ドーパミンを増やすことで得られるメリット
2020.06.08
- メンタルヘルス
理由もなく何となくやる気がでないという日が皆さまはありませんか。
やる気は、脳の側坐核から分泌される「ドーパミン」という神経伝達物質によってもたらされていることが実証されています。神経伝達物質は、人間の脳内で情報の運搬役として働く化学物質のことです。ドーパミンはやる気や幸福感を得られるだけではなく、運動や学習、感情、意欲、ホルモンの調節など多くの生命活動に関与しています。その中でも特にドーパミンは、感情、記憶、思考、理性、意識、理解などの心の機能に関与しているといわれています。そのため、ドーパミンは人格形成において非常に重要なのです。例えばお酒を飲んで気分が良くなるのは、ドーパミンが放出されて脳内の報酬系という神経系が活性化するためです。しかし、注意しなければいけないのが、ドーパミンが過剰に分泌されると過食や飲酒、喫煙、ギャンブル等にのめり込んでしまうメカニズムに陥ってしまうことがあります。このドーパミンの過剰分泌を抑えるのがセロトニンというホルモンですが、今回はドーパミンの働きと増やすことで得られるメリットを解説いたします。
ドーパミンの効能
ドーパミンには、やる気を引き出す以外にも様々な効果や効能があるといわれています。
〇幸せな気持ちにさせて意欲に繋がる
人が楽しい、嬉しいと感じるのはドーパミンがうまく分泌されていることが影響しているといわれています。この気持ちが継続することで、意欲に繋がるのです。仕事を嫌々ながらやるよりも、楽しむことがモチベーションを向上させる秘訣かもしれません。
〇集中力がアップして効率が良くなる
ドーパミンを増やすと集中力がアップして効率がよくなるといわれています。
仕事で行き詰った時などに一旦休憩を取ったり、間食をすると効率が良くなるという経験はありませんか。仕事だけでなく勉強でも集中したい時にはドーパミンを増やすように心がけると良いでしょう。
〇ポジティブになる
ドーパミンを増やすとポジティブで意欲的になるといわれています。
脳内でドーパミンを増やすことでポジティブな考え方ができるようになります。ポジティブになることで活気が出て作業効率も上がりドーパミンが増えます。
ドーパミンを増やす方法
〇達成しやすい目標を掲げる
ドーパミンは何か実際に行動を起こしている時に活性化することが分かっているのですが、そのときにご褒美を想像するとドーパミンが増えるといわれています。例えば、「この仕事がひと段落したら休憩してお菓子を食べよう」や「試験に受かったら欲しかった洋服を買おう」など目標を立てると良いでしょう。その時のコツは、なるべく達成できそうな目標を立てることです。
また、誰かに認められたり、褒められたりすることでもドーパミンは分泌されます。毎朝、簡単な目標を立てて1日を振り返り、達成できた自分を褒めてあげることも効果的です。
〇好きな音楽を聴きながら作業を行なう
「好みの音楽はドーパミン生成を促進させる効果がある」というマギル大学研究チームの論文が「ネイチャー・ニューロサイエンス(電子版)」に 2009 年に掲載されました。 好きな音楽を聴いているときには、 脳内からドーパミンが分泌されることでランナーズ・ハイに似た感覚になるようです。また、音楽を聴くことで、自己効力感の向上にもつながるといわれています。
〇ドーパミン生成に必要な栄養素の摂取
ドーパミンの原料となるのは、たんぱく質です。その中に含まれる、必須アミノ酸のフェニルアラニンとアミノ酸のチロシンが合成させて作られています。タンパク質が豊富な食べ物は心身の疲れを軽減させるといわれています。フェニルアラニンやチロシンを多く含む食品には牛肉、豚肉、 大豆、アボカド、バナナ、アーモンド、卵、チョコレート、コーヒー、緑茶、牛乳、ヨーグルト、チーズなどがあります。また、最近では腸でもドーパミンの分泌が行われる という研究が発表されているので、食物繊維や乳酸菌の摂取も重要であると考えられます。
〇瞑想を行なう
瞑想にもドーパミンを放出する効果があるといわれそのような研究結果も発表されています。
瞑想を行うと 人間の脳は、 ガンマ波と呼ばれる脳波量が増加します。ガンマ波は脳の高次機能と深い関係があり、集中力や記憶力の向上や幸福感を高める作用があるといわれています。
瞑想については、以前のコラム(「マインドフルネスでストレス解消」)でも触れておりますので興味がある方はご覧ください。
〇新しいことに挑戦してみる
新しいことにチャレンジすることは脳を刺激し活性化させます。例えば、いつもと違う通勤経路で出勤するというだけでも脳は新鮮さや達成感を感じるといわれています。この感覚がドーパミンの分泌に繋がるのです。
また、創造的なことに没頭している時にもドーパミンは増加するといわれています。音楽や絵、DIY、ガーデニング、車の整備など興味が湧くものに挑戦してみるのも良いかもしれません。
ドーパミンを生成して物事に対してのやる気を出すために、まずは何かしらのアクションを起こしてみることが重要です。「やる気がでないので行動できません」と言われればそれまでなのですが、これまで述べたような日常の簡単な心がけで、仕事もプライベートもより充実したものになるかもしれません。是非皆さまもできることから意識的に始めてみてはいかがでしょうか。
著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長
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