不平や不満の多い部下への対応方法
2021.04.12
- メンタルヘルス
承認欲求と自信のなさ
上司を困らせる部下のタイプにいつも不平や不満ばかりを言う部下がいます。なぜ、彼らは愚痴ばかりいうのでしょうか。
理由として考えられるのは、自分の扱われ方に不満があるという場合があります。それと同時に自分に自信がないからでもあるのです。さらには、会社や上司に愛されたい、認めてもらいたいという気持ちのあらわれでもあります。
不平や不満の多い部下への対応方法で身につけておきたいテクニックに「親バカ式リフレーミング」があります。リフレーミングとは精神科の家族療法で用いる言葉です。これはコップに半分だけジュースが入っているのを見て、「まだ半分もある」というポジティブな捉え方ができるように訓練していくというものです。このように同じことでも、状況や考え方によって捉え方を変えることができるという考え方になります。その状況や考え方を意識的に変化させていくのがポイントです。
キーワードは自己肯定感
リフレーミングは物事や出来事を、今とは違う「フレーム=枠組み」で捉え直し、ポジティブに捉える癖をつけるための認知行動療法です。部下に親バカな態度をとることで自信をつけてもらい、自分は素晴らしい人間だと思わせるのです。部下から不満がもれたと感じたら、子どもを溺愛している親が言いそうな言葉でその不満をリフレーミングしてあげます。この親バカ式リフレーミングを重ねることで、自己肯定感が上がっていくのです。
もし親が、自分の子どもの性格や性質を常に短所と捉え、幼い頃から指摘や注意、ダメ出しばかりをしていると子どもはどうなるでしょうか。自分に自信がなくなるばかりか、しだいに否定的な物の捉え方をするようになってしまいます。他者や自分の周りに起こった状況に対しても短所ばかりが目につくようになり、愚痴や不満が多くなるのです。結果として自分の周りで起きることすべてをネガティブに捉える性格になってしまうのです。
リフレーミングが出来ている親は、「○○は決断が遅いね」とは言わず、「〇〇は慎重だね」と伝えます。優柔不断という表現に見方を変えて、慎重とポジティブな捉え方をするのは親バカな親です。このような親に恵まれたら、子どもは自信がつき他者の長所に目がいき、物事をポジティブに捉えられるような子になるはずです。
このように、親バカな上司を持った部下はがんばって仕事をしようという気持ちになるはずです。リフレーミングは診察やカウンセリングなどで使われるテクニックですが、残念ながら自分ひとりだけでやってみるのはなかなか難しいものです。大人になると、誰しもすでにそれまでの人生で作り上げてきた「考え方の癖」があるからです。癖というだけに、長年かけて定着させたものであり、自分ひとりでひっくり返したり直したりするのは容易ではありません。そこで親バカ上司の出番です。部下の考え方の癖をひっくり返してリフレーミングすることで自信を持たせます。上司からのリフレーミングで、自己設定、セルフイメージが上がった部下は不平や不満が減ることでしょう。
リフレーミングは使うタイミングが重要
リフレーミングは実際にどのようなときに活用するとよいのでしょうか。いくつかご紹介します。
失敗をすれば皆落ち込んでしまいますが、最初から全てを完璧にこなせる人はいません。失敗は成功のためのプロセスですので、失敗をきちんと評価していくためにもリフレーミングの活用は有効といえます。
ポイントは時間枠のリフレーミングです。未来や過去の自分からみるとどういう状況かという客観的な視点で現在の失敗を捉えてみるとよいでしょう。
ネガティブな言葉にもポジティブな側面はあります。前述した通り、考え方を少し変えてみることでマイナスをプラスに転換させることができます。これはすぐに身につけることは難しいので日頃からネガティブな考えや言葉をポジティブに変換できる癖をつけておくとよいでしょう。
人間誰しも長所と短所があります。短所ばかり気になるどんなに苦手な人とでも、仕事上ではいい関係を築かなければなりません。そのようなときにリフレーミングを使うことで、相手の長所を知ることやその人と良好な関係でいることのメリットを考えるためにも役立ちます。
皆さまは部下や後輩にどのように接しているでしょうか。機会があれば、親バカ式リフレーミングを試してみてはいかがでしょうか。部下のモチベーションが低い状態で仕事をすることは、生産性の低下や離職にもつながっていく場合があります。結果として上司の自分に負担がかかることにもなりかねませんので、これを機に自身のマネジメント方法について考えてみるとよいかもしれません。
著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長
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