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モチベーションが向上する心理学

  • メンタルヘルス
モチベーションを生みだすには、大きくわけて内発的動機付けと外発的動機付けの2種類が必要だといいます。外発的動機付けから内発的動機付けにつながることをエンハンシング効果といい、人材育成や教育現場で活用されています。今回はエンハンシング効果について解説します。

メンタルヘルスコラム:モチベーションが向上する心理学

エンハンシング効果とは

動機付けとはある要因によって行動をおこしそれを持続させる心理的過程を表す心理学用語です。動機付けには内発的動機付けと外発的動機付けの2種類があります。
内発的動機付けとは行動自体から得られる満足感や強い興味や探求心など、人の内面的な要因によって生まれる動機付けで、見返りを求めないモチベーションともいえます。一方で外発的動機付けは報酬や評価、罰則や懲罰といった外部からの働きかけによる動機付けを意味する言葉です。
外発的動機づけによって内発的動機づけが高まるか否かは、動機づけを与える人との関係性や動機付けの不定期性などが影響するといわれています。。
例えば、上司から「このプロジェクトが成功したら社内での評価が上がり昇進につながる」と告げられて、評価や昇進のために尽力し始めた人がいたとします。仕事を進めているうちに仕事に打ち込むことの充足感や仲間と協力してひとつのプロジェクトを成し遂げる楽しさを知り、プロジェクトの遂行自体がやりがいになったということであれば、外発的動機付けが内発的動機付けに変わったといえます。

内発的動機付けを阻害する要素と高める要素を解説します。
内発的動機付けを阻害する要素として、監視されることや制限をもうけられること、競争があること、評価されることなどがあります。一概にこれらが悪いとは言い切れませんが、内発的動機付けを阻害する要因になるようです。
内発的動機付けを高める要素もあります。楽しいと感じること、励ましを受けること、肯定的なフィードバックが得られることだそうです。また、認知的評価理論によると金銭などの報酬は、内発的動機づけを低下させやすい一方、言語的な報酬は内発的動機づけを高めやすいようです。

エンハンシング効果と対照的なアンダーマイニング効果

外発的動機づけによって内発的動機づけが高まるエンハンシング効果について解説してきましたが、対照的な効果でもあるアンダーマイニング効果というものも存在します。アンダーマイニング効果とは、内発的動機付けがすんでいる人に外発的動機付けを行うことで、かえってモチベーションを低下させてしまうというものです。
心理学者の溝上氏は内発的動機づけが人の行動を高い質で動機づけると述べながら、以下のように説明しています。課題に関連した外部要因(たとえば、報酬が与えられる、〆切が設けられる等)は時として、個人の課題に対する内なる欲求を阻害し、やらされ感を強め自律性や有能感を低下させる。結果、内発的動機づけを低下させるというのです。つまり、自発的に行なっていた事柄に報酬が与えられることによって、他者に行動を強制されているように感じられ、やる気を失ってしまったということになります。
メンタルヘルスコラム:エンハンシング効果とマネジメント

エンハンシング効果とマネジメント

エンハンシング効果を企業におけるマネジメントに活用する例をメンタルヘルスの観点から3つご紹介します。

① 気持ちをこめて褒める

エンハンシング効果において褒める言葉は効果的ですが、本当に賞賛する気持ちがないと効果は期待できません。上辺の言葉は見透かされてしまうのです。そのため、エンハンシング効果を期待して褒めるときには言葉の抑揚や仕草などにも着目して伝えるとよいでしょう。

② 他の人がいる前で褒める

他の人がいる前で褒めた方がより効果的です。職場において、他の人がみている前で怒られて酷く落ち込んだ経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。他の人の前で怒られて落ち込むのは、自尊心が傷つけられるからです。エンハンシング効果では、逆に他の人が見ている前で褒めることによって自尊心を満たします。結果、モチベーション向上につながるのです。第三者から自分を褒めていたと知るシチュエーションであればさらに効果は高いでしょう。

③ 過程を褒める

エンハンシング効果を期待して褒める際は、能力や結果を褒めるだけでなく結果にいたるまでの努力や過程を褒めるとより効果的です。結果や知能を褒められると、「賢くみられたい」という気持ちが生じて失敗を恐れるようになったり、「能力があるのだから自分は頑張らなくてもできるはずだ」と考えたりするようになるのだそうです。人は過程を褒められると、認められたという気持ちを強く感じ承認欲求がみたされます。
例えば、部下が仕事で結果を出した場合には、「あの案件を勝ち取ってくるなんてすごい。会社に○○万円もの利益をもたらしたよ。」といった褒め方はNGです。「おめでとう。毎日頑張っていたのを見ていたよ。たくさん努力を重ねてくれたからこその結果だね。」と努力を褒めるのです。
逆に部下が結果を出せなかった場合でも、「結果は思い通りにはならなかったけど、毎日遅くまで準備をして本当によく頑張ったね。こんなに頑張れるのはすごいことだし、この努力は絶対に次につながるよ。」と努力や過程を褒めればよいのです。

皆さまは、後輩や部下にどのような対応をしているでしょうか。内発的動機付けにつながりやすい「言語報酬」をあたえることで、結果や能力よりも結果に至るまでの過程や努力を褒めることで従業員のモチベーションは向上します。内発的動機付けにより仕事をしている職員が増えることは会社の成長にもつながります。エンハンシング効果を社内のマネジメントに取りいれてみるのはいかがでしょうか。


著者:塩入 裕亮
精神保健福祉士
医療法人社団 平成医会 「平成かぐらクリニック」 リワーク専任講師


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