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精神保健福祉手帳について

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精神障害で、一定程度の状態にある方は精神保健福祉手帳の認定をうけることができます。事業者には障害者の法定雇用率が定められており、精神保健福祉手帳の取得により障害者雇用の対象になります。今回は精神保健福祉手帳の概要について解説します。

メンタルヘルスコラム:精神保健福祉手帳について

精神保健福祉手帳の概要

精神障害者保健福祉手帳とは精神疾患がある患者さんの障害者手帳のことです。
精神障害者の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方々には様々な支援策が講じられます。精神疾患の程度に応じて等級が決められており、その等級に応じて減免措置や支援が受けられることも特徴の一つです。

精神障害者保健福祉手帳を取得していると障害者雇用の対象になります。障害者枠は、障害者雇用促進法に基づき企業が障害者の社会復帰を促進するためのもので、従業員が100名を超える事業所では障害者の雇用が義務づけられています。事業者には障害者の法定雇用率が定められており、令和3年3月1日より民間企業で2.3%、都道府県の教育員会で2.5%、国・地方公共団体で2.6%とされています。

手帳の取得により精神障害者は一般雇用と障害者雇用の2つの働き方を選択できます。また、ハローワークが行っている障害者職場適応訓練のように、手帳を取得することで受けることのできる支援もあります。
企業側のメリットは、常時雇用している労働者数が100名を超える事業主で障害者雇用率を超えて障害者を雇用している場合は、その超えて雇用している障害者数に応じて1名につき月額2万7千円の障害者雇用調整金が支給されます。
障害者雇用は企業が障害を把握したうえで行う雇用のため、病状の理解を得られやすいことが雇用される側のメリットとなります。

どのような人が対象者となるのか

精神疾患により継続的に自立と社会参加が妨げられている場合に申請の対象となります。
継続的という解釈は、精神疾患と診断されて初診から6カ月以上経過し生活に支障が続いていると医師が判断した患者さんです。6か月以上の治療を行っても回復が不十分で生活に支障が残る場合を病気から障害と考えます。

具体的な精神疾患については以下の疾患が対象です。

・統合失調症
・気分障害(うつ病、双極性障害等)
・アルコールや薬物等に関する依存症
・てんかん
・高次脳機能障害
・発達障害(注意欠陥・多動性障害ADHD、自閉スペクトラム症ASD、限局性学習障害LD、等)
・そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)

メンタルヘルスコラム:精神保健福祉手帳の判定基準について

判定基準について

精神障害者保健福祉手帳の等級は1級から3級まであります。精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定は各都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターにおいて精神医療審査会にて審査が行われます。その内容は、医師の診断書をもとに、(1)精神疾患の存在の確認、(2)精神疾患(機能障害)の状態の確認、(3)能力障害(活動制限)の状態の確認、(4)精神障害の程度の総合判定という順を追って行われます。
このように総合的に判断されるのですが、おおよその目安としては以下のようになっています。

1級: 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級:精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級:精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

取得して受けられるサービス

精神障害者手帳のさまざまな制度は、全国一律のものと各市区町村で制定しているものとがあります。

<全国一律>
公共料金などの割引
市営、県営住宅への入居時の優遇
NHK受信料の減免
所得税の控除…1級:40万円/2級以下:27万円
住民税の控除…1級:30万円/2級以下:26万円
相続税の控除…1級:70歳になるまでの年数×12万円/2級以下:×6万円
贈与税の控除…1級:6,000万円まで非課税/2級以下:3,000万円まで非課税
自動車税・自動車取得税の軽減(1級のみ対象)
<市区町村による>
鉄道・バス・タクシーの運賃割引
上下水道料金の割引
水族館・博物館など、公共施設などの入場料の割引
その他、各市区町村によるもの
※詳細については、お住まいの市区町村障害福祉担当までお問い合わせください。
※これらのサービスは、障害者手帳を取得することで自動的に受けることができるものではありません。障害者手帳取得後、各窓口での手続きが必要になります。

精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年間になります。
2年ごとの更新が必要であり、精神障害者手帳を交付されても障害の状態が無くなったときには市区町村長を経由して都道府県知事に返還しなければなりません。

今回は精神障害者保健福祉手帳について解説いたしました。「障害者」という名前の入る手帳を持つことに抵抗感を感じる人もいらっしゃることと思います。障害者手帳の目的は自立と社会参加の促進です。ご自身の生活が精神疾患の症状の影響で制限を受けていて、自立や社会参加に支障があると感じたときには一度主治医へご相談されてみても良いかもしれません。


著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長


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