ADHDについて~疾病理解~
2023.11.27
- コラム
ADHD症状
ADHDには3つのタイプがあります。不注意が優位となっているタイプ(不注意優勢型)、多動・衝動性が優位となっているタイプ(多動性-衝動性優勢型)、両方が混合しているタイプ(混合型)の3つです。
〇多動性・衝動性による特徴
特徴としては、目的のない動きをしてしまう、感情が不安定になりやすい、過度なおしゃべりや不用意な発言などがあります。多動は行動として現れるため、子どものときに気づく可能性が高くなります。大人になると目に見える多動症状はおさまってくることが多いのですが、手足や内面の落ち着きのなさが残ることがあります。
〇不注意による特徴
特徴としては、集中した状態を持続するのが難しい、ケアレスミスが多い、片づけが苦手、忘れ物が多いなどがあります。不注意による症状は、特に社会に出てから仕事などに支障がでるため、職場での問題につながることがあります。ADHDの特性により社会生活がうまくいかず、それが自己否定感を強める原因になることがあります。そういったストレスから、二次的にうつ病やパニック障害、対人恐怖症などを伴うこともあります。
尚、ADHDと自閉スペクトラム症は、併発することがあります。
ADHD原因
ADHDの原因については、はっきりと解明されていませんが、先天的に遺伝的な要因や、周産期の要因、環境因が複雑にかみあって引き起こされていると考えられています。具体的には、前頭前野を含む脳の働きの偏りや、神経伝達物質の機能不全が原因とされています。ADHDの人の脳を調べると脳内の神経伝達が乱れており、神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの働きが低下していることが分かっています。神経伝達物質が不足することで物事の優先順位をつけたり、順序だてて行うことができずに実行機能障害が起こったり、待つことが出来ない、依存が生じやすいなどの報酬系の障害が現れるといわれています。
治療方法
ADHDの治療としては心理社会的療法を実施した上で、生活上の困りごとが多い場合に薬物療法が実施されます。心理社会的療法として環境調整や診察の中で生活上の困りごとに関して話を聞いていきます。また、症状に応じての薬物療法を行い、脳内の神経伝達物質の伝達を改善するなどして、ADHDの不注意や多動、衝動性の症状の改善を図ります。
薬は一時的に自己コントロールの困難を改善しますが、薬だけで生活全般が改善するわけではないため、行動の改善を図ることも必要です。数は少ないですが、医療機関で行っているADHDの方を対象にした集団療法では、自分の特性に関して、または日常の忘れものや時間・金銭の管理、対人関係などについて、グループで話し合います。知識やスキルの習得だけでなく、同じ悩みをかかえる仲間と出会い、悩みを共有し共感することで、自己理解が深まることが期待できます。
ADHD等の精神疾患は、周囲も理解しにくいことがあります。自身の特性を説明することで、周囲の理解が深まり、良い方向に繋がる可能性が高くなります。
大人のADHDと二次障害
大人のADHDの場合には、集中して物事に取り組めなかったり、単純なミスを繰り返してしまうことで仕事や日常生活に悪影響を与えてしまいます。例えば、スケジュールを忘れてしまったり、出されている指示が分からなくなったりすることがあります。
自分自身のADHD特性を理解しながら、それらをカバーできるような工夫を生活に取り込んでいくことが大切です。ゴールは本人が生活しやすい環境を整えることです。
また、ADHDは、うつ病をはじめ精神疾患による二次障害が起きやすい病気といわれています。ADHDを背景に持つ二次障害は、うつ病・不安障害・双極性障害(躁うつ病)・素行障害(行為障害)・反抗挑戦性障害などが挙げられます。二次障害とはいわゆる合併症とも言われ、元々あった障害がきっかけとなり起こる障害のことをいいます。子ども時代には、生まれつきの特性として見過ごされてきた症状が大人になったときに気づき、コンプレックスを抱くようになることもあります。周囲の人から疎まれたりすることで、「みんなと違う」といった偏見がストレスや不安に繋がり、うつ病などを発症してしまう可能性が高くなります。
また、二次障害の症状で受診をしたが、背景にはADHDが隠れていたということもあります。
これまでお伝えしたような症状が思いあたる方は、早めに精神科の医療機関を受診されるとよいでしょう。
発達障害者支援センターや地域療育センター、精神保健福祉センター、自治体の福祉担当窓口でも、ADHDの相談に応じてくれますので、活用してみてもよいかもしれません。
著者:伊藤 直
精神科専門医
医療法人社団 平成医会「平成かぐらクリニック」院長
一般社団法人 健康職場推進機構 理事長
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