります。その結果、脳が疲弊し、睡眠障害、イライラ、不安感などが起こりやすくなることがあります。
スマホ依存にならないために
スマートフォン以外の楽しみをみつけるとよいかもしれません。「キャンプ」や「旅行」など外に目が向くものがよりよいでしょう。
また、スマートフォンの使い方に関するルールを決めることも有効だと考えます。例えば、寝る前2時間はスマートフォンを見ない、枕元にスマホを置かない、仕事中や勉強中、食事中はスマホを触らない、といったルールを作って実行してみましょう。
スマホ依存につながる習慣は“心がけ”だけではなかなか修正できません。とくに子供にスマホを与えるときは、保護者が子供と一緒にルールを決めて実行することが重要です。
依存状態にある人の脳は研究によると、自分や相手の感情の読み取りに関わる部分、注意力、記憶力などの認知機能に関わる部分などが萎縮するといわれています。
脳の発達途上にある思春期・青年期では、さらに影響が大きいと考えられています。その年代でスマホ依存に陥ると、膨大な時間が失われ、豊かな体験や学習する機会を失ってしまいます。
医療機関での治療は、外来診察の中で生活リズムを整える方法やご家族の関わり方についてのアドバイス、スマホ依存になる原因や影響についての心理教育などが行われます。デイケアにおいては生活リズムの調整、集団活動を通したコミュニケーションスキルを高めるトレーニングや自己理解を促します。入院治療においては、認知行動療法や心理教育等を行い、体調や生活リズムの乱れを整えるサポートをします。
現在ではスマホ依存やインターネット、ゲーム依存などの治療を行う医療機関も増えてきているようです。心配だと感じる場合は、医師に相談し適切な治療を受けるのも大切です。
皆さまもスマートフォンとの向き合い方を考えてみてはいかがでしょうか。
下記に挙げるような状況があれば、注意が必要です。
・何気なくネットサーフィンや動画視聴をしていたら、気付くと長時間たっている
・頻繁にメールやSNSをチェックしてしまう
・常にスマホが手元にないと落ち着かず不安になる
・食事中もスマホを見ていることがよくある
・お風呂やトイレにもスマホを持ち込んでしまう
・起床するとまずスマホをチェックする
・外出中にスマホの充電が切れると不安感に襲われる
「IAT : Internet Addiction Test(インターネット依存度テスト)」というテストもあるので、心配になった方はご自身でチェックしていただくと良いかもしれません。
著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者
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