トップ コラム 産業医が解説する職場巡視の基本

産業医が解説する職場巡視の基本

  • コラム
なんとなく職場巡視をしているけれど「いつも同じ結果」「役に立っているのか疑問」「ちゃんと出来ているのか心配」などなど。衛生委員会・職場巡視に関わっている人で、そのように感じている人はいませんか。今回は職場巡視の基本的事項について解説します。
メンタルヘルスコラム:産業医が解説する職場巡視の基本

1.なぜ職場巡視をするのか

従業員の身の安全を保ち、健康を維持するために職場巡視が義務付けられており、以下のように労働安全衛生法で定められています。

◆職場巡視に関する法規定

労働安全衛生規則第15条で、「産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない」と定めています。

近年は労働災害をより減少させるため、労働安全衛生マネジメントシステム(Occupational Safety and Health Management System: 以下、OSHMS)の事業場への導入が進められています。

労働災害を防ぐには、個人の経験と能力だけに依存せず、組織的かつ体系的に実施することが重要です。OSHMSは事業者が危険性や有害性の調査(リスクアセスメント)の結果に基づいて評価と監査、見直しを継続的に実施していくものであり、PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Act)で文書化し、保管していくことになります。

2.誰がどのくらいの頻度で職場巡視をするのか

主に職場巡視をするのは、産業医と衛生委員会メンバーとなります。

事業場の衛生管理者は週1回以上の職場巡視が義務付けられており、その際は衛生管理者1人で職場巡視を行っても問題ありません。

産業医は原則毎月1回以上(条件付きで2ヶ月に1回)の職場巡視が義務付けられています。

3.職場巡視の具体的な手順

確認すべきポイントをリストアップした「職場巡視チェックシート」に基づいて、巡視をしていきます。職場チェックシートの雛形は、関係機関のホームページにありますが、各事業場でチェックすべき項目は異なります。雛形を参考にして事業場独自に作成すると使いやすいと思います。

衛生管理者や職場の統括者は巡視中に気付いた点をメモして、現場の視点から、産業医に対して作業工程や職場環境について説明したり、質問に答えられると良いです。

メンタルヘルスコラム:職場巡視をどのように現場に活かすのか

4.職場巡視をどのように現場に活かすのか

職場巡視の後は、産業医や衛生管理者、巡視した従業員が気になった改善すべき点や良い点について、衛生委員会で報告・共有します。そのうえで職場環境の改善に向けた対策を検討していきます。その際、大小さまざまな気づきが出てくるかと思いますが、優先すべきは重大事故に繋がりかねないことや、健康被害を引き起こすリスクの高いことです。また、前回の職場巡視で指摘された点について、前回から改善されていたかなども確認していきましょう。

巡視を実施して終わりではなく、問題点を安全衛生の改善にしっかりと生かし、今後それに関連した災害が起こらないようにするためにPDCAサイクルを連続的かつ継続的に実施することが大切です。

5.職場巡視で特に気を付けたいポイント

工場とオフィスでは、作業環境が大きく異なるため、職場巡視の際のチェックポイントも変わってきます。

<工場編>

工場や研究施設、建設現場などの作業環境では、作業環境の安全が確保されているかいるかどうかが重要な視点となります。作業環境に危険がないか、正しく防護服を身に着けているか、危険物の保管状況が適切か、緊急時の体制が整っているかをチェックシートに沿って漏れなくみていくことが必要です。

<オフィス編>

オフィス(事務所)は、多くの業種に存在しますが、直接的に労働災害となるような身体的な事故は少ないため、有害要因があまりないと認識されがちです。しかし、多くの時間を同一環境で過ごすケースも多いため、労働者に抱える健康障害がどのようなことなのか、メンタル不調対策がされているかなど、健康増進のための対策を講じることが求められます。
デスク上の照度、パソコンなどVDT(ディスプレイを持つ画面表示装置)を使用する作業環境、通路スペース環境、分煙や禁煙、休憩スペースの整備状況など、健康障害の予防に向けて働きかけをしていきます。

今回は、職場巡視について解説しました。

50人以上の事業場で義務化となっている職場巡視ですが、毎月漫然と巡視するのではなく、PDCAサイクルを意識して、安全でより良い職場環境となるようにしていければ良いと思います。

◆よくある質問

O1:産業医とは?
A1: 産業医とは、事業場において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師であり、研修の修了者や試験の合格者など一定の要件を備えた者でなければならないと規定されています。(東京都医師会HPより)

Q2:衛生管理者とは
A2:衛生管理者とは、労働安全衛生法で定められた国家資格を持っている人です。労働者の健康障害や労働災害を防止するために、専門的な資格の下で職場の衛生管理全般に関わる資格です。常時50人以上の労働者を使用する事業場は、その事業場専属の衛生管理者を選任することが義務付けられています。

Q3:事業場内の衛生委員会のメンバーに衛生管理者がいないケースはどうしたら良い?
A3: 事業場内に衛生管理者の資格を有する従業員がいる場合には、是非その人に衛生委員会のメンバーになって活動していただきましょう。衛生管理者は、資格として衛生管理者免許試験に合格することなどが必要です。衛生管理者の資格試験は毎月行われていますが、資格取得には数か月はかかりますので、事業場内で計画的に進めていくと良いでしょう。
もし、衛生管理者が未選任の場合、罰則として50万円以下の罰金が課せられることがあります。


著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者


当コンテンツの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。