メンタルヘルスの医療法人社団 平成医会
トップ コラム 健康課題を可視化する効果

健康課題を可視化する効果

  • コラム
みなさまは【レコーディングダイエット】という言葉を聞いたことがありますか。 2007年頃に本で紹介され、流行したダイエット法です。 食べたものを全て記録するというシンプルな方法で、お金がかからず、効果があると当時話題になりました。手軽で効果的な方法として、現在も実践されている人も多いのです。レコーディングダイエットという言葉を使っていなくても、最近は体重や日々の体調を記録するアプリが身近にありますので、自身のレコーディングに取り組まれている人もいるのではないでしょうか。
メンタルヘルスコラム:健康課題を可視化する効果

レコーディングの意義

レコーディングは、記録をするという意味です。
とにかく口にした食べ物・飲み物は全てレコーディング(記録)するというのが、レコーディングダイエットです。いつ何をどのぐらい食べたかを自覚することで痩せられるというものです。その一番の理由は、記録を積み重ねることによって、食べるという行動を自分で管理できるようになるからです。自分の食生活を記録すると、「今日はこんなに食べていた」など実態を知り、体重が増える原因が具体的にわかり、余分に食べていた食事内容を見直すことが出来るのです。
レコーディングダイエットは、食事内容の記録によるダイエットですが、この記録するという方法を活用すると、体重・歩数・体調変化などの様々な生活習慣を振り返ることができます。

それでは、レコーディングダイエットがどのようなステップを経ていくのかみていきましょう。

ステップ1:書き出してみる

まずは、ありのままの日々の食事内容や行動を記録することです。
例えば、

(朝食) 食パン1枚・ヨーグルト・牛乳コップ1杯
(昼食) ラーメン
(間食) プリン1個・缶コーヒー
(夕食) かつ丼・ビールジョッキ1杯

上記のようなメニューに加えて、食べた時間や場所(自宅もしくは外食)も記録することをお勧めします。
何を食べたかを記録する習慣がついたら、次にその食べ物や飲み物のおおよそのカロリーを記録するようにしましょう。最近は外食をした際のメニューやコンビニのお弁当や飲み物、スイーツにも書かれていることが多くなってきました。また、自宅で料理した場合でも、インターネットで調べるとその料理のおおよそのカロリーを調べることが出来ます。

メンタルヘルスコラム:ステップ2:自身の特徴・偏りを知る

ステップ2:自身の特徴・偏りを知る

上記のような記録表が書けたら、ステップ2に進みましょう。
食事であれば、「私こんなに食べているのか」「食べているものは~が多いのか」という気づき、生活リズムであれば「~にこんなに時間を費やしているのか」という気づきがあると思います。
年齢や性別・身体活動レベルによって1日に必要なエネルギー量は異なりますが、成人の場合には、1日に1,600~2,000kcal程度の摂取が目安となります。

気づきこそが、生活習慣改善の第一歩ですが、その一歩が踏み出せていないケースが多いのが現状です。
生活習慣は無意識・無自覚なことが多く、しかも長年習慣化しているため、何が一般的で、何が一般的でないのかを判別できないという現状があります。
また、バランスの良い食事が望ましいのは分かっているけれど、何をどのくらい食べることがバランスの良い食事と言えるのかがわからないという声をよく聞きます。

一例として、以前関わった患者さんで、日課のように生卵を5個食べるという人がいました。私は保健師という立場上、卵は1日1~2個ということが当たり前になっていましたが、その人にとっての当たり前は5個だったのです。
しかし、多くの人が知っている卵を多く使う料理、例えばオムライスのような料理を食べてはいけないということではありません。普段よりも多く食べた日があったら、その週の他の日は少なめにするなど、数日や1週間単位でみていくことが大切です。また、食材ごとに含まれている栄養素も様々です。卵はコレステロールが多い食材と言われていますが、その一方でたんぱく質やビタミン、ミネラルなどの多くの栄養素を含み「完全栄養食品」とも呼ばれます。しかし、卵だけ食べていれば健康ということはなく、同じ食材に偏ってしまうと栄養素も偏ってしまいます。どのような食材でも、これ1種類だけ食べていれば健康になれるというものはありません。病気をお持ちの場合には、主治医や保健師、栄養士の食事指導を参考にされると良いと思います。

ステップ3:出来そうな目標を考え、実践する

自身の特徴や偏りを知った次のステップは、出来そうな目標に向けて行動することです。
一人で出来る人もいますが、他者が介入すると効果も出やすい特徴があります。

厚生労働省の保健指導の定義では、「糖尿病等の生活習慣病の予備群に対する保健指導とは、対象者の生活を基盤とし、対象者が自らの生活習慣における課題に気づき、健康的な行動変容の方向性を自らが導き出せるように支援することである。保健指導の重要な点は、対象者に必要な行動変容に関する情報を提示し、自己決定できるように支援することであり、そのことによって、対象者が健康的な生活を維持できるよう支援することである。」となっています。

保健指導の場でも対象者の行動変容のために、対象者が実践する内容について保健師が一緒に考えることがあります。
こんなに食べてしまっていることがわかった、これしか歩いていないことを知ったという場合に、「この夕食を~のような食事メニューに置き換えてみませんか」と伝えたり、「この時間に~分くらい歩いてみるのはどうでしょうか」と、その人の生活スタイルに合った行動変容の提案をすることがあります。

生活習慣の改善には、大きく3つのステップであるとお伝えしました。
まずは自分の食事内容や体重、生活習慣などがどのような現状であるかを知ることが大切です。この機会に自身の生活を振り返ってレコーディングを始めてみませんか。


著者:金子 綾香
保健師
医療法人社団 平成医会


当コンテンツの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
コラムについてのご質問やご意見は、メールでお寄せください。お電話でのお問い合わせは恐れ入りますがご遠慮ください。