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元気を作る甲状腺ホルモン

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疲れやすい・集中できない・いつも眠たい等の症状が続いている人はいませんか。その原因を運動不足で体力がなくなったからとか、仕事で疲れているせいと、思い込んでいませんか。実は、甲状腺の病気ということがあります。健診ではわからなかったり、他の病気と思っていて、放置されてしまうことも少なくありません。今回は甲状腺ホルモンの病気について解説します。

メンタルヘルスコラム:元気を作る甲状腺ホルモン

ホルモンとは何か

ホルモンというのは、「ヒトの体内でつくられ、血液中に流れて、様々な調節をする、ごく微量な生理的化学物質」のことです。現在、ヒトの体の中には100種類以上のホルモンまたはホルモンに類似したものが見つかっていますが、はっきりと解明できていない部分も多いと言われています。ホルモンは血液中にごくわずかな量しかありませんが、ホルモンは体の健康維持に重要な働きを担っているため、うまく機能しないことで様々な影響を及ぼします。
ホルモンの量や働きの異常による病気は内分泌疾患と呼ばれています。ヒトの身体には、身体の内部を一定の状態に保ち、維持しようとする機能(ホメオスターシス)が備わっています。
血液中ではホルモンは非常に狭い範囲内(基準範囲内)の量になるように絶妙にコントロールされています。ホルモンの量は多すぎても、少なすぎても望ましくなく、ちょうどいい量であることが重要です。

甲状腺とは

甲状腺はのど仏の下にある、蝶が羽を広げたような形の臓器です。食べ物から摂取したヨウ素を材料にして、甲状腺ホルモンを分泌しています。わずか15g程度の小さな臓器で、外からは目立たないですが、体の「元気の素」ともいえる重要な臓器です。

甲状腺ホルモンの役割と体への影響

甲状腺ホルモンは、全身の代謝を維持するホルモンです。
このホルモンが上昇すると、常に興奮しているような状態になり、イライラし、手足の震えがみられます。脈拍が速くなって動悸がしたり、暑がりで汗っかきになり、体重が低下します。
一方で、このホルモンが低下すると、活動性が鈍くなり、いつも眠く、全身の倦怠感や記憶力や計算力の低下がみられます。また、体温が低くなり、汗をかかなくなり、皮膚が乾燥します。体重は増加し、便秘、生理不順になることもあります。
疲れやすさ、むくみ、脱毛の症状は、甲状腺ホルモンの上昇と低下、どちらでもみられる症状です。
メンタルヘルスコラム:甲状腺ホルモンの病気

甲状腺ホルモンの病気

代表的な病気としては、甲状腺ホルモンが多すぎる病気が「バセドウ病」、少なすぎる病気が「甲状腺機能低下症」です。病気のはっきりとした原因はわかっていませんが、ウイルス感染や強いストレス、妊娠や出産などのイベントをきっかけにして起こるのではないかと考えられています。

バセドウ病

バセドウ病は甲状腺機能亢進症ともいわれ、甲状腺ホルモンが必要量より多く作られる病気です。20~30代の若い女性に多く、男女比は1対3~5くらいと言われています。血液中に甲状腺ホルモンが多く流れることで全身の代謝を活発にさせるために、ホルモンが上昇した際の様々な症状が現れます。甲状腺が腫れて、首が太くなったようにみえるのも特徴です。また、眼が出てくる眼球突出はバセドウ病の代表的な症状ですが、必ずしもみられるわけではなく、3割ほどといわれています。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症で最も多いのが橋本病(慢性甲状腺炎)です。甲状腺ホルモンの分泌が低下して活動性が低下する病気です。甲状腺ホルモンが低下した際の様々な症状が現れます。橋本病は圧倒的に女性に多く(男女比は1対10以上)、40歳以後の女性では軽症なものも含めると10人に1人の割合でみられます。

甲状腺ホルモンの病気の多くは薬物療法が主体です。甲状腺ホルモンが正常に保たれている状態を目指して治療を行ないます。したがって、決められた量以上や少ない量のお薬を飲んでしまうことは、体の調節を崩すので禁物です。かかりつけの医師の指示に従い、決められた量のお薬を飲み、定期的に検査を受けて経過をみていくことが大切です。

正しい診断を受けて治療を受けることが重要

甲状腺ホルモンの病気は様々な症状を引き起こすため、他の病気に勘違いされてしまうことが少なくありません。
疲れやすさや気力の低下、眠気などの症状により、自律神経失調症や更年期障害、うつ病と思われていたケースもみられます。
甲状腺の病気と診断を受け、適切で確実な治療を受けることで、それまでの不調がなくなり、健康な人と同じように仕事、運動、妊娠、授乳もできるようになります。

今回は甲状腺ホルモンの病気について解説しました。
甲状腺の病気は女性にとても多い病気です。月経異常や不妊の原因になるとも言われています。
今回お伝えした症状で気になった人は、ぜひ一度、内分泌内科や内分泌代謝科を受診してみてはいかがでしょうか。


著者:金子 綾香
保健師
医療法人社団 平成医会


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