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公認心理師が担う役割とその領域

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平成29年に公認心理師法が施行され、心理職で初めての国家資格となる「公認心理師」が新設されました。公認心理師の活躍の場は、保健医療分野のみならず福祉や教育、司法など多岐にわたります。 今回は公認心理師の仕事内容や職域について解説します。
メンタルヘルスコラム:公認心理師が担う役割とその領域

公認心理師の仕事内容

公認心理師は心理的な問題を抱えた相談者に対して心理学に関する専門的知識及び技術をもって 心理状態を分析し、心理に関する相談や助言、援助、指導を通じて問題解決につなげます。また、心の健康に関する知識を広めるための教育活動や情報提供をおこなうことも大切な役割となっています。
公認心理師が担う仕事内容や役割をみていきましょう。

心理的アセスメント

相談者の自己理解をうながし支援するために、面接や心理検査、行動観察などによって相談者の心理特性や問題の状況、課題を明らかにします。相談者の意思を尊重して、相談者に対してどのように援助するのが望ましいかを考えます。現在抱えている問題点を明らかにすることで、適用する心理療法を選択します。

心理支援

心理療法を使い、問題を解決に導きます。公認心理師の中心的な専門業務でもあり、相談者が自分の心の状態を理解し、自尊感情を取り戻していけるよう支援します。
代表的な心理療法には、傾聴することに重きを置く「来談者中心療法」、自らの心のクセに気づき受け止め方や行動を変容させる「認知行動療法」、主に子どもを対象におこなう「遊戯療法」、絵画や音楽などの自己表現から治療に繋げる「芸術療法」などさまざまな心理療法をクライアントの状況によって使いわけます。
心理支援の目的は、心の健康を促進して問題を解消し、相談者が抱えている生きづらさを解消するための手助けをすることです。

コンサルテーション

相談者が抱える問題に対して、公認心理師が第三者として心理学的側面から提案や助言をおこない、問題の発生予防や早期対処に繋げることをコンサルテーションといいます。例えば精神疾患を持つ部下への接し方に悩む上司に対して、どのような対応が望ましいかアドバイスすることがこれにあたります。
コンサルテーションでは公認心理師と相談者の関係は平等であり、公認心理師から受けた助言をどのように活用するかは相談者の判断に委ねられることが特徴です。

心の健康教育・啓発

メンタルヘルス教育や患者教育などさまざまな心理教育の総称であり、相談者の心の健康の保持・増進を目的にしています。心の健康について理解してもらうために必要な情報提供や啓発を行います。例えばストレス対処法や感情のコントロール方法、他者とのコミュニケーション方法のとり方などの知識や技術を教えることで、心の病気を予防します。必要に応じて、適切な専門機関を紹介したり利用を促したりすることも重要です。
実施方法は、個別面接やグループ対象のワークショップ、多くの人の前でお話する講演会などがあります。

メンタルヘルスコラム:公認心理師が働く領域

公認心理師が働く領域

公認心理師が活動する場所は、公認心理師法において「保健医療、福祉、教育その他の分野」とされています。具体的には、以下の5分野がそれに該当します。

保健医療分野

主な就業先は、精神科や心療内科、小児科、保健所、精神保健福祉センターなどです。
精神科や心療内科以外の科でも心理支援が必要な場合は配属されます。
公認心理師は医師からの依頼を受けて心理的アセスメントや心理療法をおこなうほか、家族に対する心理支援もおこないます。
保健機関の場合は、保健所、保健センター、精神保健福祉センターなどの公的機関で「精神保健福祉相談員」の名前で公務員として働きます。アルコール依存症や薬物依存症の相談、ひきこもりの相談援助、乳幼児の発達検査など相談者の相談に応じるほか、担当地域の精神保健福祉に関する実態の把握や、心の病や精神疾患について正しい理解を広めるための普及啓発活動もおこないます。

福祉分野

発達障害や知的障害、精神障害、虐待、不登校、子育て全般といった障がい児に関する相談が多く、公認心理師の就業先でも児童相談所や児童福祉施設があります。
成人を対象としたものでは、障がい者の通所施設や入所施設、相談機関などで働きます。心理査定や心理支援をおこない、その結果を受けての関係機関との連携や、障がい者の家族の相談、援助をおこないます。
また、特別養護老人ホームや養護老人ホームといった高齢者施設や、DV被害を受けた女性を支援する機関などでも心理的支援を行います。

教育分野

主な就業先は、学校の相談室や教育員会、公立教育相談機関などで生徒の「学校生活の質」の維持向上のために援助します。保育カウンセラーは育児や発達についての相談に応じることが多く、スクールカウンセラーは不登校やいじめの問題、友人関係・親子関係・学習関係の悩み、発達障害・精神疾患の疑い、自傷行為などさまざまな問題に対応します。当事者である児童や保護者からだけでなく、保育者や教職員も含めて幅広く相談に応じ、外部の専門機関とも連携しながら問題を解決していきます。
また、自治体が運営する教育相談室や教育センターで働く心理職もおり、メールや電話での個別相談にも対応し、必要に応じて心理検査や発達検査もおこないます。

司法・犯罪分野

司法・法務・警察分野での主な役割は、事件を起こした人の心理査定を通して処遇の方針を示すことや、更生に向けた心理療法をおこなうことなどです。犯罪被害者や加害者の心のケアを行ったり、少年事件や家事事件に関わる仕事をしたりします。具体的には少年司法・刑事司法司制度のもとで、法手続きに沿った働きかけや個人の回復と社会の安全を目指して関わることが期待されます。そのほか、児童福祉制度との関わりもあります。主な就業先は、家庭裁判所や少年院、少年鑑別所、刑務所、保護観察所などです。警視庁や都道府県警察本部の心理職員、家庭裁判所の調査官、保護観察所の保護観察官、多くが公務員として採用されます。

産業・労働分野

産業・労働分野での役割は、働く人を対象にメンタルヘルス問題の予防や、環境づくりを行います。具体的には、メンタルヘルスを未然に予防する一次予防、早期発見・対応をする二次予防、また復職を支援する三次予防などが挙げられます。そのほか、組織に対するアプローチも期待されています。具体的には、仕事上の悩みの相談や、過労や精神疾患などによる休職者の職場復帰の支援、必要に応じた家族や上司へのコンサルテーション、従業員を対象としたストレスチェックの実施、職場全体の健康増進の啓発などを担当します。

弊会でも、公認心理師の資格をもつ職員が復職支援プログラム(リワーク)を担当しています。会社との連携を密にして、従業員様の意思を尊重しながら、弊会独自のプログラムで支援を行っています。そのため、厚生労働省が発表している研究結果に比べても著しく低い再休職率を実現しています。メンタル不調で休職中の従業員様や休職を繰り返している従業員様がいらっしゃる企業様はぜひお問い合わせください。


著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長


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