森林浴とメンタルヘルスの向上
2020.08.31
- メンタルヘルス
森林浴とは
森林浴とは樹木に接することで精神的な癒しを求めることです。日本では1982年に林野庁の長官が提唱しました。1986年には「森林浴の森100選」が発表され、東京都では明治神宮の森なども含まれています。
都会に暮らしており身近に自然がないと感じている人も多いかもしれませんが、日本は国土の67%を森林が占めています。この数字は、先進諸国のなかではフィンランドに次いで森林率が高くなっています。
欧米では森林浴が自然療法として医療現場での実用化がされており、ドイツでは健康保険が適用され森林浴や森林での保養を推進しています。
森林浴の効果
森林浴は心身を癒す効果があるといわれています。それは、清浄な空気、風の音や鳥の鳴き声、水のせせらぎ、木漏れ日、木々の緑色など様々な森林環境が要因となっているようです。森林浴には五感を研ぎ澄ませることが大切です。
さらに科学的な根拠もあるといわれています。その源がフィトンチッドとマイナスイオンです。
フィトンチッドとは樹木などが発散する化学物質のことで、森林に入ると感じられる森の匂いがこの物質にあたります。殺菌力を持ち植物が傷つけられた際に微生物の活動を抑制する作用もあります。森の中には動物の死骸や枯れ木、落ち葉など悪臭の原因となるものがありますが、フィトンチッドの消臭・脱臭作用のおかげで森林の爽快な香りを感じることができます。
次に、マイナスイオンは大気中に存在する負の電荷を帯びた分子の集合体です。
天然のマイナスイオンは森の中や特に水しぶきのあがるところに多く存在しています。私たちの体は空気中のプラスイオンとマイナスイオンのバランスが良いことが理想的です。
プラスイオンが多い場合は酸化の影響で、老化、アトピー性皮膚炎、血行不良、さらにはうつ病やノイローゼなど心の症状を引き起こす可能性があります。その反面、マイナスイオンは副交感神経に作用し酸化が抑制されるため、リラックス効果や細胞を活性化して疲労を回復させるなどの効果があるといわれています。
〇ストレス解消効果
コルチゾールとはストレスを感じると分泌されるホルモンのことです。コルチゾールはストレスによって分泌し増加すると交感神経を促進させます。その状態が長期間続いてしまうと脳にダメージを与えてしまうといわれています。
都市と森林の中を歩いている時とでコルチゾールの濃度を調べた結果、森林の中を歩いている時はコルチゾールが減少傾向にありました。これは森林浴によりストレスが減少するということを意味しています。
〇免疫力の向上
森林浴をする前、1日森林浴をした後、2日森林浴をした後でナチュラルキラー細胞(以下NK細胞)の働きや強さを調べたところ、1日の森林浴では27%、2日の森林浴では53%増強されるという研究結果がでています。森林浴にはNK細胞を活性化させて免疫機能を高める効果があるということが分かりました。NK細胞とは身体の見張り番のような役割があり、体内で異常な細胞を見つけて攻撃します。特に腫瘍細胞やウイルス感染細胞の拒絶に重要な細胞です。森林率が高い地域ほどガンの死亡率が低いという報告もされており、森林浴はガン予防にも効果的なのかもしれません。
森林浴の方法
森林浴では、ストレスを感じない時間帯かつ適度な気温の時に実施するのが最適です。
場所については、緑が多いという理由で公園で行うのではなく山や森に出かけることをお勧めします。身近な人や音のストレスを感じない生活から少し離れることが大切です。その際に有酸素運動を取り入れるとより効果が高いといわれています。
注意点もいくつかあります。森林浴を行うためには服装が重要です。森林を歩く時には、怪我などの危険から身を守るのに適した服装を心掛ける必要があります。虫さされやかぶれる植物、日焼け、危険生物との遭遇など森林には危険とも隣り合わせです。また、森の中は気温が低く天候が変わりやすいため、温度調節ができるようにアウターや雨具、軽食や水分の用意もしておくと良いでしょう。
皆さまは、四季を感じていますか。仕事や日常に追われて自然と接する機会が減っています。日本の都市部は緑が少ないという特徴があります。そのため意識的に自然と触れ合う時間を作ることが大切です。人が自然を求めるのは、森を歩いたり、川の水に触れたりすることが心地よいことだと知っているからです。森林浴を取り入れてみることでメンタルヘルスの向上も期待できます。皆さまも是非自然に触れる機会を作ってみてはいかがでしょうか。自然環境の大切さにも気づくかもしれません。
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