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朝食で得られる良い効果

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みなさまは普段、朝食を食べていますか。 私たちの基本的な生活習慣として、食事・睡眠・運動の3つがあります。 大事なのはわかっていても、一度ついてしまった習慣を変えることは案外難しかったりします。 朝ご飯を食べるなんて、当たり前のことと思われる人もいるかも知れませんが、実は朝食を食べる習慣のない人が結構いるのです。 今回は様々なメリットがある朝食を食べる習慣についてお伝えします。

朝食とは

朝食とは、睡眠から目覚めて朝最初にとる食事のことをさします。
日本では江戸時代以降に1日3食になり、それまでは1日2食が当たり前だったようです。1日3食になった理由として、照明器具の普及で活動時間が長くなったことや手軽に食べられる屋台などの外食産業の発展があるといわれています。

近年は若い世代(20~39歳)で朝食を食べない人が多くなっています。
農林水産省の調査(食育に関する意識調査)では、2019年度の朝食を欠食する(「週に2~3日食べる」及び「ほとんど食べない」)若い世代の割合は25.8%でした。特に、若い世代の男性では、31.5%が朝食を欠食、そのうち「ほとんど食べない」と回答した人の割合は21.0%と、5人に1人が朝食をほとんど食べていませんでした。また、「ほとんど毎日食べる」と回答した若い世代の割合は男性58.0%、女性69.2%であり、他の世代に比べ低い結果でした。

朝食を食べるメリット

それでは、朝食を食べるとどのようなメリットがあるのでしょうか。

①エネルギー源や栄養素の補給

私たちの身体は、寝ている間もエネルギーを使っています。そのため、朝にはエネルギーやエネルギーをつくるために必要な栄養素が少なくなっています。 さらに、寝ている間の新陳代謝にも栄養素が利用されています。朝ごはんを食べることによって、眠っている間に使われた分と、午前中に活動するためのエネルギーや栄養素を補うことができます。
文部科学省が行った学力調査では、朝食を食べる習慣のある子は、食べる習慣のない子に比べて体力と学力が高いという研究結果が出ています。朝食を食べると、脳のエネルギー源であるブドウ糖をチャージでき、勉強に集中しやすくなったり、体を動かすことができるからと考えられています。

②生活習慣病&肥満予防

朝食を抜く習慣は、運動不足や喫煙などと同じように、生活習慣病を促すリスク因子の一つであるとも言われています。これまでの研究では、肥満・2型糖尿病・脂質異常症などの危険性が高まることが明らかになっています。
もし朝食を抜くと、どのようなことが起こるでしょうか。午前中に活動している間に空腹感が強くなり、それを満たすために昼食や夕食で食べ過ぎてしまう傾向にあります。体としては、エネルギーが足りない状態のところに入ってきた栄養を一気に吸収するため、朝食を食べる場合に比べて吸収が多くなります。

③生活リズム

私たちの体には、1日(約24時間)のリズムを作る体内時計(概日リズム)が備わっています。睡眠と覚醒、体温や血圧、免疫機能の調整、ホルモン分泌などは体内時計のリズムに合わせて行われており、これらのリズムが調和しているのが健康な状態といえます。
私たちが夜眠っている時は、自律神経のうち副交感神経が優位に働いています。起床後に太陽の光を浴びると、脳が目覚め、リセットされます。そのタイミングに朝食を摂ることで、朝食が交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズに行うスイッチの役割を果たしてくれます。食べ物が胃に入ると、腸の動きが活発になり、自律神経が交感神経優位へと切り替わっていきます。

④メンタル 

メンタルが不安定な場合には、食欲がなかったり、眠れなかったりして、朝目覚めても食事をとることが難しいことがあります。朝起きて食欲があり、朝食をとれるかどうかは、健康のバロメーターの1つなのかも知れません。
多くの研究によって、朝食を食べることは、心にも良い影響があることがわかっています。例えば、小学生から大学生を対象にした研究では、朝食を食べる習慣のある人は集中力の欠如やイラつきが少なく、心の不調が少ないと示されています。さらに、栄養バランスの良い朝食をよく噛んで食べると、精神活動の活発化につながることもわかっています。これは、リズム性運動により咀嚼筋を動かすことで脳の血行が良くなり、精神を安定させる働きのあるセロトニンという脳内物質が活性化するためです。

理想的な朝食

たんぱく質・脂質・炭水化物はエネルギーのもとになる栄養素であり、この三大栄養素をバランスよく摂取することが大切です。野菜だけではたんぱく質も脂質も足りなくなってしまいます。
わかりやすいメニューであれば、ご飯やパンなどの主食(炭水化物)、卵や豆、魚、肉類などの副菜(たんぱく質)、野菜や果物などの副菜(ビタミン・ミネラル)の組み合わせです。

また、朝昼夕の食事量の比率は、4:3:3が理想と言われています。難しければ、3:3:4 だそうですが、体内時計の働きで夕食の時間帯に食べたものは体に脂肪として蓄えるようになっています。そのため、夕食の量が多い人は太りやすく、体内時計が乱れやすくなるため、注意が必要です。
1日の摂取エネルギーの4割を朝食でとるの!?それは難しい・・・と感じる人もいると思います。現在朝食に何も食べていないのであれば、パンとヨーグルトとシリアルなど、手っ取り早く準備できるものでも良いです。食器を準備するのも面倒な人がいたら、バナナ1本でも良いですとお話しています。
何も食べないよりは、軽めでも少し偏りがあっても食べる方が良いでしょう。

今回は、朝食を食べることの重要性をお伝えしました。
国立精神・神経医療研究センターが2018年に実施した「肥満や高脂血症、食生活・運動習慣がうつ病と関連」の調査によると、うつ病の予防や治療には「体重の適正なコントロール、肥満やメタボリック症候群と関連する疾患の治療や予防、朝食をしっかり摂り、間食や夜食を控え、運動を心がけること」が大切であるとしています。うつ病とは一見関連のなさそうな朝食についても「朝食をしっかり摂り」と明示されているのです。

朝食を食べるために必要なことを聞いた調査で、若い世代においては、男女ともに「朝早く起きられること」をあげる人が最も多く、次いで多いのが、男性では「自分で朝食を用意する時間があること」、女性では「朝、食欲があること」となっていました。
前日の夕食の時間や内容、睡眠時間や起床時間など、朝食を食べない理由には、生活リズムが密接に関わっているのです。たかが朝食ですが、されど朝食なのです。
朝食が食べられたら、生活習慣が良い方向に変えられるかも知れません。
明日からより良い朝食を毎日欠かさず食べることを始めてみませんか。


著者:金子 綾香
保健師
医療法人社団 平成医会


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