心理検査を紹介~バウムテスト~
2023.08.28
- コラム
バウムテストとは
バウムテストは、臨床心理学者のカール・コッホ(スイス)によって1945年に開発された、樹木を描くことで被検者の内面や心理状態を捉えようとする心理検査です。バウムテストを含む絵画法は、被験者の無意識を捉えることが出来るとされているため、投影法といわれます。その為、質問紙法とは異なり、意図がわかりづらくなっています。
無意識を対象とした心理検査の代表的なものとしては、ロールシャッハ・テストやTAT(主題統覚検査)などが挙げられますが、それらに比べ実施が簡便に行え、被検者への心の負担が少ないとされています。
また、無意識を捉えることが出来る点や実施に言葉を用いない点などから、面接の語りとは異なるパーソナリティの一面を捉えることも可能にします。バウムテストは、木という身近な題材と紙と鉛筆があれば実施できますので、幼児から成人まで検査を実施することができます。
しかし、描画法だけで被検者のこころの全体像をとらえることはできないため、バウムテストの結果の解釈には一定の理論があるのですが、解釈する人によっても違いが出てきます。主観的な検査ですので、必要に応じて他の心理検査も組み合わせながら行っていきます。
このような心理検査はあくまで補助的な役割であり、実際には問診や医師との診察などの中で病名や治療方針を決めていきます。
バウムテストは木を描く検査ですが、絵の上手、下手は関係ありません。また、深層心理がわかるといっても、すべてがわかるわけではありません。あくまで思考や状態などを把握する補助にすぎず、診療に生かしていくために行います。
検査自体は単純ですが、その結果の解釈には専門的な知識と経験が必要です。
バウムテストの目的
実施目的は、パーソナリティ傾向を把握することで被検者の多面的理解に役立てることのほか、被検者の状態像、知能・発達水準などを把握する手掛かりとすることもあります。例えば、年齢に比して形態が幼い場合は、心理的な退行や知的の遅れがうかがえるように、言葉では表現されることのない精神的な内面をとらえることにあります。また、被検者の状態像・病態水準を捉えることも可能であり、治療過程の把握に役立てられることもあります。
実施方法や留意点
A4版画用紙(白)1枚、鉛筆(2B以上)1本、消しゴムを準備します。
教示は「実のなる木を一本描いてください」と行います。
紙の方向、消しゴムの使用は制限がありません。時間の制限がないことも伝えます。
バウムテストは、投影法という無意識を探るための心理検査になります。ですから検査を受ける際には、なるべく自由に思いつくままに描いてもらいます。
被験者が、検査の意図を分からないことが、本人の無意識の部分が表れやすくなるので望ましいといえます。
バウムテストでは、描かれる木に反映されたこころの内面を分析することが目的であり、現実にある木を正確に模写する必要はありません。そのため、外の樹木が見える環境や参考となる写真・絵があるような場所での実施はできません。
描画後には木がどのような状態であるか、今どのように感じているか、強い木か弱い木か、どのような人物をイメージしたかなどを質問し、解釈に生かすこともあります。
解釈について
バウムテストではまず、描かれた絵を全体的特徴でとらえます。全体的な特徴を捉える際には、Grüwaldの空間象徴理論の考え方を参考に解釈していきます。
自由に書いてもらった「一本の木」から、全体的印象、樹木の形態、鉛筆の動き、樹木の位置の4つの側面から、60項目あまり(全体的所見、風景および付属物、地平、根元、根、幹、枝、冠、果実・花・葉など)から判断します。
木の絵を描くバウムテスト(樹木画)は、木の部分ごとに心理学・統計学的な意味合いがあります。紙の上に描く木の位置や空間スペース、地面との関係などから、家族関係や環境や世界とのつながりなどを判断することができます。
テストの判定は、
①樹木の形-形態分析(発達テスト的側面)
②鉛筆の動き-動的分析(性格テスト的側面)
③紙面における樹木の位置-空間象徴
の解釈の3つの側面から判定します。
今回は、心理検査の中でもバウムテストをご紹介しました。
医療機関で実施してる場合や、公認心理師や臨床心理士といった心理職が開業してカウンセリングに取りいれているところもあるようです。医療機関では基本的には保険適用となります。
心理検査にも多くの種類があるので興味がある方は調べてみてください。
著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長
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