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腰痛とストレスとの関係

  • メンタルヘルス
身体的負荷が多い仕事だけではなく、デスクワークの方にも腰痛が増えています。病気やケガ等で自覚症状がある人の中で腰痛は、男性で最も多く、女性では肩こりに次いで2番目に多くなっています。そこで、今回は腰痛とストレスとの関係について解説します。

メンタルヘルス:腰痛とストレスとの関係

今回は私たちを悩ませる腰痛について解説します。厚生労働省が国民の健康状態を調査した「国民生活基礎調査(平成29年)」というレポートがあります。病気やケガなどで自覚症状がある人の中で腰痛は、男性で最も多く、女性では肩こりに次いで2番目に多くなっています。

腰痛の大半は原因不明

腰痛の原因として、骨や筋肉に異常がある器質的要因があります。背骨の骨と骨の間にある椎間板が突出して神経を刺激し痛みが起こる腰椎椎間板ヘルニアは腰痛の主な原因です。一方で、明確な原因が特定しきれない腰痛を非特異的腰痛といいます。日本整形外科学会と日本腰痛学会が2012年にまとめた腰痛診療ガイドラインによると、原因が明らかではない非特異的腰痛が全体の85%を占めるとされています。医師が診察しても、X線検査をしても、腰のどこが原因か判明しない腰痛が大半を占めているのです。
明確な体の異常がないにも関わらず、3ヵ月以上の腰痛が続く慢性腰痛を発症している人が多くいます。
 

加齢による腰痛

腰痛は病名ではなく体に表れる症状の総称です。特別な場合を除き、多くの人は年齢とともに腰痛になります。これは、加齢により腰周辺の筋肉の脆弱化がすすみ、さらに運動不足で衰え、姿勢保持が困難となります。しかし、体は姿勢を保持しようと、筋肉の緊張状態を続けるため、それが凝りや痛みとなります。その後は、「動かすと痛い⇒運動しない⇒筋力の低下⇒筋肉柔軟性の低下⇒可動域制限」を繰り返し、悪循環に陥ってしまうのです。

腰痛になりやすい職種

職種別にみると、腰痛の有訴率が高い職業は看護や介護、清掃といった身体的な負荷の高い職種が腰痛になりやすいという報告があります。身体的負荷だけでなく、作業中の姿勢も腰痛の大きな要因になります。前述した仕事は腰をかがめる、重いものを持ち上げるといった作業が多い職種です。また、運輸業で運転時間が長く、長時間同一姿勢でいる方も腰痛になりやすい傾向があります。近年は、長時間座っていることの多いデスクワークの方の腰痛が増えています。デスクワークを始めとする事務作業では約半数の50%程度が腰痛であると言われています。過剰に腰に負荷がかかることで発症する腰痛がある一方で、特別な負荷がかかっていなくても腰部の緊張状態が続くことで発症する腰痛で悩む患者さん達もいます。

痛みを感じるメカニズム

私たちはどのようにして痛みを感じるのでしょうか?簡単にメカニズムを解説します。腰からの痛みの信号が脳に伝わると、脳内にドーパミンという神経伝達物質が放出されます。すると、脳内でオピオイドという物質が多量に放出されます。それにより、神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンが放出され、痛みの信号を脳に伝える経路が遮断されます。この仕組みによって、腰痛などの痛みが気にならなくなったりするのです。この痛みをコントロールするシステムは誰もが生まれつき備えています。
ところが、ストレスを長時間感じていると、脳内のドーパミンが放出されにくくなり、神経のバランスを保つセロトニンという脳内物質の分泌も低下します。その結果、痛みを抑制する仕組みが機能しなくなり、わずかな痛みでも強く感じたり、痛みが長引いたりするようになります。

ストレスとの関連

先ほどのメカニズムにより非特異的腰痛を引き起こす因子として注目されているのが心理社会的要因、すなわち心身のストレスです。治療を受けても痛みが続く場合には、ストレス・不安・うつなどの心理社会的要因が影響している可能性が考えられます。「腰痛診療ガイドライン」では腰痛の発症や慢性化には心理的なストレスが関与していると示されています。

メンタルヘルス:ストレスからの腰痛

悪循環を断ち切る対策

悪循環を断つには、楽観的に痛みと向き合い、ウォーキングやストレッチなどの運動を行うことです。運動は腰痛の発症予防や再発防止にも有効であることが分かっており、腰痛診療ガイドラインには、「発症から3ヶ月以上経った慢性腰痛には運動療法が有効である」と明記されています。特に、慢性化した非特異的腰痛であれば、深刻に考えすぎて安静にするよりも、できるだけ普段通りの生活を維持し、体を動かす方が症状が軽くなる可能性が高いのです。

認知行動療法も有効

ストレスの軽減を目的として行われる認知行動療法などの精神医学療法でも、腰痛が慢性化し、身体障害の発生や病欠が長期間に及ぶのを予防するのに有効とされています。腰痛は心因性の原因によるものがあるため、認知行動療法を行うことで腰痛や腰痛に起因する障害の予防につながるということです。

認知行動療法は慢性腰痛の治療法の1つですが、自身で考え方を変えてみるという簡単に始められる身近な方法でもあります。
大切なのは完璧を求めないことです。自分の理想の生活を100%望み通りに送ることが出来ている人はわずかだと思います。100%思い通りではないけれど、「今日はやりたかった仕事が一つ終えられた」「ずっと買いたかったものがやっと買えた」など、小さな達成感を得ながら日々を送っていると思います。身体面も同じように考えてみてはいかがでしょうか?
「痛くてあまり家事が出来ない」ではなく、「痛みはあるけれど、少し家の中の掃除ができた」と出来たことに目を向けてみると、マイナスの考え方からプラスの考え方に転換されます。「このくらいでOK」と楽観的に考えることが大切です。また、痛み以外の事に目を向けてみることも有効です。「痛みの原因がわからない」「受診しているのになかなか治らない」と考えること自体もストレスになります。体を動かすことや、楽しいことなどで気分転換できることを意識的に取り入れてみましょう。考え方を変えてみることで、ストレスなどの悪循環を断ち切りやすくなります。

みなさまの中になかなか治らない腰痛に思い悩んでいる方がいらっしゃるのであれば、日常的な姿勢の見直し、ストレッチや運動、ちょっとした考え方の転換をすることで、痛みが軽減するかもしれません。ぜひ、試してみてください。


著者:金子 綾香
保健師
医療法人社団 平成医会


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