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健康診断を最大限に活かす方法

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年に1回の健康診断を春から夏にかけて実施される企業が多いと思います。「健康診断」と一言で言っても、受診先や健診項目、健診後の対応は人それぞれです。 健診結果を十分に活かすことが出来ている人もいれば、残念ながら「受けただけ」になっている人も見受けられます。今回は健康診断を最大限に活かす方法について解説します。

メンタルヘルスコラム:健康診断を最大限に活かす方法

なぜ健康診断を実施するのか

健康診断は誰の義務かをご存じでしょうか。
労働安全衛生法第66条では、労働者に一般的な健康の確保を図るとともに、業務の適正配置および健康管理を目的として、「事業者に一般健康診断の実施義務」「労働者にも健康診断の受診義務」を課しています。事業者は労働者に健康診断結果を通知し、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならないとされています。
また、労働安全衛生規則第44条では、常時使用する労働者には1年以内ごとに1回、定期健康診断の実施義務が定められています。
つまり、事業者側には実施義務、労働者には受診義務があるということです。法定項目の健診費用は基本的に事業者が負担するため、せっかく自分の健康状態を知ることができる健診の受診機会を逃すのはもったいないことであると同時に、労働者には労務提供に必要な健康を保持する義務もあります。なお、健診費用の一部は健康保険組合の保険料で賄われている場合もあります。

日本の健診受診率

平成28年に実施された「国民生活基礎調査」によると、20 歳以上の人で、過去1年間の健診(健康診断や健康診査)や人間ドックの受診状況を性別にみると、男 72.0%、女 63.1%で男性が高くなっています。年齢階級別にみると、男女ともに「50~59 歳」が最も高く、男性で 79.9%、女性で 71.0%となっています。
健診を受けない理由として、20歳代は健康への興味関心が少ないこと、30~50代は、健診の時間が確保しづらいという時間的な制約があがっています。

日本のがん検診受診率は、男性で4〜5割程度であり、女性では、乳がん・子宮頸がん検診を含め3〜4割台となっています。特に乳がん・子宮頸がんについては、検診受診率が低い状況にあります。諸外国、特に先進国では、乳がん・子宮頸がんの受診率は6割以上の国が多く、日本の40%台という受診率は非常に低いといえます。

一方で、健診の有所見率は年々上昇し、平成27年には約54%となっています。有所見とは健康診断の項目で何らかの異常がある状態をさします。特に、有所見率の上昇が目立つ項目としては、血圧・血糖値・血中脂質です。この状況が続くと、脳卒中や心疾患という生活習慣病のリスクが高まることが予想されます。

健診前の準備

健診項目によっては、健診前に飲食を控える指示がある場合があります。健診の案内をよく読み、指示を守るようにしましょう。指示された条件を守らない場合には、検査が延期になったり、正しい検査結果が得られないことがあります。

また、その時の健康状態を調べるのが健診であるため、健診が1か月後にあるからダイエットをする、食事に気を付ける等の行動は本来必要ありません。しかし、1年に1回の健診をきっかけに、自身の健康に目を向け、うまくいけば食生活や運動習慣を変えられることもありますので、健診を健康増進へのファーストステップとして活用することは有効だと思います。

メンタルヘルスコラム:健診結果の指示に従うことが一番重要

健診結果の指示に従うことが一番重要

年に一度の健診、終わるとほっとする気持ちはよくわかります。健診の中には痛みを伴う検査もありますし、しばらく食事を節制していた人もいるかも知れません。何より「健診を受けた」という満足感が得られると思います。
しかし、最も大切なことは、健診結果をどれくらい活かせるかということです。
当たり前のことですが、「要治療」「要精査」「要再検査」となっていたら、必ず指示に従って受診しましょう。
もし保健指導が必要となっていれば、ぜひ保健指導を受けて、病気になる前に生活習慣の改善に取り組みましょう。
健診は病気の予防、早期発見・早期治療のために実施しています。健診で、問題が見つかったのであれば、症状が現れる前に体の異変に気づいたり、大ごとになる前に対処できる機会を得たと前向きに考えると良いでしょう。

経年変化を読み解くことがカギ

各検査には基準値(正常値)があります。基準値外であれば、当然異常値ということになります。
正常値であれば、ひと安心ですが、基準値内でも年々データが悪化していて、異常値となる一歩手前ということもあります。「まだ基準値内だから大丈夫」なのではなく、「もう少しで異常値になってしまうから気を付けよう」と考えてみることが大切です。
同じ医療機関や健診センターで健診を受けると、経年変化がわかりやすいので、なるべく同じ機関での受診が望ましいでしょう。

心の健康診断も義務化

平成27年12月からストレスチェックも義務化となりました。
ご存じの人も多いと思いますが、ストレスチェック制度とは、「労働安全衛生の一部を改訂する法律」により、労働者数50人以上の事業場に義務づけられた心理的負担の程度を把握するための検査です。
健康診断は「からだ」の健康状態、ストレスチェックは「こころ」の健康状態を知るためのものであり、自身のメンタルヘルスに目を向けることにも繋がります。
1年前と現在で、みなさまの心の状態がどのように違うのか、ストレスチェックにおいても自身で気づけない心の変化を知ることができます。

みなさまは、最近受けた自身の健康診断の結果がどのようなものであったか、覚えていますか。
覚えていない・思い出せない人は要注意です。家に帰ったら、ぜひ見返して下さい。
健康は日々の積み重ねによるものです。そして、大切な身体を守ってあげられるのは、みなさん自身です。
健康な生活を送っていくために、ぜひ健康診断を有効活用しましょう。


著者:金子 綾香
保健師
医療法人社団 平成医会


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