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適切な水分補給とそのメリット

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「水分補給は大切」といわれますが、実際になぜ大切なのかを問われると、その理由や具体的な摂取量の目安を明確に答えられる人は、あまり多くないかもしれません。それほど汗をかかずに安静に過ごしていても、私たちの体からは知らず知らずのうちに、多くの水分が失われています。今回は、水分補給が必要な理由や適切な一日当たりの摂取量、摂取のタイミング等について解説します。

水分補給が必要な理由

成人の体は、体重の約60%が水分で構成されています。例えば体重60kgの成人男性の場合、約36kgが水分 ということになります。脳や筋肉、腸、腎臓、肝臓などの臓器になると、水分含有量は約80%と多くなります。体内を水分が循環することにより、栄養素や代謝物を運んだり、老廃物を排泄したり、体温調節したりすることにより、人の生命機能は維持されています。
体内から水分が失われると、具体的にはどのような反応があるのでしょうか。
まず、体から1%の水分が失われると、のどの渇きを感じ始めます。そして2%の水分が失われると、めまいや吐き気、食欲減退などが見られます。更に5%を失うと、脱水症状や熱中症などの症状が現れます。
約10%の水分が失われると、筋肉のけいれんや失神が現れ、水分の損失が20%に上ると、体中の機能が正常に働かなくなり死に至ります。水を1滴も飲めない状況下では、2~3日で生命の維持が難しくなると言われています。それほど水分は、人が生命と健康を維持するために重要な存在です。

脱水と健康障害の関係

水分が不足すると、私たちの体では様々な健康障害が発生するリスクが高まります。
脱水による健康障害として多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、熱中症ではないでしょうか。発汗や不感蒸泄によって血液中の水分が減少すると、体の中では細胞外液と内液の移動により、循環機能に支障を来さないよう体液を維持する調整が行われます。しかし、そこで水分補給が行われないと、脱水により血液が濃縮して循環不全を起こし、熱中症を起こすことがあります。
その他にも、脱水によって、脳梗塞や心筋梗塞が起こることもあり、いわゆるエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)等の予防のためにも、こまめな水分補給が重要とされています。

一日の水分摂取量の目安

私たちは、一日にどれほどの水分を摂取すれば良いのでしょうか。
人は一日当たり約2.5ℓ水分が失われています。これは、比較的安静にしていた場合の数値であり、普通に生活を送っていても失われる水分量です。そのため、運動や温熱環境下で発汗量が増加した場合には、より多くの水分補給が求められます。
平均的な食事からは約1ℓの水分を摂取でき、また、食べ物が分解されてエネルギーになるときには約0.3ℓの水分を摂取できるため、残りの約 1.2ℓを飲料水から摂取する必要があります。
また、水分補給は過剰に摂取すれば良いわけではなく、排出量と摂取量のバランスを保つことが大切です。
一度に大量の水を飲むと、体内のナトリウム濃度が低下し「水中毒」になるおそれがありますので、注意しましょう。

水を飲むおすすめのタイミング

前述したように、体内から水分が1%失われるとのどの渇きを感じます。のどの渇きを感じたときは、すでに脱水が始まっている状態です。

脱水を防ぐためには、次のようなタイミングで水分を摂取することがおすすめです。

 ・起床時:睡眠中に呼気や皮膚を通して水分を失う

 ・運動時:発汗により水分やミネラルを失い、脱水や熱中症になりやすい

 ・入浴時:入浴にともなう発汗で水分を失う

 ・就寝時:睡眠中の水分不足を緩和するため、就寝前も水分を補給する

脱水状態になりかけている兆候は?

脱水症状は自覚症状が出にくく、重症化するまで気づかないことが多いのが特徴です。
「かくれ脱水」の症状を見落とさないために、「べた」「だる」「ふら」「いた」の4つのサインがあります。

 〇べた
  発汗していないように思えても、首筋などがべたべたしているときは水分が多く
  失われている可能性があります。

 〇だる
  体のだるさがとれないときは脱水症状の疑いがあります。食欲不振時は食事量が
  減るとともに、水分補給量が低下します。口内の渇きに鈍くなり、水分補給の頻度も
  少なくなりがちです。

 〇ふら
  めまいや立ちくらみ、ふらつきがみられた場合、脱水症状の可能性があります。
  ドロドロの血液で血流が滞っているために、めまいなどが引き起こされているかも
  しれません。

 〇いた
  足がつる、頭がいたいといった症状は、脱水症状が関係していることがあります。
  水分不足は体内の塩分、カリウム、カルシウムなど電解質不足を招くためです。

正しい水分補給で過食も予防

水の摂取量を増やすことで食べ過ぎ防止になるといわれています。食事の前に意識して水分を摂るだけで、過食を防ぐことができるのです。

まだまだ暑い日が続きます。体温調整をうまくやりながら水分摂取をしっかりとして、熱中症を予防しながら、健康な日々をお過ごしください。


著者:長谷川 大輔
精神科専門医
医療法人社団 平成医会
産業医統括責任者


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