コロナうつを乗り越えるメンタル
2020.10.12
- メンタルヘルス
コロナうつとは
外出による感染を気にして自宅にいる期間が多くなるとストレスがたまります。
ストレスが蓄積していくことでコロナ疲れとなり、コロナうつへ繋がっていきます。コロナうつとは、コロナウィルスに感染したことで鬱になるということではなく、それに関連する事象で鬱になるということです。
コロナうつを理解するうえで参考になる考え方として、適応障害という疾患があります。これは、ストレッサー(ストレス反応を誘発させうる刺激)の影響を受けて自律神経系が乱れることで生じる心と身体の反応です。
治療法としてはストレッサーから適切な距離をとる環境調整が重要です。
新型コロナウィルスの流行により新しい生活様式が取り入れられるようになりました。新たな環境に順応していくことが求められるようになったことで、生活様式の変容というストレッサーに対する対応が求められているのです。
新型コロナウィルス感染者対応の医療従事者 3割近くがうつ状態
日本赤十字社医療センターが、今年の4月から5月にかけて、約2000人を対象に新型コロナウイルスの患者の対応にあたった医療従事者の精神面への影響について調査を行いました。その結果、医師や看護師のほか、事務職員など3割近くがうつ状態になっていたことがわかりました。調査を行った医師は「医療者を精神面で支える対策が必要だ」と指摘しています。
コロナうつの予防法
コロナうつに効果があると考えられる予防法をいくつかご紹介します。
① 感情を吐き出してストレス発散
ストレスに対処するためには、心にたまった感情を吐き出すことが効果的だといわれています。
普段は表に出せない感情を表現することでスッキリした気分になることができます。
歌を歌うことも呼吸法としてリラクゼーション効果があるといいます。歌うために、大きく吸った息をゆっくりと吐き出さなければなりません。大きく吸った息を長い時間をかけて吐き出すという動作が良いようです。
② 情報に左右されない
テレビやインターネットで連日報道されているコロナウィルスに関する情報は氾濫しすぎています。不確かな情報に惑わされないよう正しい情報を見極める力と様々な情報に対して過敏に反応しないようにすることが大切です。意図的にコロナウィルスの情報をシャットダウンすることも良いでしょう。テレビやネットから離れてリラックスできる空間を作ることをおすすめします。
ネガティブな情報に触れ続けていると、自然とネガティブな気分に支配されてしまい自分ではそれに気がつきにくいものです。情報を選択しネガティブとポジティブの情報の量を調整することが重要です。
情報量の増加についての弊害は、これまでのコラム(情報過多とストレスとの関係性:https://heiseiikai.or.jp/column/jyoho-kata/)にも掲載しております。興味がある方は確認してみてください。
③ 健康習慣の維持や規則正しい生活と運動のこころがけ
ある調査では、新型コロナウイルスの発生以降62%の人が「食生活が変化した」と回答したそうです。健康的な食事や運動、良質な睡眠をとることは免疫機能の向上にもつながります。意識的に取りいれてみると良いでしょう。
④ 他者との会話で孤独感を軽減
外出を自粛している人は、電話やオンラインをうまく取り入れて家族や友人と会話をする機会を増やしましょう。一日誰とも話さなかったという日が数日続くと次第に心がふさぎ込んでしまいます。孤独や孤立は、うつ病になるリスクでもあります。ネガティブな感情を一人で抱え込まないよう誰かに相談して、心を軽くしましょう。
⑤ 「プライベート」と「仕事」を分ける
本来、自宅はリラックスのための空間です。自宅に仕事を持ち込む場合には、なるべく空間を切り分けることが望ましいでしょう。在宅勤務であれば、自宅に「職場」と考えるスペースを確保して、仕事が終了したらその場所から物理的に離れるようにすることで気持ちにメリハリがつきます。
通常勤務であれば、多くの人が終業後に職場を離れて公共交通機関や車で帰宅します。その時間が仕事モードからオフモードへと切り替わる大切な時間でした。在宅勤務ではそれが難しくなっています。そこで、仕事が終わったら、散歩や軽いストレッチをするなど決め事をするとうまく切り替えができます。
⑥ 犬や猫などのペットを飼う
最新の報告ではペットを飼うと孤独感や不安をやわらげる効果があるともいわれています。
アメリカでは新型コロナウイルスの発生以降、保護犬、保護猫の需要が急増しているそうです。バージニア州の動物保護団体「ラッキー・ドッグ・アニマル・レスキュー」によれば、譲渡件数は3000件近い応募申請があり、これは例年の3倍にあたるそうです。
犬や猫と触れ合う事で「つながり」を実感できるならばペットを飼ってみるのも良いのかもしれません。
去年の今頃はこんな事をしていたのに、今は自宅にいるばかりだと悲観している人も多いことでしょう。コロナウィルスへの不安は誰もが持っています。不安や焦りが募れば、気持ちが自然と落ち込み、眠れなくなることもあるかもしれません。そんなときは、「きっとコロナによって自分はいつもよりも不安で繊細になっているんだ」と認め、受け入れることが大切です。不安を認め、受け入れることはうつに対する基礎的な自己防衛です。
コロナウイルスの感染拡大は深刻な問題ですが、いつかは収束すると楽観的に考える視点も重要です。アフターコロナにどんなことをしたいか、どう生活していきたいか、抱いていた夢や希望を再び思い出してみることもメンタルを健康に保つうえでは大切なことです。多くの人が、明るい未来を想像して少しでも前向きな気持ちになれることを願っています。
著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長
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