冬場に注意が必要なヒートショックへの対応
2025.02.10
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ヒートショックとは
ヒートショックは、血圧や心拍数が異常な変動を引き起こす現象のことです。急な温度差による血圧の急激な変化が影響します。例えば、暖房のきいた暖かい部屋から、冷え込んだ脱衣所に移動し浴室も寒い状態であると血管が縮まり血圧が一気に上昇します。その後、浴槽に入り身体が温まってくると血管が広がり、急上昇した血圧が下がります。この急激な血圧の変化により、一時的に脳内に血液が回らない貧血の状態になり一過性の意識障害が起こります。これが、ヒートショックになるときの身体の状態です。
ヒートショックに注意が必要な人
ヒートショックを防ぐには、急激な温度変化を避け、血圧や体温が安定するような環境を整えることが重要です。身体の機能が衰えてしまう高齢者は特に気をつけなければなりませんが、若年層が大丈夫ということではありません。若年層も条件次第ではヒートショックを引き起こす可能性があります。
例えば、アウトドアスポーツや冬のレジャーで極端な寒暖差にさらされた場合や、睡眠不足やストレス、過度なダイエットや栄養不足など体に負荷がかかっている状態では、危険がともないます。
また、入浴前後の飲酒はアルコールが入ることで血管が拡張しやすくなり、寒暖差の影響を受けやすくなるため、飲酒のタイミングを考える必要があります。
さらに、下記のような疾患がある方はさらに注意が必要です。
高血圧
急激な温度変化で血管が収縮・拡張すると血圧が大きく変動するため、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高める原因になります。
低血圧
急激な温度変化で血管が拡張すると血圧が低すぎる状態になり、めまいや失神を引き起こす可能性があります。
心疾患
心臓病(冠動脈疾患、心不全など)を持つ方は、心臓が血液を送り出す負担が増し、不整脈や心筋梗塞を起こす危険性があります。
動脈硬化
動脈硬化が進んでいる場合、血管が柔軟に対応できず、急な血圧変化が原因で血管が破れる(脳出血)などのリスクがあります。
糖尿病・脂質異常症の方
糖尿病や脂質異常症の方は、動脈硬化が進行している傾向があります。動脈硬化が進行している状態では血圧を正常に保つことが難しいため、ヒートショックのリスクが高いとされています。
ヒートショックを防ぐための対策
室温のコントロールだけでもヒートショックのリスクを軽減につながります。家の中では室温を適温(20~24℃程度)にしておくことで、移動した際に体への負担が軽減されます。
▶︎入浴時の注意点
お湯の温度を41℃以下にすることや湯につかり過ぎずに10分程度を目安にすることがあげられます。
また、湯船に入る前に手足から心臓に向かって順にかけ湯をすることも重要です。
浴室やトイレ、脱衣所など寒くなりやすい空間には暖房器具を設置し、別の空間へ移動するときに急激な温度上昇を防ぐこともポイントです。
▶︎脱水を避ける
脱水状態により血液粘度が高まっている状態になり、そこに温度差による急激な血圧変動が起こることで、血流が維持できずヒートショックが起こりやすくなります。入浴前にコップ1杯の水分を摂取するとよいでしょう。
▶︎食後すぐの入浴や医薬品服用後の入浴は避ける
高齢者は、食後に血圧が下がりすぎる食後低血圧によって失神することがあるため、食後すぐの入浴は避けましょう。体調の悪いときや精神安定剤、睡眠薬などの服用後も入浴は避けましょう。
▶︎お風呂に入る前に、同居する家族にひと声かける
入浴中に体調の悪化などの異変があった場合は、家族などの同居者に早く発見してもらうことが重要です。そのためにも入浴前に家族にひと声かけてから入浴するようにしましょう。

ヒートショック時の応急処置
ヒートショックが起きている人をみつけたら、まずは呼びかけます。呼びかけに反応しなかったり、呼吸が弱かったりした場合は救急車を呼びましょう。なお、意識があったとしても、頭痛や胸の痛み、体に力が入らない、うまく発音できないなどの症状がある場合も救急車を呼ぶ必要があります。
手順としては、まず溺れるのを防ぐためにすぐに浴槽の湯を抜きます。続いて、浴槽から引き上げてください。1人で引き上げることが難しい場合は周りの人に助けを求めます。誰もいない場合は、引き上げずに救急車を呼びましょう。そして、呼吸や脈がない場合は心肺蘇生を行います。
ヒートショックは、急激な温度変化が体に負担をかける危険な現象で、特に寒い冬場、入浴時や寒暖差のある場所で注意が必要です。そのため、ヒートショックを防ぐためには、日常生活での注意と健康管理を心がけ体温調節機能を高めることも大切です。既往歴や持病がある場合は、定期的にかかりつけ医へ相談しておきましょう。
著者:浅海 直
日本内科学会 認定内科医・臨床専門医
医療法人社団平成医会
産業医
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