環境変化で起こりやすい自律神経失調症
2020.04.20
- メンタルヘルス
4月になり、新しい環境で過ごされている方もいらっしゃると思います。
ご自身の就職や転職はなくても、周囲の環境変化によって私たちは様々な影響を受けます。そのようなときに起こりやすいのが、自律神経失調症です。今回は、自律神経失調症について解説します。
自律神経失調症とは何か
自律神経失調症とは、自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れることによって起こる様々な症状の総称です。医学的に明確な定義はなく、正式な病名ではありません。
神経の仕組み
私たちの身体には、脳と脊髄にある「中枢神経」と、全身に張り巡らされている「末梢神経」が存在します。その末梢神経は、自分の意思によって身体を動かすことのできる「体性神経」と、自分の意思ではコントロールのできない「自律神経」に分けられます。
例えば、暑いと感じた時に、汗を出すのが自律神経であり、服を脱ぐ動作をするのが体性神経です。
自律神経は、意思に関係なく、環境変化や刺激に反応することで、身体の機能を調整する役割を担っています。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、この2つは正反対の変化を引き起こし、バランスをとることで、私たちの身体の均衡を保っているのです。
交感神経と副交感神経
では、相反するこの2つの神経はどのように働いているのでしょうか。
交感神経は、身体や脳を活発化するときに優位に働きます。一方、副交感神経は身体を休めるときに優位に働きます。
元々野生の環境下では、狩りをしたり、敵から身を守る際には交感神経が活発になり、休息をとる際に副交感神経が活発になっていました。現代社会においては、仕事や勉強・運動をする時には交感神経、睡眠やリラックス、排泄をする時には副交感神経が活発に働いています。
この2つの神経は24時間体制で、私たちの身体を調整しています。
自律神経失調症の原因と症状
自律神経のアンバランスによって起こるのが自律神経失調症ですが、自律神経失調症はストレスや生活習慣の乱れの影響が大きいと言われています。また、更年期におけるホルモンの乱れや先天的な要因も原因になるとされています。
全身的にみられる症状としては、「疲れがとれない」「不眠」「だるさ」「食欲低下」、局所にみられる症状では、「頭痛」「めまい」「冷え」「動悸」「息切れ」、さらに、精神的な症状として「涙もろさ」「苛立ち」「不安」などの症状が現れることもあります。
症状は個人差が大きく、同じ自律神経失調症であっても、まったく異なる症状がみられることもあります。
自律神経失調症かなと思ったら
まずは医療機関を受診し、診断をしてもらうことです。自律神経失調症に類似する症状を引き起こす他の疾患を否定することも重要です。頭痛であれば、脳の疾患がないことを確認したり、不眠や不安などの症状が精神的な病気ではないということを医師に判断してもらうことです。重大な病気ではないと知ることで、安心に繋がり、症状が軽減することもあります。
自律神経失調症という診断がされたら
自律神経失調症は治せる病気と言われています。
生活習慣の改善とストレスの軽減が最も大切といわれています。ストレスの原因を少なくすることはもちろんですが、どのようにしてストレスと向き合っていくか、どのようにストレスを発散するか、いわゆるコーピングの方法を考えていくことも大変重要です。
同じ状況が続いていても、考え方を変えることによって、脳がストレスと感じにくくすることもできます。認知行動療法は物事の考え方を変えるという非薬物療法ですが、薬物療法と並んで重要な治療法のひとつです。
上手くコントロールし、治療が進んでいくと、辛い症状も軽減するといわれています。
自律神経失調症の症状は身体からのサインと考えていただければと思います。生活習慣の乱れが長期化することによって、もっと重大な病気になってしまう可能性があります。ストレスによって精神的な負担が増していくと、うつ病のリスクも高まります。
重大な健康障害を引き起こさないためにも、自律神経失調症の症状を「身体が限界に近づいている」「休息を必要としている」サインと認識し、ポジティブに向き合っていただければと思います。
自律神経失調症にならないために
最近規則正しい生活をしていますか。
起きる時間や眠る時間、食事の時間がバラバラになっていませんか。
一日のうちで心が休まる時間はありますか。
心が休まる時間のない方は、少し無理をしても「心を休める時間」を作ると良いそうです。心を休めて、ゆったりと過ごす時間はストレスを軽減してくれる効果もあります。心身がリラックスした状態となるので「副交感神経」を働かせる時間となります。
生活習慣とストレスによって引き起こされる自律神経失調症は、私たちには身近なものだと思います。自律神経のバランスを整えていけるような生活習慣を日頃から心掛けることが大切です。
著者:金子 綾香
保健師
医療法人社団 平成医会
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