ストレスが一因となって起こる吐き気
2021.11.01
- コラム
吐き気とは何か
そもそも吐き気はどのように起こるのかご存じでしょうか。
まず、胃が強く収縮し、胃の内容物が食道に押し上げられて口から出ることを嘔吐(おうと)といいます。吐き気は、嘔吐しそうな不快な感覚のことで、悪心(おしん)と呼ばれることもあります。一般的には、吐き気に続いて嘔吐が起こります。吐き気や嘔吐は脳にある嘔吐反射中枢という部位が何らかの原因によって刺激されることで起こるのです。よくみられるのは、胃や腸などの消化管の働きが乱れて嘔吐反射中枢が刺激されるケースですが、それ以外にも乗り物の揺れや、妊娠初期の吐き気、モルヒネなどの麻薬系鎮痛剤の副作用など、さまざまな場面で起こることがあります。
急性の吐き気の原因と対応
急性の吐き気の原因としては、暴飲暴食や胃酸過多、食中毒、ウイルス性胃腸炎が考えられます。
暴飲暴食や食中毒、ウイルス性胃腸炎の場合には、胃腸を休めてあげることが重要です。食べられない上に、下痢症状を伴うこともあるため、脱水症状にならないように少しずつ水分を摂るのが良いでしょう。
吐き気以外にも頭痛やしびれ、意識障害などの症状がみられる場合には、緊急性が高い脳の病気のことがありますので、早急に受診することをお勧めします。
◎胃酸過多が起こる理由
吐き気の原因となる胃酸過多とはどのような状態かを説明します。
胃などの消化器官の働きは自律神経が大きく関わっています。自律神経には交感神経と副交感神経があり、本来はストレスを感じると交感神経が働きます。しかし、過度なストレスがかかると、自律神経の働きが乱れて、副交感神経も活発になり、過剰な胃酸分泌が促されます。
ストレスによる刺激は、脳から交感神経にも伝わり、胃の血管を収縮させ、血流を減らし、胃粘液の分泌を減少させます。
つまり、ストレスを受けた胃は、胃を攻撃する胃酸の分泌が増えた状態になるうえ、胃粘液の分泌が減ったり胃粘膜の血流が低下して抵抗力が弱まってしまった結果、胃に炎症や潰瘍が起こり、胃痛となるのです。
慢性の吐き気の原因
一方、慢性の吐き気の原因としては、逆流性食道炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍などがあります。
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することによって食道の粘膜が炎症を起こし、慢性的な胃のむかつきや胃もたれ・胸のつかえなどの不快症状が生じる病気です。飲酒・喫煙・欧米化した食事習慣などによって起こります。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍は胃や腸の粘膜が深く傷つき粘膜層に欠損が生じる病気です。胃の内視鏡検査で明らかな病変が認められます。原因はピロリ菌や薬剤の影響も考えられますが、ストレスや過労などの影響も大きいと言われています。胃・十二指腸潰瘍の場合は、吐き気以外にも腹痛や嘔吐、食欲不振などの症状が現れることが多く、胃潰瘍の場合は食事中や食後に、十二指腸潰瘍の場合には空腹時に痛みが出るという特徴があります。
原因のはっきりしない吐き気もある
これまでに挙げたような原因が考えられる一方で、明らかな原因が見つからない「機能性ディスペプシア」という場合があります。
機能性ディスペプシアとは、症状の原因となる明らかな異常はないのに、慢性的にみぞおちの痛み(心窩部痛)や胃のもたれ・吐き気などの不快な症状が現れる状態を指します。胃や十二指腸の機能低下・ストレスや不眠・喫煙・飲酒・遺伝など、さまざまな要素が複雑に絡み合って起きると考えられています。
前に挙げた病気でないことを確認するために、胃の内視鏡検査やピロリ菌感染の検査や血液検査などの必要な検査を行なっていただく必要があります。
機能性ディスペプシアの治療では、第一選択として、消化管運動を改善させるための薬や胃酸の分泌を抑える薬や漢方薬が推奨されています。このほか、心因的な要因が大きいと見られるケースでは、抗不安薬・抗うつ剤・漢方薬などが第二選択として処方されることもあります。
吐き気の一般的な対処方法
食事を工夫する
・1回に食べる食事の量を少なくする
・消化に良いものを食べる(油の多いものや食物繊維が多く含まれているものを避ける)
・よく噛んでゆっくり食べる
・規則正しい食生活を送る
刺激物を避ける
アルコールやカフェイン、刺激物の摂取や喫煙は胃腸への負担が大きいため、控えるようにしましょう。
休息・睡眠を十分にとる
睡眠不足や疲労の蓄積はストレスの影響を受けやすくしたり、自律神経の働きの乱れに繋がります。
なるべく休息をとり、吐き気が強い時には横になって休むようにしましょう。
ストレスを少なくする
これまでお伝えしたように吐き気の原因として分かっているものもそうでないものも、ストレスが原因である場合は、少なくありません。ストレスを発散したり、回避することで、吐き気の症状が軽快することもあります。
友人と話したり、趣味に打ち込んだりすることで、ストレスから離れる時間が作れます。また、日頃から日光浴をしたり、意識的に深呼吸をするように心がけることも効果的です。
仕事前や仕事中に増強する吐き気は仕事によるストレスが原因となっている可能性も考えられます。
ご自身で自覚されるストレスに伴って吐き気がある場合には、心療内科を受診したり、業務内容について相談することも大切です。
専門家に相談することが大切
慢性化している吐き気に悩んでいる人は、一度は受診することをお勧めします。
受診にあたっては、いつ頃から、どのような時に吐き気があるのか、なるべく具体的に伝えることで、医師の診療もスムーズになります。
今回は吐き気について解説しました。
吐き気という症状について理解を深め、少しでも辛い症状が軽減できるように日常生活を送っていただけると良いと思います。
著者:金子 綾香
保健師
医療法人社団 平成医会
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