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自己効力感を高める効果的な方法

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自己効力感(self -efficacy)とは、特定の状況において要求される行動をうまく実行できると考える個人の確信のことです。例えば、自己効力感の高い人は自分の与えられた仕事がうまくできなくても、できるまで努力し続ける傾向にあります。逆に自己効力感の低い人は、自分に与えられた仕事が最初うまくいかないと、すぐにあきらめてしまうことがあります。今回は、弊会のリワーク支援のプログラムにも活用している自己効力感について解説します。
メンタルヘルスコラム:自己効力感を高める効果的な方法

自己効力感の世界との比較

自己効力感とは自分が直面する問題に「自分なら大丈夫」という前向きな認識をすることをいいます。
「いま現在の自分から未来に対する可能性への前向きさ」ともいうことができます。
自己効力感の高さについて、内閣府が発表した「平成26年版子ども・若者白書(概要版)特集 今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの~」によると、自己肯定感を持っている若者は、アメリカ86.0%、イギリス83.1%、フランス82.7%と比べて、日本は45.8%と5割にも満たない低い水準となっています。日本の若者は諸外国と比べて,自己を肯定的に捉えている者の割合が低く,自分に誇りを持っている者の割合も低いということがいえます。さらに、年齢階級別にみると、特に10代後半から20代前半にかけて諸外国との差が大きくなっているようです。

自己効力感の源泉

自己効力感を高めるために重要な5つのポイントを解説します。

① 達成体験 

これまで、自分自身が何かを達成、成功した経験です。
日々の小さな成功体験の積み重ねが大きな自信につながるといわれ、日々の「やれたこと」を記録に残し、1か月くらいの記録を振り返る方法が効果的です。
アメリカの心理学者セリグマン博士(ペンシルバニア大学教授、前アメリカ心理学会会長)は、うつの改善に役立ち、驚くほど簡単なプログラムを提唱しています。
それは「three good things」といわれるものです。方法は、毎日就寝前に、その日にあった「よいこと」を3つ書き出し、これを一週間続けます。
実験は、約60人の実験参加者が、プログラム実施前後に、「うつ症候」テストと、「幸福感」テストを実施しました。結果、1週間の「three good things」で、うつ症候テストのうつスコアが、14(プレテスト)から10(ポストテスト)に激減し、それが6カ月後まで続きました。また、「幸福度スコア」も増加し、その後も日を追って確実に増え続けました。

② 想像的体験

自分の成功経験を想像することです。
これは、過去のうまくいかなかったコミュニケーションを、「うまくいく」「みんなに褒められている」など、リアリティが出てくるまで想像し続けることをいいます。例えば、言いたいことが発言できなかった会議の場で次の機会にどうすれば適切に発言ができるか考えるときや苦手な上司との面談などにも活用できます。

メンタルヘルスコラム:自己効力感の源泉:③ 代理体験

③ 代理体験

自分以外の他人が何かを達成、成功した様子を観察することし、他人の成功体験を真似ることです。
代理体験を活用したトレーニング方法に、自分からみてうまくいっている人を真似て、演じてみることがあげられます。
例えば、アルバイトやパートスタッフのマネジメントが分からない場合に、うまくマネジメントしている人の、声のかけ方、ほめ方、叱り方、表情など、職場でのコミュニケーションの仕方を真似てみると自己効力感の向上を助けます。

④ 言語的説得

自分に能力があることを、言語で他人から伝えてもらえることです。
難しいかもしれませんが、信頼できる上司や、好意的な友人、伴侶などに、自分の「可能性」や「感謝」を教えてもらうと良いでしょう。また、上司との評価面談で、自分をどのような点で評価してもらえているのか教えてもらうのも良いでしょう。

⑤ 生理的・情緒的な高揚

自分独自の様々な要因で気分が高揚し、できるという気持ちがたかぶることです。
トレーニング方法としては、好きな音楽を聴いて気持ちを盛りあげたり、「かつ丼を食べる」「赤を身に着ける」「うまくいくシャツ」などジンクスをかつぐなど、自分だけのオリジナル手法を考えることが自己効力感の向上を助けます。この方法が、一番やりやすいかもしれない。

自己効力感があがると、自分に「自信」がつき、コミュニケーションにおじけづかなくなります。結果として、他人に対しても寛容になり、円滑なコミュニケーションができるようになるため、人間関係のストレスが軽減されることもあります。

これまでご紹介した5つの方法の中で、あなたに適した方法で実践してみると効果が得られるかもしれません。
他人を変えることは容易ではありません。しかし、自分の態度や認知が変われば、相手との「関係性」も変わります。皆さまもこの機会に、自身の自己効力感について考えてみてはいかがでしょうか。


著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長


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