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こころのケガの応急手当

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3月16日に福島・宮城で震度6強の地震がありました。 被災されました方々に心からお見舞い申し上げます。 今回は、災害・事故時の「こころのケガの応急手当の方法」であるPFA(サイコロジカル・ファーストエイド)の考え方を解説します。
メンタルヘルスコラム:こころのケガの応急手当

災害発生時のこころの動き

災害発生後早期(直後~4週間)に推奨されている心理的支援をPFA(サイコロジカル・ファーストエイド)といいます。PFAは、重大な危機的出来事に直面したばかりで苦しんでいる被災者に対する支援です。心理的支援方法だけではなく、援助者に必要とされる基本的態度についてもまとめられています。

災害や事故、犯罪などは、物質的・身体的な被害だけでなく、心にも大きな影響を残すことが知られています。
災害が発生した直後にまず必要なことは、安心感を取り戻すことです。安全が確保され、安心することができれば、 苦痛や不安は軽くなります。

災害発生後に必要になるものは次のようなものがあります。

・基本的ニーズ:避難場所、食糧、水
・負傷者の医療サービス、持病のある人への支援
・その出来事、家族など大切な人、および利用可能な公共サービスに関わるわかりやすく正確な情報
・家族など大切な人と連絡がつくこと
・その人の文化や宗教に関係する特有の支援を受ける機会
・重要な決断に際して、相談する、意思を表明すること

ある出来事に対する心理的な反応は、客観的な事実ではなく、危険に対する主観的評価にもとづいています。例えば、今回の地震も3・11(東日本大震災)よりは大きくないから大丈夫だと思う人、長時間の地震だったので不安に感じる人、様々な受け取り方があるかと思います。

そして、危機に対するストレス反応も人によってさまざまです。

(1)悲嘆反応
悲しみ、怒り、その人が死んだことに対する罪悪感や後悔、亡くなった人への思慕といった感情

(2)外傷性悲嘆反応
死にまつわる事柄に執着し続けるなど

(3)抑うつ
精神的な抑うつ、イライラ感、食欲減退、興味や喜びの喪失、疲労、エネルギー減退、自尊心の低下、罪悪感、絶望、自殺念慮

(4)身体反応
頭痛、めまい、胃の痛み、筋肉痛、動悸、胸の締めつけ感、過呼吸、食欲減退、お腹の不調

災害時、危機的な出来事が起こった後は、まわりも辛いのだからと気持ちを言えずにため込んでいる状況になりがちです。以前は、被災者に対して「心理的デブリーフィング」と呼ばれる外傷体験の報告とその時の感情の表出が有効とされていましたが、現在ではその有効性は確認されていません。
当事者から話を聞く際には、気持ちを決めつけたりむやみに励ましたりしないよう、相手を尊重して耳を傾け、必要な場合は専門家へ繋ぐことが大切です。

メンタルヘルスコラム:PFAの活動原則

PFAの活動原則

WHO版のPFAの基本的な活動原則は、「見る」、「聞く」、「つなぐ」です。

見る…
支援を必要としている人を安全な場所へ誘導すると共に、その人の状態を見極めましょう。

〈ポイント〉
・安全を確認する
・明らかに急を要する基本的ニーズがある人の確認
・深刻なストレスを示す人の確認

聞く…
支援を必要としている人の安全を確保し状態を見極めた後は、
その人へ近づき、語られる内容に耳を傾けましょう。

〈ポイント〉
・支援が必要と思われる人々に寄り添う
・必要なものや気がかりなことについてたずねる
・人々に耳を傾け、気持ちを落ち着かせる手助けをする

つなぐ…
何も自分の力だけで支援を完結させる必要はありませんし、かえって危険な場合すらあります。
聞き取ったニーズに沿ってその人が最適のサービスを得られるよう専門家へと託しましょう。

〈ポイント〉
・生きていく上での基本的なニーズが満たされ、サービスが受けられるよう手助けする
・自分で問題に対処できるよう手助けする
・情報を提供する
・人々を大切な人や社会的支援と結びつける

PFAを提供する人のケア

PFAを提供する支援者も被災者とは異なる形のストレスが生じています。
支援を行う中で、自身の健康問題は自覚しにくく、また自覚したとしても使命感によって休息や治療を後回しにしてしまう傾向があるといいます。支援者のストレス要因としては、「使命感と現実の制約とのあいだで生じる葛藤」「被災者から向けられる怒りなどの感情」「災害現場の目撃によるトラウマ反応」等があり、それによって生じる心理的反応としては、急性ストレス障害(ASD)や心理的外傷後ストレス障害(PTSD)、適応障害、恐怖症等があります。これらを防ぐためには、業務ローテーションと役割分担の明確化、援助者のストレスについての教育、心身のチェックと相談体制の整備、住民の心理的な反応についての教育、被災現場シミュレーションなどの対策が重要です。

従業員のメンタルヘルスにもこれに共通する考え方があります。労働時間が顕著に増え、身体を酷使しているとある日突然、緊張の糸が切れたかのようにメンタルに不調をきたすことがあります。日頃から自身の健康を客観的にみる癖をつけるとメンタル不調を未然に防ぐことができるかもしれません。また、社内で気軽に相談できるような仕組みを構築することも重要です。従業員のメンタルの不調にお気づきの際には、平成医会にご相談ください。カウンセリングやメール相談サービス、各種セミナーの実施、職場環境改善等、ご相談をうけたまわることができます。


著者:塩入 裕亮
精神保健福祉士
医療法人社団 平成医会 「平成かぐらクリニック」 リワーク専任講師


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