メンタルヘルスの医療法人社団 平成医会
トップ コラム 熱中症を防ぐための対策

熱中症を防ぐための対策

  • コラム
最近は、気温が上昇していることからテレビでもよく熱中症がとりあげられます。暑さの厳しい年には1000人以上が熱中症で亡くなっており、高温多湿な環境下では誰もが罹患する可能性があります。日本でも数十年前からは、考えられない暑さになっている地域もあります。今回は、熱中症の基本的な症状や応急処置について解説します。
メンタルヘルスコラム:熱中症を防ぐための対策

熱中症とは

熱中症は、体温調整の仕組みが空回りして「脱水」と「高体温」が体に起きた状態です。
高温、多湿な環境下において, 体内の水分・塩分のバランスが崩れたり, 体内の調整機能が破綻するなどして発症します。日射病のイメージが強く、直射日光が原因の全てと考えている人も多いと思いますが、実は「脱水」と「高体温」がポイントです。熱中症は、夏の強い日射しの下で作業をする時だけでなく、身体がまだ暑さに慣れていない梅雨明けや作業開始当初の時期、高温多湿な室内環境においても発生します。

2022年の6月は熱中症で救急搬送された人が約16,000人で、2021年までの5,000人前後の約3倍となりました。高い気温と湿度に加え、無風状態や強い直射日光が原因で起こる熱中症は、汗をかき過ぎて、水分や塩分などが不足すると、電解質(ナトリウム、カリウムなど)のバランスが崩れることで、体温調節がうまくできなくなり、体に熱がこもって発症します。

熱中症の代表的な症状には、めまいや立ちくらみ、足がつる、いくら拭いても汗がでてくる、頭痛、吐き気、強い倦怠感などがあります。また、立ち上がれない、息が荒くなる、手足がしびれる、動悸、筋肉痛、下痢など、熱中症による体調不良の症状は個人差があります。重症の人は呼びかけに応じなくなったり、けいれんを起こすこともあるので注意が必要です。

救急車を呼ぶまではいかないが、症状が強い、もしくは初期対応を行っても改善しないといったような理由で病院を受診する際には、内科、もしくは救急科の受診をお勧めします。重症の熱中症以外は安静にして水分補給を行うことで改善することが多いのですが、クリニックなどで点滴により水分補給を行うこともできることもあります。ただし、一度熱中症の症状があったら、少なくともその日のうちは作業や運動を中断し、安静に努めましょう。

熱中症の治療方法

熱中症の医学的な治療方法としては、状態によって変わります。

I度(軽度)
めまい、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)
治療:
ナトリウム含有液の経口摂取。
手軽に手に入るものとしては、市販のスポーツドリンクなど

II度(中等度)
頭痛、気分の不快(吐き気、嘔吐)、全身のだるさ
治療:
経口摂取あるいは輸液(点滴)による塩分と水分の補給
血液検査の異常を伴う場合は入院治療を行う

III度(重症)
意識障害、全身のけいれん、活動性の低下、高体温
治療:
原則として入院した上で、点滴治療
輸液による水分・塩分補正
冷却により体温をより早く40℃以下にする
重度の熱射病では集中治療(人工呼吸器や血液透析など)を行う

メンタルヘルスコラム:熱中症の治療法

応急処置のポイント

熱中症の応急処置の第一歩は、まずは運動や仕事を中断し、涼しい場所へ移動することです。直射日光を避け、風通しの良い場所もしくは冷房の効いた室内へ移動します。エアコンが入っていないところであっても、室内で風通しが良い部屋や日陰に入るだけでも気温は下がります。

1.日陰や涼しい部屋に移動させて、横にする

2.脚は少し高く上げ、衣服を緩め、靴下を脱がす

3.あおいで風を送ったり、氷のうやぬれタオルで体を冷却する

首筋やわきの下、脚の付け根の前面など、太い静脈が体表近くにあるところが効果的です。
扇風機は、冷たい風を送るだけでなく、汗を蒸発させる際に体の熱を空気中に放出してくれるため有効です。

4.水分や塩分を少しずつとらせる

自分で飲んでもらうことがポイントです。
おう吐の症状が出ていたり意識がない場合は、誤って水分が気道に入り肺炎を起こす危険性があるので、むりやり水分を飲ませることはやめましょう。水分補給では「経口補水液(OS-1など)」や「スポーツ飲料に食塩を少量加えたもの(1Lに対して食塩小さじ1/2程度)」を摂取させると尚よいでしょう。

最近では気温が30度を超える日が続いています。
日頃からしっかりと食事や睡眠をとって、体調管理をすることはもちろんですが、今自分のいる環境がどのような状態なのかという情報を得ることも重要です。環境省では、令和5年度の暑さ指数(WBGT)ならびに熱中症警戒アラートの情報提供を4月26日(水)から10月25日(水)まで環境省が実施しています。
また、熱中症警戒アラートのメール配信サービス、 暑さ指数のメール配信サービス、 電子情報提供サービスも同期間で利用ができるようなので、熱中症予防の取り組みにぜひご活用ください。


著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者


当コンテンツの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
コラムについてのご質問やご意見は、メールでお寄せください。お電話でのお問い合わせは恐れ入りますがご遠慮ください。