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内発的動機付けと外発的動機付け

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動機づけとは、行動を始める際に、目標に向かって維持・調整する過程をいいます。今回はその動機付けを、「内発的動機付け」と「外発的動機付け」に分けて考えてみます。

メンタルヘルスコラム:内発的動機付けと外発的動機付け

人が行動をするとき、そこには意志やそれに対する意欲が存在します。動機づけとは、行動を始める際に、目標に向かって維持・調整する過程をいいます。動機付けは、英語の「motivation」の日本語訳であり、モチベーションとカタカナ表記されることもあります。
動機づけの中にも、様々な分類がありますが、今回は、「内発的動機付け」と「外発的動機付け」に分けて解説します。

外から誘発される意欲

行為そのものではなく、外部からもたらされるものを目標として、その目標を実現するために行為を行おうとすることを外発的動機付けといいます。具体的には、評価や賞罰、報酬、あるいは称賛などの自分以外の要素によって起こるやる気のことです。例えば、「この仕事をやれば高収入を得られる」や「この仕事をやらないと上司に叱責される」などが、外発的動機付けにあたります。
私たちが行動しその行動を持続する過程においては、他人からの賞賛や罰を恐れる気持ちなど周囲からの刺激が大きな影響を及ぼします。

内から起こる意欲

時間を忘れて夢中になった、皆さんはそのような経験をされたことはないでしょうか。
このように、自分の中から湧き出てくる興味や関心、楽しみなどがもたらされる動機づけを内発的動機付けといいます。これは、行動要因が内面に湧き起こった興味や好奇心、自己実現感などによるものです。それは、評価や報酬を得るためではなく、行為そのものが目的となるのです。
例えば、仕事を勉強になるので楽しく行えることやスキルが向上するので頑張れるというのは、内発的動機付けが刺激されている状態です。これは、仕事そのものに面白さを見いだしていることで、やる気が自分の内から湧いてくる状態になります。

目標設定と持続的な行動

内発的動機付けと外発的動機付けの主な違いは、目標設定のプロセスと行動の持続しやすさにあります。
自分で目標を設定し、達成するために行動を持続させるのが内発的動機付けです。
それとは反対に、外部からの要因で動機づけと同時に目標も設定され、行動するのが外発的動機付けです。
内発的動機付けによる行動は、本人が自分で決めた目標であり、モチベーションが維持されやすく、状況の変化や高い壁にぶつかった際に、諦めずに解決方法を模索して目標に向かいやすいという特徴があります。そのため、創造性や柔軟性が求められる仕事に優位になる傾向があります。
外発的動機付けを与えることは、やる気のない人を行動へ促すことはできるため、短期間で行動を変容させたい場合には、外発的動機付けが役立ちます。
しかし、報酬や罰則などを与えることで行動を求めるため、結果として求めた水準以上の結果は得にくくなります。さらに、外発的動機付けでは、与えられた本人が報酬や罰則に慣れてくると効果が薄くなるため、行動を持続的に引き出すには動機づけを与え続けなければならず、より強い動機づけを与える必要が出てきます。

内発的動機付けと外発的動機付けは組み合わせ次第で、効果的に動機づけが強めることができますが、外発的動機付けの与え方によっては、内発的動機付けを低減させることがあるため注意が必要です。

メンタルヘルス:内発的動機付けと外発的動機付けの関係性

内発的動機付けと外発的動機付けの関係性

ロチェスター大学のエドワード・デシ教授は、1975年に「内発的動機付け」を提唱し、「外発的報酬は内発的な動機づけを低下させる」と発表しました。
その実験内容は、大学生のグループを2つに分け、ひとつのグループにはパズルが解けると1ドル支払うと約束し、もう一方のグループには何も約束しませんでした。
報酬を約束されていないグループには、特に変化がなく、自由時間も関係なく、パズルに興じていました。これは、パズルを解くこと自体が内発的動機づけとなっている状態であると考えられます。一方で、報酬をもらった学生のほとんどが、自由時間にパズルは解かずに、他のことをし始めるという結果になりました。
つまり、報酬という外発的動機付けが、内発的動機付けの状態を壊してしまったということがいえます。
このように、自ら好んで取り組んでいる行動に外部から報酬が与えられることにより、自発的なやる気が失われる現象をアンダーマイニング効果と呼んでいます。
尚、これは内発的動機付けが高まっている場合の話であり、もともとの内発的動機付けが低い場合には、外発的動機付けを促すことも意味があると考えれられています。

皆さんは、仕事を「やらされている」や「やらなくてはならないからやる」という状況になってはいませんか。そのような状態は、外発的動機付けの影響が強くでている可能性があります。それは、持続性がなく決められた目標に進んでいるという状態です。好きなものを仕事にしていないからということではなく、自分自身で内発的動機付けを探せるような働きかけをしていくことも重要なのではないでしょうか。


著者:塩入 裕亮
精神保健福祉士
医療法人社団 平成医会 「平成かぐらクリニック」 リワーク専任講師


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