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発達障害の種類とその特性

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発達障害について全2回シリーズでお伝えします。第1回目は、発達障害の種類と特性、発達障害についての疑問にお答えします。メディアでも取りあげられることもあり、一般的な知名度も高くなりつつあります。発達障害に対して、正しい知識をつけることで理解を深めていきましょう。

発達障害の種類

発達障害は、生まれつき脳の働き方に違いが生じる障害です。発達障害の傾向が強い人は、コミュニケーションを上手くとれず、良好な対人関係を構築できないことがあります。また、幼児のうちから行動面や情緒面で特徴があるため、「自分勝手な人」や「変わっている人」、「トラブルメーカー」と誤解され、敬遠されることも少なくありません。発達障害は、親のしつけや教育の問題ではなく、脳機能の障害によるものということを周囲の人も理解することが必要です。また、発達障害の傾向があっても、本人や家族、職場の人など周囲の人が特性に応じた工夫をすることで、持っている力を活かしやすくなったり、日常生活の困難を軽減させたりすることができます。

それでは、発達障害の種類について確認していきましょう。
「自閉症スペクトラム(ASD)」と「注意欠陥・多動障害」、そして「学習障害(LD)」の3つが主な発達障害の分類だとされています。それぞれの障害に特性がありますが、個人が複数の障害を重ねてもっていることもあります。
学習障害をはじめ発達障害は、たしかに子供のころに認められることが多いのですが、知的能力が正常範囲内で、周りの環境もおおらかであれば、小・中・高・大学を経て、本人も周囲も知らぬまま、就職をすることもあります。そして就職後、もしくは結婚などをしてから、極端な「働きづらさ」「生きづらさ」に直面し、専門家を訪ねてこられる人もいます。それがいわゆる「大人の発達障害」と呼ばれる状況です。

自閉症スペクトラム

自閉症スペクトラムの主な特徴は以下の通りです。

コミュニケーション、イマジネーションの障害
  ・他人への関心が乏しく、他人の感情や意図を理解・推測するのが苦手
  ・言葉を文字通りに受け取ってしまう(冗談や比喩が理解できない)
  ・自分の興味のあることを一方的に話し続けてしまう(会話が成り立ちにくい)
  ・その場や相手にそぐわない、いわゆる「空気が読めない」発言や行動をする
  ・非言語サイン(表情・目配せなど)を読み取ることが苦手 
  ・例えば…という仮説の話が苦手

習慣や予定へのこだわり
  ・毎日の日課や習慣などに強いこだわりがあり、変えられない
  ・日課や予定を急に変更しなくてはならなくなると、パニックになる

偏った興味・関心
  ・特定の物事や数字などに強いこだわりがあり、時に強みにもなるほど
   熱心に打ち込む

その他の特性
  ・聴覚・視覚・触覚など感覚の過敏性を伴うこともある
  ・生活常識の欠如
  ・手先の不器用さ

自閉症スペクトラム症の兆候としては、目を合わせない、指さしをしない、微笑みかえさない、あとおいがみられない、ほかの子どもに関心をしめさない、言葉の発達が遅い、こだわりが強いといった様子がみられます。保育所や幼稚園に入り、一人遊びが多く集団活動が苦手なことや、かんしゃくを起こすことが多いことで気づかれることもあります。思春期や青年期になると、微妙な対人スキルを求められることも増えますし、学習課題においても多様な能力を総合的に求められる機会が増えます。就職してから仕事が臨機応変にこなせないことや対人関係などに悩み、家庭生活や子育ての悩みを抱え、病院を訪れる人もいます。また、不安やうつなどの精神的不調を伴うこともあります。

注意欠陥多動性障害(AD/HD)

世界の偉人たちの多くが、ADHDだったという説もあります。アメリカでは、ADHDは障害だとはあまりみなされないという話も聞きます。注意欠陥・多動とありますが、大人になって判明するADHDの方は、多動ということはあまりなく、注意欠陥型の方が多いのが特徴です。多動が激しい人は、授業中座っていることも難しいですから、子供の頃に判明することが多いのです。注意欠陥型のADHDは、男女比はほぼ同じです。
注意欠陥多動性障害の主な特徴は以下の通りです。

不注意、忘れっぽさ
  ・予定を忘れることが多い、スケジュール管理が苦手
  ・必要な物を忘れることが多い、よく物を失くす
  ・遅刻が多い
  ・仕事でのケアレスミスが目立つ 
  ・締め切りを守ることができない
  ・段取りが苦手、できない
                                         
集中力のなさ
  ・人の話を長時間聞けない
  ・同じ作業や仕事を長時間続けられない
  ・仕事を最後まで仕上げられない

衝動性
  ・思ったことをすぐに口に出す、または行動に移す
  ・相手の話をさえぎって自分の意見や話をしてしまう

多動、多弁
  ・貧乏ゆすりなど、意味のない動きが多い
  ・しゃべりすぎる

子どもの多動性-衝動性は、落ち着きがなく離席してしまうことや座っていても手足をもじもじする、席を離れる、おとなしく遊ぶことが難しい、順番を待つのが難しい、他人の会話やゲームに割り込むなどのことが認められます。不注意の症状は、学校の勉強でミスが多い、話しかけられていても聞いていないように見える、整理整頓が苦手、宿題のように集中力が必要なことを避ける、気が散りやすい、などがあります。
大人になると、計画的に物事を進められなかったり、そわそわとして落ち着かなく他のことを考えてしまったり、感情のコントロールが難しいなど、症状の現れ方が偏しますが、一般に、落ち着きのなさなどの多動性-衝動性は軽減することが多いとされています。また、不安や気分の落ち込みや気分の波などの精神的な不調を伴うこともあります。

学習障害(LD)

学習障害も発達障害の1つですが、ほとんどが子供のころに判明します。全般的な知的発達には問題がなく「読む」「書く」「計算する」などの特定の分野の学習だけが極端に困難という傾向があります。全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の事柄のみが難しい状態を指し、それぞれ学業成績や日常生活に困難が生じます。

メンタルヘルスコラム:大人になってから発達障害が判明する理由

大人になってから発達障害の傾向を指摘される理由

どうして子供の頃は見逃されてきたものが大人になってからわかるのでしょうか。それは、社会においてコミュニケーション力が重要視されること、様々なタスクが同時に求められること、特性・傾向の不一致な状況に配属されることなどが原因で、発達障害の特性が表出するためです。
発達障害は子供の時にその傾向を指摘されるもの、という常識が長い間ありました。たしかに子供のころ(5歳~小学生時)などに指摘されることが多いのも事実です。しかし、幼少期から青年期まで、本人が置かれていた状況がおおらかであったり、学力や能力が高かったりすれば、周囲も本人も「障害」だと意識することなしに大人になることがあります。しかし、就職し仕事に就けば、多くの仕事において、発達障害の人が苦手だとされる「暗黙の了解」や「気遣い」、「表情作り」など、いわゆる「コミュニケーション力」が求められます。またITなどの普及により、昔よりも多種類の仕事をこなさなくてはならなくなり、苦手な仕事に取り組んだ時に判明したり、そのストレスからうつ病になって、精神科でその傾向を指摘されるということも現代の特徴です。

発達障害は薬で治るのか

発達障害を根本から「治す」薬はありませんが、注意欠陥多動性障害(AD/HD)で生活に強い支障がある場合には、症状の緩和を期待できるお薬もあります。そのため、生活に極端な支障が出ていると本人が感じている場合は、薬の処方も考慮に入れます。
社会生活では、適材適所への配置や、周囲の理解、そして本人の正しい理解が症状を抑える何よりの薬と言えるでしょう。二次障害としての不眠やうつ症状が認められる場合には、まずはその病状を解決しながら(受診、カウンセリング、必要に応じた最低限の投薬など)、発達障害の対策のご相談にのっています。

発達障害の種類について詳しく解説してきました。発達障害についての理解を深めていくことが、当事者もその周囲の方にも過ごしやすい社会へ繋がっていくのではないでしょうか。職場や皆さんの周りでお困りの方がいらっしゃった際には、ぜひ寄り添ってあげてください。


著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長


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