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労働生産性から考える効率的な働き方

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働き方改革の一環として、昨年4月から中小企業にも時間外労働の上限規制が導入されました。働き方改革は、働く人の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、より良い将来の展望を持てるようにすることが目的とされています。長時間労働による弊害はメンタルヘルスにも影響します。今回は長時間労働と仕事の労働生産性や時間の効率的な使い方を意識した働き方について解説します。

メンタルヘルスコラム:労働生産性から考える効率的な働き方

日本と世界の長時間労働者の傾向

日本の人口は減少傾向をたどり、労働力不足が社会問題として顕在化しています。企業ではワークライフバランスの考え方も重要視されるようになりました。
厚生労働省が発行する「平成27年版厚生労働白書 」でも長時間労働と少子化の問題が指摘されています。その中で、国際労働機関(ILO)による、週49時間以上の長時間労働者の割合を表したデータ(2012年)が紹介されました。日本は22.7%で、スウェーデン7.6%、ドイツ11.2%、フランス11.6%、イギリス12.0%、アメリカ16.4%と、日本の長時間労働者の水準が高くなっています。
さらに男性のみのデータでは、日本は31.6%、スウェーデン10.7%、フランス16.1%、ドイツ16.4%、イギリス17.3%、アメリカ21.8%と長時間労働の傾向がより顕著になっています。
出生率が回復したフランスなど欧米諸国での施策をみると、仕事と家庭の両立支援をはかる政策や保育サービスなどの充実が少子化対策では重要なようです。

時間外労働と労働生産性の関係

人間はAIやロボットではありませんので疲労が蓄積すると集中力は落ち労働生産性がさがります。
経済産業省が発行している「企業の健康経営ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~」では、プレゼンティーイズムと健康関連指標との関係をとりあげています。プレゼンティーイズムとは、出社しているも業務に集中できない状態のことで、例えば風邪などの体調不良時がそれにあたります。そのような身体的な不調よりも、睡眠休養および心理的指標(主観的健康観、生活満足度、仕事満足度、ストレス)が労働生産性の低下に大きく影響しているという結果があきらかになりました。
時間外労働が増え睡眠時間が減ったり、仕事や生活への満足度が落ちることでストレスが増加すると、集中力にも大きく影響し労働生産性がさがってしまうのです。また、疲労が蓄積された状態で働きつづけると身体だけではなくメンタルヘルスにも支障をきたすことがあります。
メンタルヘルスコラム:長時間労働を減らすための工夫

長時間労働を減らすための工夫

長時間労働を減らす方策をたてるには、まず原因の分析が必要です。
長時間労働になっている原因が、従業員一人あたりの業務量の問題なのか、業務量は適切だが従業員が仕事に集中できていない個人要因もしくは職場環境があるのかという視点で考えます。そして、時間外労働が多くなっている従業員においては、どの業務にどれだけの時間がかかっているかを洗いだすことが重要です。そのなかで簡素化できるものはないのか、もしくは仕事のやり方に問題はないかを根気よく見直します。時間外労働が当たり前になっている会社や従業員は変化をおそれ着手できないことがあります。しかし、その先にある心身の健康やワークライフバランスの充実は会社の成長にとって欠かせないものとなります。
ここでいくつか長時間労働を減らすための工夫をご紹介します。

〇細かい無駄を排除
会社や部門の業務効率化と大きく考えすぎず、まずは自分の周りから小さなことから改革するのもよいかもしれません。例えば、細かい作業の集約化です。集中を妨げがちなのがメールやチャットなどの細かい仕事です。緊急の場合以外は都度対応するのではなく、決まった時間にまとめて対応することで、集中したい仕事を効率よく行うことができます。
また、業務連絡や問い合わせについての回答など定型文で済むようなものはテンプレートを作成してストックしておくことで時間の短縮にもつながります。
〇業務時間の最適化
仕事内容について優先順位をチームや部署単位で持ちより、すり合わせると良いでしょう。同じ業務であっても人により優先度やそこに充てる時間が違っていたりします。その際は、やり方について話し合うとより効率的な方法を発見できるかもしれません。また重要度は低いものに時間をかけすぎているものがあればそれも見直してみるとよいでしょう。

仕事の効率化に限らず業務改革の取り組みについては、成し遂げるための強い意志と根気が必要です。
時間外労働をしてはいけないということではなく、それが長時間になりすぎると万全の状態に比べて顕著に生産性が落ちるということを知っておいてください。残業時間ありきの労働になってしまうと、終業時間の概念がなくなります。これを機会に皆さんも自身の働き方や時間の使い方について考えてみてはいかがでしょうか。仕事もプライベートも大切にすることで、仕事に対する余裕もでき周り対してもよい影響を与えることでしょう。


著者:塩入 裕亮
精神保健福祉士
医療法人社団 平成医会 「平成かぐらクリニック」 リワーク専任講師


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