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日常を取りまく様々な認知バイアス

  • メンタルヘルス
バイアスは「偏り」を意味する単語です。心理学では物事の判断をこれまでの経験や固定観念にしたがうことで、合理的でない考えをすることを認知バイアスといいます。認知バイアスは多種多様な効果があり、その多くは日々の生活においても起こっています。今回は認知バイアスについて解説します。

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認知バイアスとは

物事の判断が、直感やこれまでの経験にもとづく先入観によって非合理的になる心理現象を認知バイアスといいます。主に認知心理学や社会心理学などの分野で用いられ、脳に余計な負担をあたえないための機能や工夫でもあります。生活習慣によって生まれた固定観念や、不安、懸念などから起こる認知バイアスは取り除くことが難しいといわれています。しかし、認知バイアスが発生しうる可能性があることを認識し、対策を講じることで思いこみによる判断を減らすことはできます。

様々な認知バイアスについて

認知心理学や社会心理学などでよくとりあげられる認知バイアスは数多く存在します。
これからいくつかの認知バイアスついて紹介します。

ハロー効果

「光背効果」「後光効果」とよばれる認知バイアスです。
ハロー効果とはある特定のものに対する評価が、全く因果関係を持たない異なるものの評価へ影響を与えることです。これは、ポジティブなものにもネガティブなものにも当てはまります。情報量が少ない状況でその隙間を埋めようとする人間の脳の働きが関与しているといわれています。ビジネスの分野でもハロー効果は応用されており、代表的な例としては企業が人気のある有名人を商品のCMに起用するといった手法があります。

バンドワゴン効果

大勢の人が選択している判断は、個人の判断よりも正確であると思いこんでしまうバイアスのことです。その結果、多くの人が選んでいるものなのでよいものなのだろうという認識になります。
インフルエンサーによるマーケティングもその一種であり、SNSにおいて多くの「いいね」をもらっているものほど良い商品であると認識される傾向があります。

確証バイアス

自分の主張を通したいときに、自分の考えや仮説に合う都合のいい情報や自分の思い込みを正当化する情報を無意識に集める傾向があります。また、反対意見などの異なる思想に対しては、抵抗感から無意識に軽視・排除してしまいます。
人間の脳は理由を求め、不協和が起こっている状態は気持ちのよい状況ではありません。その不協和を改善するために、確証バイアスは起こります。このバイアスは比較的多くの人にみられます。

内集団バイアス

他の集団と比較して、自分が所属している集団や属している人が優れていると位置付けてしまうことです。また、外部の集団よりも内集団の人により好意的に接することも内集団バイアスに含まれます。このバイアスにより、外部の集団に対して差別的に接することが問題となる場合もあります。

ピーク・エンドの法則

ピーク・エンドの法則は何かを経験した際に、最も感情が動いたとき(ピーク)と、出来事が終わったとき(エンド)の記憶だけでその経験全体の印象が決定されてしまうことです。
例えば、「高校時代を振りかえってください」といわれたら、どんなことを思いだすでしょうか。 多くの人は、体育祭や文化祭など最も印象深い出来事や大学受験や卒業式など高校生活終盤の思い出(エンド)を思い浮かべたのではないでしょうか。この「ピーク」と「エンド」という2種類の記憶が、高校生活全体の印象に大きな影響を与えます。すなわちピークとエンドが良い思い出であれば、それ以外の細かい記憶は、全体的な印象にほとんど影響を与えないのです。

後知恵バイアス

ある問題が起こったあとに「そうなると思っていたんだよ」とよく言っている人をみたことはありませんか。このような人の心理には後知恵バイアスがかかっているのかもしれません。
後知恵バイアスとは、結果がでたあとに「そのような結果になることは予想できていた」と、あたかも最初から結果を知っていたかのように、結果と自分の考えを一致させようとすることをいいます。

正常性バイアス

人が異常な事態に直面した際に、自動的に正常な範囲内だと認識してしまうことです。例えば、大きな震災が起きた際に避難をしなくてはならない状況にも関わらず、まぁ大丈夫だろうと思って避難しないような場合です。「自分だけは大丈夫だ」といった考えや、「たとえ何か起きたとしても大事ではないだろう」と考えることで、ふりかかる危険を過小評価していつも通りの生活を継続しようとしたり、自分は詐欺には引っかからないだろうという過信が正常性バイアスをまねきます。

自己奉仕バイアス

成功したことは自分の能力のおかげ、失敗は自分にはどうにもできない要因によるものと考えてしまう傾向を自己奉仕バイアスといいます。すなわち、自分の成功については内的要因を自分の失敗については外的要因を重視する傾向のことです。仕事で結果をだしたことは自分の能力が高いからと考え、失敗したときには周りの環境のせいにします。悪くいえば、成功は自分のお陰、失敗は人のせいにしてしまうというものです。

メンタルヘルスコラム:認知バイアスを防ぐ方法

認知バイアスを防ぐ方法

認知バイアスは普段から無意識に生じていることが多い心理現象であり、注意するだけでは防ぐことができません。それではどのようなことに気をつけておけばよいのでしょうか。

① 適切かどうか判断軸を持つ
それぞれの事象について目的が何であるのかを整理し判断基準をしっかりと持つことでリスクを軽減することができます。例えば、人気商品だからという理由だけで購入するのではなく、他社の製品とも比較して判断の軸をもつことで認知バイアスによる失敗は防ぐことができます。
② 因果関係を分析して前提を疑う
仮に商品の売上げが減少したとして、その理由を「競合商品の影響である」と分析したとします。しかし、内集団バイアスの影響を大きく受けており自社商品が市場の需要にマッチしていなかったという内的な要因に目を向けられていないことも考えられます。先入観を全くもたないで対処することは難しいかもしれませんが、第一に浮かんだ考えに先入観が混じっていないか検討することも大切でしょう。

皆さんは生活しているなかで認知バイアスを感じる場面はありますか。脳が情報処理スピードを高めるために発生してしまう不都合ともいえる認知バイアスですがメンタルヘルスの安定にも関与しています。
認知バイアスを知ることで不要な批判や思わぬ衝突を防ぐことができ、他者に寛容な心で接することができるかもしれません。大切な判断をするときや期待していたように物事が進まない時には、人間の認知の癖について考えてみるとよいかもしれません。


著者:塩入 裕亮
精神保健福祉士
医療法人社団 平成医会 「平成かぐらクリニック」 リワーク専任講師


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