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うつ病の基礎知識

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ひどく落ち込んだりすることは誰にでもありますが、時間が過ぎれば元気になります。しかし、いつまでもふさぎ込んだままで、何事に対してもやる気がなくなってしまうこともあります。今回は、心の病気である「うつ病」の基礎知識をご紹介します。

うつ病ってどんな病気

誰でも気持ちがひどく落ち込んでしまうことはありますが、しばらくするとまた以前のように元気になるものです。しかし、いつまでたってもふさぎ込んだままで、何事に対してもやる気がなくなることがあります。仕事や家事はもちろん、あらゆることが億劫になり、それまで楽しかったことや趣味などにも関心を持てなくなります。
やがて、「こんなにやる気がなく、集中力もない自分はだめな自分だ」といった絶望感にうちひしがれ、「こんなことでは、今後やっていけないんじゃないか?」という不安が強くなります。これが「うつ病」の初期症状と、悪化症状です。
うつ病は、一言で説明するのは難しい病気ですが、脳のエネルギーが欠乏した状態であり、それによって憂うつな気分やさまざまな意欲(食欲、睡眠欲、性欲など)の低下といった心理的症状が続くだけでなく、さまざまな身体的な自覚症状を伴うことがあります。脳のエネルギーが欠乏していなければ、自然治癒力によって、時間の経過とともに元気になるのが通常ですが、時間の経過とともに改善しない、あるいは悪化する場合には生活への支障が大きくなり、「病気」としてとらえることになります。そのため、仕事・家事・勉強など本来の社会的機能がうまく働かなくなり、また人との交際や趣味など日常生活全般にも支障をきたすようになります。

時間がかかるがうつ病は治療によって回復していく

無気力感、不安感、絶望感、罪悪感といった精神的な症状は、大方うつ病によるものです。ですから、病気さえ治ればつらい症状は自然に消えていきます。完治まで多少の時間はかかりますが、うつ病は治る病気なのです。一般的に私たちは、体に異常が現れれば「病気」だと認めても、気持ちの落ち込みなどは、「病気」として認めない傾向があります。しかし、気持ちの落ち込みが長く続くのは、うつ病という心の病気だからであり、それはストレスが続いたために心が悲鳴をあげている状態であることを認識して、早めに専門医の治療を受けることが大切です。単なる疲れのせいだろうと放置すると、苦痛からいつまでたっても解放されません。

うつ病の発症要因

まず、最もきっかけとなりやすい「環境要因」ですが、大切な人(家族や親しい人)の死や離別、大切なものを失う(仕事や財産、健康なども含む)、人間関係のトラブル、家庭内のトラブル、職場や家庭での役割の変化(昇格、降格、結婚、妊娠など)などが要因となります。こうして見るだけでもさまざまな出来事が要因となりうることが分かります。
また「性格傾向」も発症要因のひとつです。脳のエネルギーが欠乏した状態をうつ病と考えますと、義務感が強く、仕事熱心、完璧主義、几帳面、凝り性、常に他人への配慮を重視し関係を保とうとする性格の持ち主は、エネルギーの放出も多いということになります。努力の成果が伴っているうちはエネルギーの回復もみられますが、成果が出せない状況が生じ、エネルギーの枯渇が起これば発症の危険が高まります。
その他「遺伝的要因」、「慢性的な身体疾患」も発症要因のひとつです。 これらの要因によってうつ病を発症している時、脳の中はどうなっているでしょうか。最近の研究では、脳内の神経細胞の情報伝達にトラブルが生じているという考え方で一致してきています。なかでも「セロトニン」や「ノルアドレナリン」といわれる神経伝達物質は、人の感情に関する情報を伝達するものであり、その機能が低下し、情報の伝達がうまくいかなくなり、うつ病の状態が起きていると考えられています。

どんな症状が現れるのか

うつ病になると、ひどくふさぎ込み、ときには妄想的でさえあるような強い落ち込みが二週間以上続きます。それまで楽しかったことをしても、面白いと感じられなかったり、趣味などに対する関心が失せ取り組んでも集中できず、かえって疲れるという状態になります。
また、休んでも疲れが取れず、気持ちの落ち込みと同時に、眠れない日が何日も続いたり、体重が減るほど食欲が落ちたりします。心の病気は他の病気と変わりません。
早い時点で自覚できれば、発症を未然に防げる可能性も高くなります。ただ、こうしたうつ病を代表とするメンタルヘルス疾患は生活習慣病にも類似しており、日々生活をしている中で、なかなか自覚しにくいという難しい点があるのです。
その中で、自覚しやすい症状に注目するという考え方があります。そもそも生命体は、エネルギー補給と睡眠が重要です。最近では、現在不眠がある人は不眠のない人に比べ、3年以内にうつ病を発症するリスクが4倍になるなど、不眠とうつ病の関連性を示す研究報告が多く、注目されています。
未発症や軽症のうちに治療を始めれば、ご本人様はもちろん、周囲への負担も少ない形で回復が望めます。弊会のクリニックでは、体に負担がかからない方法で心の病を治すお手伝いをしていきたいと考えております。


著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者


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