パレートの法則が導くコミュニケーション法
2019.12.09
- メンタルヘルス
生きていくうえで、いくつになっても人間関係の悩みは尽きないものです。
どんな環境においても、自分とは合わない人はいます。転職などで環境が変わり、新しく人間関係をスタートさせたいと思っていても、自分と合わない人は一定数存在してしまうものです。
実はこれには不思議な自然の法則があり、それは自然の摂理にかなっているだけで、実際はその人間関係に悩む必要はないのかもしれません。
パレートの法則とは?
イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した法則で、「経済活動において全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出している」という考え方です。これを、「パレートの法則」や「80:20の法則」、「2:8の法則」と呼ぶこともあり、多くの現象は80:20という比率でばらつきが生まれるということを提唱しています。
例えば、次のようなものが挙げられます。
・仕事の成果の8割は、費やした時間全体のうちの2割の時間で生み出している
・企業の売上の8割は全体の2割の顧客が生み出している
・ソフトウェア利用者のうち8割は、全機能のうち2割しか使っていない。
・普段着る服の80%は、自分の持っている服のうちの20%に集中している。
このように、経済学だけでなくビジネスやマーケティング、普段の生活でも幅広く活用ができます。無意識のうちに不思議と世の中はこのパレートの法則の現象が起きているのです。
2:6:2の法則
さらに、パレートの法則を派生させたのが、「2:6:2の法則」です。
この法則を、アリの行動で分かりやすく説明します。
アリは、働き者なイメージがあるかと思いますが、働き者は上位2割のアリで、残り6割のアリは、上位にも下位にも属さない平均的な働きをする者が占め、残り2割は怠け者のアリであるといわれています。
そこで、この怠け者のアリの集団をすべて排除してみるとどうなるでしょう。怠け者が不在になり、全員がせっせと働くものかと思いきや、しばらくすると残ったアリの2割程度がさぼり始めるそうです。
それとは逆に、効率を良くするために、働き者の上位2割の働きアリだけを集めて、1つの集団を作った場合でも、時間とともに2:6:2が形成されて、一部の働きアリが怠け者へと変化していくそうです。
これは、会社でも同じで、2:6:2の割合に近い形で、上位、中位、下位が存在するといわれています。
「2:6:2」が円滑な人間関係を作る
2:6:2の法則を提唱したのは、パナソニックの創業者である松下幸之助さんです。
松下幸之助さんは、このような言葉を残しています。
「ほとんどの人は、あなたが嫌いな2割の人を意識しすぎている。
それによって、自分らしさが出せていない人が、あまりにも多すぎる」
嫌われることを過剰に恐れている人ほど、自分のことを嫌う人たちに意識が向いてしまいます。嫌われないように意識するあまり、行動や発言を控えてしまい、本来の個性が失われることもあります。
2:6:2の法則を、自然の摂理と考えると、人間関係は楽になります。
意見が合わない人や自分を嫌う人、苦手な人は自分とは反対側の人間だと割り切ることが大切です。10人のグループがあれば、あなたと合う人が2人いれば、あなたと合わない人は同じく2人いて、どちらでもいいなと感じる人は6人いるのが当たり前のことなのです。そのように考えると、過剰に落ち込むことや相手とぶつかることも徐々になくなってきます。無駄なエネルギーは使わずに、そのようなものだと受け入れることができるようにもなります。それが諦めではなく、相手を認め、赦しに繋がることができたならば、尚よいでしょう。
相手を変えようとすることは、とても難しいことです。苦手な人がいれば、距離を置くことが大切です。2:6:2の法則を理解すると、一部の人から嫌われるくらいで丁度いいと割り切ることもでき、自身の個性を大事にできるはずです。ただし、自分勝手にわがままを言っていいということではありません。
人間は、ネガティブな方向に目が向くもので、これをネガティビティバイアスといい、これは人間のさがでもあります。そのため、少しでも視点を変えてポジティブな方向に目を向けてみることが重要です。意識的に、ネガティブなところは見ないようにすることも良いでしょう。
ポジティブな20%に目を向けることで、明るく楽しい実りのある日々になるかもしれません。まずは、苦手な2割の人ではなく、あなたのことを慕ってくれる2割の人へ意識を向けるようにしましょう。そうすることで、居心地も良くなるでしょうし、嫌う人に対する意識も薄れていくのではないでしょうか。そして、自分の個性を出すことができ、自然に居心地の良い環境を作ることができるようになることでしょう。
皆さまも、自身の周りの環境に、パレートの法則や2:6:2の法則を当てはめてみると、新たな気づきやより良い人間関係を構築するヒントが見つかるかもしれません。是非、考えてみてください。
著者:塩入 裕亮
精神保健福祉士
医療法人社団 平成医会 「平成かぐらクリニック」 リワーク専任講師
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