高血圧を予防して健康生活
2022.12.26
- コラム
血圧の正しい測り方
病院やクリニックで測る血圧を「診察室血圧」といい、自宅で測る血圧を「家庭血圧」と呼びます。家庭血圧は、高血圧の診断に大きな役割を果たします。多くの疫学研究では、家庭血圧の方が長期的な予後を反映しやすいといわれています。
高血圧の基準は、家庭血圧で135/85mmHg以上、診察血圧では140/90mmHg以上と定義されています。一方で、正常血圧の定義は家庭血圧で115/75mmHg以下、診察血圧では120/80mmHg以下とされています。
このように差がある理由は、自宅では、リラックス状態で測定できることから5mmHg程度低い数値となるためです。
血圧は1日の中で変動し、測定時の状態でも左右されます。日本高血圧学会は、起床時と寝る前の毎日決まった時間帯に血圧を測定することを推奨しています。測定時は数回深呼吸し、リラックスした状態で行うことがポイントです。
高血圧になる要因
高血圧の原因は、過剰な塩分摂取と動脈硬化であると考えられています。
過剰な塩分摂取が血圧を上げる理由としては、体内の血液量が増加するためです。また、動脈硬化によって血管が狭くなってしまうため、血管にかかる圧力が高くなり、高血圧となるのです。
その他にも、高血圧になる原因はあります。
生活習慣
生活習慣の乱れは、高血圧の原因の一つです。
血圧は内臓の機能を調整する自律神経によりコントロールされているので、睡眠の質が低下すると体内時計は乱れ、自律神経のバランスが崩れる原因となるので注意が必要です。
喫煙
喫煙にも血圧を上げる作用があります。たばこを1本吸うと、血圧が約10mmHg上がり、吸い終わってから約30分間は高い状態が継続します。また高血圧の方がたばこを吸うことで、動脈硬化や心筋梗塞を発症する可能性が高くなります。たばこは簡単にやめれるものではありません。禁煙外来などを利用することも禁煙への第一歩かもしれません。
病気
高血圧のほとんどは、生活習慣や遺伝が関与して発症する「本能性高血圧」です。一方で、病気によって引き起こされる高血圧を「二次性高血圧」といいます。例えば、二次性高血圧の原因には、以下のような病気があります。原発性アルドステロン症、腎血管性高血圧、甲状腺機能亢進症などです。二次性高血圧は、病気に対して適切な治療を受けることが大切です。
ストレス
人はストレスを受けると自律神経の中の交感神経が刺激されます。交感神経には、血管を収縮させて血圧を上げる作用があるので、ストレスは高血圧を助長させます。日常的にストレスを感じている方は、休みの日にはうまくリフレッシュするとよいでしょう。ストレスを受けたときに、ストレス対処法を多く持っている人は、持っていない人に比べてメンタル疾患にかかる確率が低下するともいわれています。
肥満
肥満の人は、正常な体重の人と比べ約2~3倍多く高血圧にかかるといわれています。
理由は、内臓脂肪が多いことで血管を圧迫したり、過食による塩分の過剰摂取等が考えられます。
また、肥満の人が1kg減量すると、血圧は約2mmHg下がるといわれています。
高血圧を予防する方法
高血圧を予防したり、改善する方法はあるのでしょうか。項目別に確認してみましょう。
食生活
血圧を下げるためには、第一に食事の塩分を減らすことが必要です。一日に摂る塩分は6g未満に抑えることが推奨されています。日本人の多くは、遺伝的に塩分を体内に貯めやすいといわれているので、塩分を摂取することにより血圧が上昇しやすいといえます。血圧が高い人は、加工食品の摂取を減らしたり、減塩を意識した食事からはじめてみるとよいでしょう。血圧を下げる食べ物としては、野菜や果物が効果的です。
野菜や果物に含まれるカリウムは、体の中の余分な塩分を尿として体外に排出させる働きがあります。特にほうれん草や小松菜、バナナなどには多く含まれるので取り入れてみてはいかがでしょうか。
最新の研究によると、マグネシウムの不足も高血圧を引き起こす原因であることやお茶に含まれるカテキンとフラボノイドという成分も効果を発揮するようです。
運動習慣
高血圧には、有酸素運動が効果的です。ウォーキングや軽いジョギング、エクササイズ、水泳などがおすすめです。厚生労働省では、30分以上の有酸素運動をできるだけ毎日続けることを推奨しています。しかし、重度の高血圧の方や不整脈などの合併症を持っている場合は、運動前に医師へ相談しましょう。
深呼吸
2~3回の深呼吸で血圧が10mmHg低下するといわれています。このことからわかるのは、血圧を下げるには、できるだけ副交感神経を優位にすることが大切ということです。副交感神経を優位にするために、呼吸を意識して、定期的に深呼吸をしてみるとよいかもしれません。深呼吸を行うときは、3秒吸って、15秒吐くというようにやってみるとよいでしょう。
良質な睡眠
睡眠不足や睡眠の質が悪いと「自律神経」や「血圧をコントロールしているホルモン」のバランスが乱れて、血圧が上がります。そのため、良質な睡眠をとるよう心掛けることが大切です。「寝つきが良くない」「夜中に起きてしまう」という方は、以下の方法を取り入れてみましょう。
・朝起きてすぐに太陽の光を15分程浴びる(忙しいときは5分でもOK)
・寝る3時間前に夕食をすませる
・寝る前にブルーライトを見ない。
薬の服用
高血圧は、薬を服用することでコントロールできます。健康診断で指摘された際には、内科もしくは循環器科へ受診するとよいでしょう。日々ご自宅で血圧を測定している方は、数値を伝えることで診断に役立てることができます。血圧が心配な人は、スマホアプリで管理できる血圧手帳や、無料でダウンロードできる血圧記録表を利用してみるのもおすすめです。
高血圧は痛みや苦痛をともなわず、静かに進行していくものです。しかし、その状態が数年、数十年経つと、様々な危険な疾患のリスクとなるものです。脳卒中や心筋梗塞になると命を奪うこともあります。仮に、命が助かっても大きな後遺症が残ることも少なくありません。
治療は食事や運動が基本です。前述したように、特に日本人は遺伝的に塩分を蓄えやすい体質ですので、高血圧になりやすい民族といえます。日常生活の中で減塩を心がけていくことが、健康な生活を送る将来に繋がっていきます。皆さんもこれを機会にご自身の食生活を見直してみてはいかがでしょうか。
著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者
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