働く人と組織をサポートする産業カウンセラー
2023.05.29
- コラム
産業カウンセラーとは
産業カウンセラーとは、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する資格の名称です。1992年から資格の認定が開始され、当初は国が認定する公的資格であったため、現在においてもカウンセラーの資格の中では知名度が高く、信頼されている資格の一つといえます。
心理学には広く分野が存在しますが、産業カウンセラーはその名の通り、産業分野で活躍するカウンセラーです。働く人とその家族を対象とし、そこには従業員だけでなく経営者も含まれます。また、現在働いている人に限らず、働くことを求めている人も、進路指導や職業選択などの援助を行う対象となります。
産業カウンセラーが対象とする事項
産業カウンセリングは、職場のメンタルヘルスに関する問題、キャリア、人間関係の改善、いじめやハラスメントに関する諸問題、働く人にとって阻害要因となる組織上の問題なども対象となり、その内容は広範囲にわたります。
そのため、カウンセリングのスキルに加え、労働基準法や労働安全衛生法などの各種労働法、雇用情勢・労災認定基準の変化、メンタルヘルスに関する調査研究や裁判の動向などに関する知識も、広く有することが必要とされます。
産業カウンセラーの資格と活用の実際
産業カウンセラーの資格は、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が主催する講座を修了するか、大学または大学院で所定の単位を取得することで試験の受験資格が得られます。
講座は年に数回開講されており、試験も毎年開催されているため、働きながら学ぶ人にも挑戦しやすい資格といえます。
資格取得後、実際にカウンセラーとして働く人は少数で、多くは人事労務担当者や、社内の産業保健・衛生管理に携わるスタッフ、部下を持つ管理職などがスキルアップのために学び、業務に活かして働くといったケースが多いようです。
産業カウンセラーの活動内容
産業カウンセラーは、企業や組織で働く人に対して以下の3つの領域で援助を行います。
(1)メンタルヘルス対策への援助
厚労省が策定した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に則り、「事業場内の心の健康づくり専門スタッフ」としての業務を行います。メンタルヘルス不調に関する、一次予防・二次予防・三次予防のそれぞれの段階で、相談業務に留まらず、職場復帰や管理監督者への支援、教育・研修などにも関わっていきます。
一次予防では、各種研修などを通して従業員自身のセルフケアを推進するとともに、カウンセリングや研修、安全衛生委員会での情報提供や、相談体制の整備などを通して、職場環境の改善を提案します。
二次予防では、管理職への助言や研修の実施、産業医・産業保健スタッフや上司との連携、外部医療機関への紹介などがあります。
三次予防では、本人のケアに加え、各種の調整を行います。職場復帰を可能とする主治医の診断書が出た場合には、産業医や職場との調整、復職後の本人と職場へのフォローなどを行います。
(2)キャリア開発への援助
働く中で、自分のキャリアをどのように築いていくか、悩みにぶつかることも少なくありません。産業カウンセラーは、キャリア形成や職業能力開発についても、その人が自身の価値観・経験・適性などを理解し、その人らしく力を発揮できるよう、カウンセリングを行います。また、個人の相談だけでなく、会社や組織に対してより働きやすい場となるよう提案・助言などを行います。
一見キャリア相談のように見える事例が、根底に人間関係やメンタルヘルスの問題があるケースも多くあります。そうした問題にも気付き、早期に対応できることが、産業カウンセラーがキャリア開発への援助を行う、強みでもあるといえます。
(3)職場における人間関係開発への援助
メンタルヘルスの維持増進やキャリア開発において、阻害要因となるものの多くが人間関係です。近年、職場のいじめやセクハラ・パワハラなどの各種ハラスメントに関する相談が増え、それに対して企業側の責任を課される各種法律の整備も進められています。
ハラスメントや職場内での不適切なコミュニケーションは、メンタルヘルス不調の大きな原因ともなり、当事者間だけでなく、職場全体の士気の低下や生産性の悪化などにも繋がります。
人間関係の開発、適切なコミュニケーションの取り方への援助は産業カウンセラーの重要な活動領域となっています。
弊会では、産業カウンセラーの資格を有した専任担当者が多数在籍しており、契約企業様の専任コンサルタントとして、様々な角度から企業の産業精神保健活動のサポートをしています。
セルフケア・ラインケア・ハラスメント等のセミナーの実施や、衛生委員会の開催にあたってのサポート、従業員様のカウンセリングを行うことも可能です。
お困りの課題がありましたらお気軽に平成医会までお問合せください。
専任のカウンセラーが丁寧に貴社のお話を伺い、最適なご提案をさせていただきます。
著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者
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