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職種で異なる健康課題

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従業員の健康課題の改善については、業種や職種、職場環境、生活リズム等の特徴を意識して対策を立てることが重要です。建設業のように屋外で勤務する業種と、IT企業のように屋内でパソコンに向き合って勤務する業種を比較してもわかるように、職場環境や業務内容によって、生活習慣や身体に負担をかける度合が異なってくるからです。今回は、適切なコミュニケーション方法もご紹介しながら、業種や職種で異なる健康課題について解説します。
メンタルヘルスコラム:職種で異なる健康課題

顔は心を映す鏡

コロナウィルスの感染拡大に伴い、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令され、全国各地で多くの企業が在宅勤務を導入しました。そのため、打合せや会議をオンラインで行う機会が増えてきています。

対面でのコミュニケーションとはまた違った難しさを感じている人も多いのではないでしょうか。
オンラインでのコミュニケーションでも重要となる「顔の表情」について、考えていきたいと思います。

「顔は心を映す鏡」といわれるように、私たちの顔にはさまざまな感情が映しだされます。怒っているのか、はたまた悩んでいるのか、表情から読み取れる情報は、関わる人の行動や印象に大きく影響をあたえています。

笑っている人を見ると自然と顔がほころんだり、悲しんでいる人の顔を見ると自分も思わず悲しい顔をしてしまう経験はありませんか。

このように、他者の表情と一致した表情を無意識に真似てしまうことを、「表情同期」といいます。表情同期は、相手との信頼関係によって反応が変わるという傾向があります。

具体的な例でいうと、「微笑んでいても数秒で元の表情に戻る」「相手が笑っていても自分は笑わない」などがそれにあたります。つまり、相手からあまり表情が変わらない人だなと思われると、信頼できない相手とみなされるかもしれないわけです。

・すごく真剣に話を聞いているのに、中々相手が心を開いてくれない。
・面談の回数を重ねても中々信頼関係が築けていない感じがする。

誰もが1度は経験したことがあるようなこれらの悩みは、もしかしたら表情同期が関係しているかもしれません。しかし、表情同期を意識し活用できれば、苦手だなと思う人でも、相手の表情に自分の表情を合わせることで信頼関係が築け、気持ちが共有できる人としてお互いが理解できるきっかけになるかもしれません。

これは「表情ミラーリング」として、私の著書「3秒で部下に好かれる方法」にもある方法です。

私たちは相手のちょっとした表情の変化に敏感です。
オンライン会議などでも、いつもより顔を見ることが多い今日この頃、相手の表情だけでなく自分の表情にも意識を向けてみましょう。

メンタルヘルスコラム:仕事内容と健康状態の関係性

仕事内容と健康状態の関係性

仕事内容と健康状態については、4つのパターンにわけられます。

(1)規則的な勤務時間でデスクワークが多い業務
(2)顧客都合のため生活リズムを作りにくく生活が不規則な業務
(3)現場で身体を使って作業し、生活が規則的な業務
(4)夜勤・交代制勤務等、勤務時間が長く比較的身体を使う業務

(4)に該当する、トラック・バス・タクシー運転手、ガードマン、医療介護職などは、夜勤・交代制勤務で生活のリズムが作りにくく、また食事が不規則になるという健康課題が挙げられます。

夜勤明けの就寝前に飲食をしがちであるため、夜勤明けの飲酒が習慣化している人もいて、脂肪肝などの肝機能障害にも注意が必要です。

不規則な食生活に加えて、睡眠時間にもばらつきがあり、睡眠障害に陥りやすいリスクもあります。運輸交通事業者における定期健康診断の有所見率は、全産業の平均に比べて高い傾向があります。その中でも、バスやタクシーの運転手が含まれている道路旅客運送業では、有所見率が75.2%となっています。

令和2年の業種別の定期健康診断結果によると、有所見率は下記のとおりとなっています。

全産業平均   58.5%
運輸交通事業者 66.7%
(内道路旅客運送業 75.2%)
建設業     64.6%
接客娯楽    58.2%
出典:厚生労働省「令和2年定期健康診断実施結果(業種別)」

夜間勤務や不規則な勤務を強いられる労働者は、心身の疲労が蓄積しがちです。循環器系疾患のリスクが高い人は、高ストレス者と血圧の急上昇が、脳血管疾患や心臓病などの発作を誘発する引き金にもなり、重大事故や死亡事故に直結する危険性もあるため注意が必要です。

メタボ予防・解消のためには、栄養と適正なカロリーを考慮した食事、日常生活の中での運動の習慣化、そして禁煙が有効とされます。

運輸交通業のように、業種によっては、従業員の体調不良が大事故につながり、人の生死にかかわる危険性が高い職種でもあります。リスクマネジメントの視点から従業員の健康は、企業の未来を決定することを認識して、健康経営に取り組むことが望まれます。

いかがでしたでしょうか。この機会に、ご自身のお仕事と健康について考えてみてはいかがでしょうか。日頃の小さな積み重ねが健康リスクの低下に繋がります。


著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長


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